またーり書き込みしましょ(´・ω・`)

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闇は光を知る

ファイナルスターの死闘。互いが命の火を燃やし、己の全存在を掛けてぶつかり合ったあの日。

ゼロツー「ぎえぇあぁぁぁぁぁぁ!!か、カー…!!ビィぃぃぃぃぃぃぃ…!!おおおおおおおおおっ…!!!!」

ゼロツーの身体が光に包まれ崩れていく。身体の内側から飛び出す光は闇にとっての滅びの光。ファイナルスターも彼女の崩壊と呼応する様に崩れ始めていく。

カービィ「は…はは……や…っと…終わっ…た…」

カービィは安堵したのか身体から力が抜け、落下していく。クリスタルも彼女から分離して元に戻っていた。

デデデ「あれは…カービィか!カービィだ!!」
ワド「か、勝ったんスね!!カービィさん!!」
アド「カーくん、良くやったわ!」
デデデ「て、感動してる場合か!あのままだと奈落へ真っ逆さまだ!!」
ワド「あぁぁぁぁ!そうでしたああ!」
リボン「クリスタルまで…!」

デデデが焦る傍ら、アドレーヌは複数の画用紙を切り取り、何かを描き始める。眼にも止まらぬ早業で描き上げたのは…

アド「ふふん、任せときなよ!」

キェェェェエ!!

ワド「だ、ダイナブレイド!?」
デデデ「神業だな…」
アド「昼飯前ね!」

ポップスターの怪鳥。ダイナブレイドだった。ダイナブレイドは落ちていくカービィとクリスタルを拾いに向かい、四人の所へ連れ戻したのだった。

アド「やーりぃ!」

ダイナブレイドがカービィを降ろすと絵の中へ戻り。アドレーヌはそれを纏めて画用紙に挟む。

デデデ「よし、此処からは俺に任せとけ!」
アド「任せたよ旦那!」

デデデがそう言うと4人とクリスタルを背負ってワープスターの所までダッシュを始める。

アド「お、流石旦那!力持ちぃ〜!」
デデデ「パワーなら負けねえぜ!」
ワド「大王様、いつも頼りになります!」
リボン「さぁ、このまま全速全身です!!」
デデデ「あぁ、そうだな!(忙がねえとな…ありゃ死んでてもおかしくねえ傷だ)」

デデデが全速力で崩壊へ向うファイナルスター内を走り、ワープスターの所まで戻る。
崩落する岩を避けながら足場を飛んで進んでいき、ワープスターの所まで戻り、声を張り上げる。

デデデ「頼むぜ、ワープスター!リップルスターまで!」

デデデの声に応えたワープスターが一気に飛び立つ。ファイナルスター内から抜け出すとファイナルスターは膨張したり縮小したりを繰り返し、巨大な目玉が見え隠れしていた。

アド「ねぇ、あの星全体が生き物なのかな?」
ワド「目がありますもんね。星でありゼロツーの生命…でもあるんでしょうか」
デデデ「んなこたぁどうでもいいだろ?どっちにしろ消えて無くなるんだからよ」

デデデの言葉と同時にファイナルスターは次第に縮小していき、最終的には激しい光を撒き散らしながら消滅する事となった。

デデデ「終わったな。今度こそ」

そして一週間後……
この日、リップルスターの城にて、カービィ、ワドルディ、デデデ、アドレーヌの表彰式が行われていた。花火が打ち上がり、妖精達は声を発し、4人を称えていた。

女王「あなた方の勇気と力が我々の星を救って下さいました。それに最大限の感謝を込め…」

女王が4人に小さなクリスタルをメダルの様に首に掛けていく。このクリスタルはリップルスターを守る大きなクリスタルと素材が同一であり、数万年もの時間をかけて光が凝縮する事で出来上がるものだ。

デデデ「ふん…勘違いすんな。寝覚めが悪いからぶっ飛ばしただけだ」
アド「旦那は正直じゃないんだから〜(笑)」
ワド「そうっスよ、ぼく達も大王様にはよく助けられたんですから」
デデデ「うるせぇ!それにこうすりゃ感謝されて飯も沢山食えるからな!全部計算づくなんだよ!」

3人がいつものテンションで会話している中、リボンがカービィの方へ近づいていく。まだ羽根が治っていないのかふらつきながらも彼女へ近づく。

カービィ「あ、リボン!どうしたの?」
リボン「あ、いや……その………ありがとうって…」
カービィ「っ!!?」
3人「「「え!!!?」」」

リボン、何とカービィの唇を奪った。いきなりのキスにカービィは心臓を爆発する勢いで高鳴らせ、顔を真っ赤に染めた。

カービィ「ちょ…ちょっ……ちょ!!?リボン!!?」
リボン「感謝の印です!」
カービィ「あ、はは…嬉しいけど……はっ…はは…」

混乱と胸の高鳴りによりカービィはふらつきながら階段の方へ…

デデデ「おいおいおいおい!」
アド「カーくん危ないよ!」
ワド「ちょ、カービィさん!」

そんな4人を余所目にリボンだけが勝った様な表情を浮かべていた。

そんなハプニングもあったが、後の事は滞り無く行われた。女王直々のもてなしによる食事会、アドレーヌの美術博覧会、カービィとデデデのどか食い。三人に振り回されるワドルディ。
民も王も皆が騒ぎ、笑い、歌い、遊び、共有し合う。感謝祭は朝から夜まで行われ、リップルスターの歴史上、最も大きな祭典となった。
そうして深夜になり。先程までの騒ぎが嘘のように鎮まり帰った夜。梟の囀りと風の音だけが響き、何時以来かの安寧を齎す闇が星を包んでいた。

「ん……あら、もう皆寝ちゃったのね」

そんな真夜中の時間。この妖精は1人早く目覚めた。槍を手に取り、一足早い見張りに取り掛かる。とは言え平和であるので、夜景を見ながらの気軽なものだが。

「あ、あれ?気の所為かな…」

向こう側。彼女の目に映るのは小さな小さな黒い霧の様なもの。

「え、違うよね?アイツは…カービィ様が倒してくださった筈…」

その黒い霧は山の麓辺りへ落ちていった。胸騒ぎを感じた兵士は即座に麓への調査に踏み切ったのだった。









「が…ぁぁ………かー……ビ…ィ!」





森のせせらぎと鳥の囀り、滝の音による自然の音楽。その音楽を遮る様に声を発したのはゼロツーだった。あの日、カービィに滅ぼされた筈のゼロツーは辛うじて生き延びていた。とは言え、片腕は千切れ飛んでおり、右脚は膝から下が無く、天使の輪にはヒビ、身体の半分近くがケロイド化した悲惨な姿だった。

「はぁ……はぁ…!うっ……げほっ…ごほっ…!!」

血を吐きながら這いずる様に片手の僅かな力のみで動く。目には激しい憎悪と怒りが宿っていた。

ザザザ…ザザ…ガサ…

兵士「あ…あぁぁぁ!!お、お前は!!ゼロ…ツー!」

そこへ草葉を掻き分ける音と共に兵士がやって来た。兵士はその姿を見るや腰を抜かし、その悍ましい姿に恐怖していた。
 
兵士「アワワ…」
ゼロツー「く…!邪魔…するな……こ…ろす…ぞ!」
兵士「わ…ああああああ!!報告!報告!!」

虫の息でなお凄まじい迫力を出して見せる。兵士は一目散に城の方向へ逃げ出し、報告へ向うのだった。




ゼロツーが生きていた。




一方。城内の女王の部屋では女王が1人で静かにペンをしたためていた。そこへ兵士がバタン!と扉を開けて報告する。

兵士「大変です女王様!ぜ、ゼロツーが…」

女王はその報告を受けると本を閉じ、座ったまま身体だけを曲げて振り返る。

女王「ゼロツーが…生きていた?」

然程驚いた様子は無かった。以前なら確実に大慌てでアタフタしていた彼女だったが、まるで変わったかの様に落ち着いていた。

女王「先ずは確認です。お供を頼みますよ」

彼女は立ち上がるとゼロツーが落ちた森へ行こうとしていた。

兵士「え!?それでは女王様が…」
女王「大丈夫です。それに希望はまだいます」

カービィら4人がいるという事実を指摘し、兵士も納得すると麓へたった2人だけ向う事となった。




ゼロツー「はぁ……はぁ…ん…ぐ…はっ!」


 

一方ゼロツーは滝の近くで水を飲んでいた。血をすすぐついでに喉の渇きを潤し、少しでも体力に出来ればいいと考えていた。

ゼロツー「ごめんなさいお姉様…」

そしてゼロへの謝罪。本来ならテレパシーで伝えれるが、彼女の謝罪は届かなかった。即ち捨てられたのだ。だがゼロツーはそれでもゼロへ謝りたくて何度もそれを呟いていた。

ゼロツー「ごめんなさい……私がダメだから…」

仰向けで天を仰ぎながら遠い目で空を見ている。捨てられた今、行き場所もなく以前程の力もないとなれば確実に狙われる様になるだろう。

兵士「いました!あそこです!」
ゼロツー「チッ!もう来たの!」

そこへ兵士が女王を伴い現れる。ゼロツーにとっては最悪のタイミングだった。

兵士「お前!大人しくしろ!」
ゼロツー「クソ…」

槍を向けられる。今のゼロツーなら確実に仕留めれるほど弱体化しているのだから当然である。そこへ女王が後続でゆったりとした歩調でやって来て彼女を見下ろす。

ゼロツー「何?殺したいならご勝手に」

ゼロツーが睨みながら自暴自棄気味に吐き捨てる。

女王「…」
兵士「女王様、コイツ殺します」

そうして兵士が槍を構えると、女王は片手でそれを静止させた。女王はしゃがみ込んで視線を近くまでもっていき、ゼロツーの目を見ながら言った。

女王「待って下さい。この方は治療して差し上げましょう」
兵士「!!?」
ゼロツー「…は!?何を言っているの……」

ゼロツーは女王の態度に度肝を抜かれた。何故、敵である自分を、トドメを刺せるであほうこの状態でその様な事を言うのかと。
兵士も同じ様に驚き、女王に対して早口気味にまくし立てる。

兵士「何を仰います!?コイツがどれだけこの星に被害を齎したか…ましてや貴方ならそれが分かる筈でしょう!?そんな事をしたら…」
女王「いえ、安心して下さい。今のゼロツーはもう殆ど力がありません。それに例え悪党でも失われ行く命を前にしては私は見逃せないのです」

女王としての優しさなのだろう。彼女にとっては命の灯が失われ行く状況を見て見ぬふりをする事が出来なかった。

兵士「……分かりました。そこまで女王様が仰るなら」

女王が微笑んで頷くと今度はゼロツーの方へ向き直る。

ゼロツー「あ…甘いわね……反吐が出るわ…敵に心を許すなんて」

意図が分からないその行動に不快感を示しながらゼロツーは彼女を見る。

女王「確かに甘いでしょう。でもそれが私なんです」

女王としての態度。甘過ぎる。本来なら即処刑でもおかしくない筈のゼロツーだが、女王はそれを拒んだ。

ゼロツー「ふ…だったら好きにしなさい。何れ…借り…は…ぁ…」

バタ…

女王「ゼロツーさん!しっかり!」

限界を迎えたのかゼロツーは糸が切れた人形の様に力が抜けて倒れてしまった。







ゼロツー「……ん…此処は……いち…っ!」







カチ…カチ…カチ…






目覚めると時計の音。毛布の感触、ベッドの柔らかさを一身に感じる。外は暗く、時間帯は夜なのだろう。


ゼロツー「何処?確か私……」


ゼロツーはキョロキョロしながら部屋を見渡す。そして近くには看病でもしていたのか女王が椅子に座っており、身体を曲げてベッドに突っ伏す様に眠っていた。

女王「スゥ……スゥ…」
ゼロツー「そうだった。コイツが私を…」
女王「ムニャ……もう無理ですよぉ……スゥ…」
ゼロツー「…呑気ね。ねぇ、起きなさいってば」

ユッサユッサ…

その姿が気になって仕方がなく、ゼロツーは女王の身体を揺さぶり無理矢理起こす。

女王「あれ……あ、目覚めたんですね!良かった…」
ゼロツー「それより言う事あるでしょ」
女王「申し訳ないです。看病してる内に眠ってしまうなんて」
ゼロツー「違う!私を助けた話!いっ…て…っ!」
女王「当たり前ですよ。あ、あんまり身体を動かさないで。治るのには時間もかかりますし無理はいけませんから」

その通り、ゼロツーは右脚、片腕を失い身体の半分近くを光によって重度の火傷を負ったかの様にケロイド化していたのだ。しかし今では右脚と片腕に感覚があり、治りかけている事が分かる。ケロイド化していた所には包帯が巻かれ、痛みが幾らか緩和していた。

ゼロツー「これ…貴方がしてくれたの?」
女王「はい。説得するのに時間が掛かりましたけど最後は皆さんも承諾して下さいましたので!」

彼女の優しさ、もといお人好しにさえ近い性格に呆れながら顔を抑える。

ゼロツー「…ホントお人好しなのね。ドジでマヌケで頼りない癖に。そんなんだから利用されるの。分かる?」
女王「はい。貴方のお陰で実証済みですから」
ゼロツー「誇らしく言うなっての。そう言えば、カービィ達は?」
女王「お帰りになりましたよ。貴方が寝ている最中に。大丈夫です、貴方の事はまだ伝えてません。何れしっかりと説明するつもりなので」
ゼロツー「そう」

ゼロツーは呆れと同時に別の感情も抱いていた。放っておけないという感情。だから何かと聞いてみたくなるのだ。

女王「私に憑依していた時もそうでした。この時間帯、私から分離しては色々と教えて下さいましたよね」
ゼロツー「世間知らず過ぎて困るのよ貴方は。あれは何とかそれは何とか…。一つの惑星の王があれではねえ……寧ろ今までよく存続してたものね」

ゼロツーは憑依中、皆が寝静まると女王から分離してはこの部屋で彼女と言葉をよく交わしていた。

ゼロツー「いや…クリスタルがあったからこの星は続いていたのかしらね」
女王「クリスタルですか…何故貴方はクリスタルを狙ったのですか?」

態々敵に侵略の動機を聞いてくる事に呑気過ぎないかと思いながらもゼロツーは発端を話した。

ゼロツー「私達ダークマター一族は本能的に強烈な光を嫌うの。日の光ですら物凄い不快感を覚えてしまう」
女王「暗黒物質だからでしょうか」
ゼロツー「そう。私達は闇の中に生きる存在。強い光を長時間受ければ命にさえ関わる。この星の妖精が光が無ければ途端に生命力が弱まったのと同じ。私が侵略した時を思い返せば分かるわよね」
女王「はい。もしやクリスタルを狙った理由もそれと関係が?」
ゼロツー「うん、その通り。クリスタルには光を増幅させる効果がある。私達にとってそれは危険なの。これも実証済みね」
女王「貴方を倒しうる程の武器でしたからね…」
ゼロツー「この宇宙、殆どの星に光があり私達が生きれる環境は殆ど無かった。だから私達は侵略をして領土を広めた。実は種族レベルの問題だったのよ。お姉様はそういうの関係ないタイプだけど」

ゼロ。彼女の姉である。ダークマター一族を束ねる首魁であり神。一族の始まり。宇宙の帝王たるゼロは野心のまま侵略を繰り返し、勢力圏を広めていた。

女王「…そうだったのですか。でも無理矢理力で星を奪うというのは関心出来ません。もし説明して下さればそれくらいは融通出来ますのに」
ゼロツー「貴方は良くても他は?それに私達は不器用。そんな風に平和的な解決は出来なかったの。よく考えれば自業自得ね、私達は」
女王「でも今の貴方には変化が起きています。以前の様な強引さや恐ろしさが感じられません」

その言葉を聞くと尻尾を彼女の身体に巻き付けて締め上げようとする。怒りの眼差しで睨みながらギリギリと食い込ませる。

ゼロツー「勘違いしないで。もし力を取り戻したら直ぐにでもこんな星、潰してやるわ」
女王「っ……その割に…本気でやってませんね………今の貴方でも私くらいなら葬れるでしょうに…」
ゼロツー「……たまたま力が入らなかったの!分かった?」
女王「それは流石にウソだって分かりますよ」

女王に図星を突かれ、尻尾の拘束を解く。罰が悪い顔をしながら言い訳気味に説明していた。

女王「あと眼鏡、ズレてます」
ゼロツー「あ……うるっさいわね!」

女王に憑依していた時、女王はよく眼鏡や王冠がズレていた事があった。女王もそれを近くの兵士や住民から聞かされていたが、これは単純にゼロツーのうっかりだった。

女王「前までは怖くて不気味に見えたのに今では顔立ちが似ている事に親近感が湧きますね」
ゼロツー「宇宙には無限に近い生命体がいるんだからそういう偶然もあるわ。それに私の方が先に生まれてるっての」

窓から夜の星々を見ながら淡々と返していく。その折、また眼鏡がズレて思わず直す。

女王「一つお聞きしたいのですが…もし仮にクリスタルが完全な力を発揮していなければ、どうしていたのです?」
ゼロツー「あぁ、その話?」
女王「あのクリスタルは強力な力を持つが故に一つ一つに分散した際の力の離散率が高い。きっと星のご先祖様がいざという時に悪用を防ぐ為に行われた処置なのでしょうが…貴方相手では完全なクリスタルでなければ無理だった筈です」
ゼロツー「まぁ、私もそこには確信があったわね。一つでも揃ってなければ星を覆う闇をどっかに飛ばして解決…と思わせて頃合いを見て再侵略。あとカービィ達を始末する為の乗り物も用意していたから」
女王「そうしたらクリスタルは貴方が管理し、カービィさんを始末出来なくても再びミラクルマターの仕業に見せかけて…そして倒したら…の繰り返しだった訳で?」
ゼロツー「そうなれば良かったのに。アイツら全部集めていたわ。想定外よ」

気づけばゼロツーも彼女との会話を楽しんでいた。生き生きと答える姿には以前の様な陰気さはなく、明確に彼女へ心を開いていた証拠だった。

女王「ゼロツーさん、随分と楽しそうな顔をしてますね」
ゼロツー「は?え、いやいや…ないわよ。そんな…復活するまで敢えて付き合ってやってるだけ」
女王「嘘。顔に現れてます」
ゼロツー「ふん…察しが良くなったのね」
女王「言ってたじゃないですか。王なら目の奥を見て人を理解しろって。今なら分かります」
ゼロツー「どうせ貴方には無理だろうと思ってたから遊びがてら教えただけなのに」
女王「でも貴方のお陰で前より大きく成長しました。王の心得とか振る舞いとか宇宙の事とか…感謝してますよ」
ゼロツー「か、感謝…?そんなの言われるの初めてよ…」

顔を赤らめながら目を逸らす。また眼鏡がズレて直す。その姿を見た女王は確信めいた事を突きつけた。

女王「…やっぱり貴方…ただ寂しかっただけなんですね」
ゼロツー「はぁ?バカじゃないの!」

いきり立つ様に毛布を叩いて彼女を見開いた目で見つめる。まるで子供の誤魔化しそのものだ。

女王「あの時の夜もしかり…態々憑依して侵略するだけなら必要のない事だった筈。私に教えている時、何処か楽しそうで…それにぬいぐるみみたいに抱くものですから」

彼女の指摘は的を得ていた。その言葉を投げかけられた途端、ゼロツーは沈黙する。何かを考える様に天井へ頭を向けると独り言の様に呟く。

ゼロツー「……正直、私はね…羨ましかった。綺麗な光の世界であんなに楽しく生きてる姿なんて見たら……だって私達には望んでも手に入らないものだし」

そう語るゼロツーの姿には哀愁が漂っていた。女王は、それを見ると片手を彼女の手へ置いて掴む。

女王「なら…私が貴方の光の代わりになります」
ゼロツー「へ?」
女王「貴方が憑依していた時に私の記憶を見て利用していた様に。薄っすらとですが貴方の本質が見えかけて来ていたんです」
ゼロツー「ありゃま、見られてたのね」
女王「私で良ければ何時でも貴方の側におれます。寂しいのなら私を頼って欲しいです。拗らせて星を侵略しては嫌われるだけですよ。だからこれからは自分の気持ちに正直になっていいんです」
ゼロツー「……そうね…あれ、何で室内なのに雨が…」

頬から冷たくも温かい水滴が流れ落ちた。まだ理解出来ていないが、ゼロツーは泣くという感情まで宿した。血も涙もないダークマター一族だが、そんな彼らも己と向き合い人と向き合えば変わる事が出来るのだ。

女王「もう貴方は1人じゃありませんから。貴方が望むならずっと此処にいて良いんですよ」

女王が彼女の頭を撫でる。それが悪く無かったゼロツーは頭を差し出す様にしていた。

ゼロツー「でも…私は貴方達に……いいの?」
女王「はい。貴方の犯した間違いはこれから償えばいいのです。今の貴方ならそれが出来る。本当に心の底から反省して変わりたいと思っている事が分かりましたから」
ゼロツー「悪かった…本当に……ごめんなさいね…」
女王「心は伝わりました。この星の皆さんもきっと許してくれますよ」

ゼロツーは初めて泣き、自分の罪を後悔し、償うという気持ちを得た。女王は彼女を両腕で包むようにし、泣き腫らす彼女をあやしていた。

闇と光の狭間

リップルスター。これはまだ夜が明ける前の事である。

ゼロツー「……ふわぁ…」

ゼロツーは目を覚まし、目をこすりながら女王の自室へ向かっていた。

ゼロツー「おはよう…起きてる?」
女王「あ、ゼロツーさん。おはようございます」
ゼロツー「貴方も早起きなのね」
女王「偶然ですね。さ、入って」

ゼロツーが部屋をノックして少し扉を開ける。女王は丁寧に礼をすると彼女を部屋へ案内した。
同じく女王も寝起きなのかピンクのパジャマにボサボサの髪をしていた。こうして見るとより女王とゼロツーは似ており、初見なら確実に血縁なのかと勘違いする程だ。

女王「大分、傷が良くなりましたね」
ゼロツー「歩行も殆ど支障がなくなった。こっちの腕はもう完治に近いし、身体も跡が消えかけているわ」

彼女の負った傷は悲惨そのものと言えるものだったが、今では殆ど治っており、以前の様な姿へ戻りつつあった。だがゼロツーには一つだけ治らないものがあった。

女王「やはり力はもう残されていないんですか?」
ゼロツー「そうみたいね」

カービィに敗れたあの日、ゼロツーは力の殆どを失った。実はファイナルスターは彼女の生命力そのものでもあり、それが崩壊し浄化された事で今の彼女の力は残りカス程度しかなかった。

ゼロツー「ミラクルマターの力も、以前の様なパワーもスピードも無くなってしまったわ。自慢の蹴り技も今はもう錆びついてしまって…お役に立てなくてごめんなさいね」
女王「いえ、そんな事はありませんよ。それに困ったら助け合えばいいんです。何でも1人で抱え込まないで」
ゼロツー「私の悪い癖ね。今の私には貴方達がいるんだもの。頼らないとね」

ゼロツーが納得した様に頷く。そうして女王とゼロツーが他愛のない談笑をしているとゼロツーはいきなり顔色を変えた。

ゼロツー「っ…」
女王「どうされたのですか…?」
ゼロツー「誰かが私を呼んでいるの…」

ゼロツーが片腕をギュッと握り、苦い表情のまま語る。

ゼロツー「少し…外に出て来る…」
女王「そんなに苦い表情をしてですか…」
ゼロツー「大丈夫…戻って来るから」
女王「でも…」
ゼロツー「いいから!!貴方は此処にいなさい!!」

ゼロツーの気迫に押された女王は黙り込んでしまう。ゼロツーは少し表情を柔らかくして頭を撫でてやる。

ゼロツー「ごめん。でも必ず戻って来るから。安心してちょうだい」
女王「分かりました。必ず戻って来て下さい」
ゼロツー「うん、じゃあ行ってくるよ」

ゼロツーが窓を開き、ゆっくりと飛び始める。以前の状態なら直ぐに姿が見えなくなる速さだったが、今ではリボンよりもスピードが下だった。

ゼロツー「(お姉様……よりにもよって最悪な奴を)」

ゼロツーの表情は重かった。彼女が呼び出しを受けたのは彼女が想定しうる“最悪な奴”なのだ。
街の外れ、その先へ先へと飛んで行く。近場の光景は森や山へと変わっており、一面が緑になっていた。

ゼロツー「(以前の私でも無理でしょうね…アイツだけは)」

四天王最強であるゼロツーですら敵わないと評した相手…その相手とは…










「よくぞ来たな。逃げなかった事は褒めてやろう」




ゼロツー「ダークマター…」






ダークマター。

その女は黒かった。

髪も…

羽織も…

袴も…

眼帯も…

恐らくは下着も、吐き出す息、オーラさえもが黒く見える。

その声や思考までもが黒いのではないか。白い皮膚の下に流れる血液や筋肉、骨まで黒くても不思議ではなさそうだった。

ゼロツー「ダークマター…いや、シュラだったかしらね…」
ダークマター「その名は捨てたのは知っているだろう。嫌味か?」

赤い瞳と赤い瞳が重なる様に互いを見ている。

ゼロツー「一族最強の存在が刺客だなんて……私も運が無いわね…」

眼の前の存在こそダークマター一族最強と呼ばれている四天王以上の実力者だ。一族の名称そのものを名前としている辺りからも彼女の実力とゼロからの信頼が厚い証左と言える。

ダークマター「ゼロ様の妹君と言えども裏切りは重罪。しかも侵略しようとしていた星でのうのうと暮らしているとはな」
ゼロツー「私はもう貴方達とは決別したの。だから放っておいてちょうだい。敵対する気もないから」

ゼロツーは睨みながらダークマターを見据える。しかし冷や汗が流れ、無意識に視線が泳いでしまう。

ダークマター「いかなる理屈を述べようと貴様は一族の裏切り者だ。ゼロ様の命によりこの場で処断する」

ダークマターが腰に携えた白鞘を抜いて刃を向ける。


スン…


その動作だけで周りの環境音が無へと変わる。あるのは己の鼓動音と声、地面を踏みしめる音だけ。

ゼロツー「百夜虎徹……完全に殺す気ね…」
ダークマター「魔剣ダークマターでは失礼だろう。せめてもの手向けよ」

百夜虎徹。宇宙でも名だたる名刀の大業物だ。そして魔剣ダークマターとは自信の身体から錬成した西洋剣であり、取るに足らない相手に使う舐めプ用だ。つまり彼女は殺意を以てやって来る。

ゼロツー「(どう動いても首が飛ぶ…!)」

ゼロツーは悟っている。その構えに隙はない。自分から動けば即死。ダークマター一族きっての剣士であり四天王のゼルーギルはよくダークマターと手合わせをしていたが、彼女に一太刀も当てる事は愚か、掠りさえしていなかったという。

ダークマター「行くぞ」

その一言と共に音も無くゼロツーの眼の前にいきなりダークマターがいた。既に刃を振るう体勢だ。

シュッ…

シュタッ!

ゼロツー「くぅぅぅっ!!」

ゼロツーは首を掠りながらもダークマターの銀閃を紙一重で躱し、地面を転がり距離を取る。しかし

ダークマター「どうした、首が折れるぞ」

ビュオッ!

回り込んだダークマターが彼女の首目掛け脚を振り降ろす。ゼロツーはそれも転がるように回避して土に塗れる。地面に小さなクレーターが出来た。

ゴロゴロ…

ゼロツー「(く…回避だけで精一杯だわ……)」

踏みつけたと思えば刀を突き刺して来る。

ビュッ!

ズバッ!!

ザン!

ザクッ!ビシュ!

ゼロツー「ぐ…あっ!……はっ…はぁ…はぁ……」
ダークマター「加減をしているのか?」
ゼロツー「ふん…!してる訳ないでしょ。分かってる癖に」
ダークマター「ならばせめて足掻いてみせろ」

ダークマターの斬撃は無駄がなく速い。全てが息の根を止める為だけの殺人剣。体勢や華麗さなんてものはなく、無機質で無骨。感情も読めない為、極端に攻撃タイミングが掴めない。

ゼロツー「離れなさいよ!!」

ビュン!!

ダークマター「苦し紛れの礫か。堕ちたものだ」

ゼロツーは苦し紛れに石を投げつけるが、通じる訳もなく、ダークマターの顔に当たるとコツンという音と共に地面に落ちる。

ダークマター「その悪い頭を直そう」

スッ…

ドゴッ!!

ゼロツー「がはっ……あっ…!!」

ダークマターがゼロツーの服の襟を掴んで頭突きをかます。まともに入ったそれはデデデのハンマーすら比較にならない威力と衝撃を備えていた。

ゼロツー「(此処で死んだらリップルとの約束を破ってしまう!生きないと…!)」

しかしゼロツーは諦めなかった。例え泥に塗れようと、生き恥を晒そうと、生きねばならない。待っている人がいるから。
だが、ダークマターの剣は止まらない。突き、斬り、蹴り、殴る。どれもが致命。

ゼロツー「(一か八か…やるしかないわ!)」

このままでは確実に死ぬと感じたゼロツーは確固たる決意を持ってダークマターへ突っ込んでいく。

ダッ!タタタタタタ…

ゼロツー「うおおおおおお!!」
ダークマター「自分から死ぬ気か?良かろう」

ダークマターは上段に構える。刃圏に入った瞬間、自分を両断するだろう。寧ろそれでいいのだ。上段である事が肝心だったからである。

ゼロツー「(間に合え…間に合え…!!)」
ダークマター「散れ」

ビュン!!

ズザァァァァ!!

ダークマターが白刃を振り下ろす。ゼロツーはスライディングで必死に懐へ潜り込み、片腕でダークマターの太刀の根元を受け止めていた。

ギリギリ…

ブシュゥ!!

今持てる最大の力を片腕に集中させて受け止める。危うく腕が切断されかけたが、奇跡的に止める事が出来た。これによりマターの刃が一瞬だけ腕に固定される事となり、千載一遇のチャンスとなった。

ゼロツー「ぐあぁっ!…貰った……ダークマター!!」
ダークマター「む…」
ゼロツー「うおぉぉりゃああぁぁぁぁ!!!!」

ゼロツーは渾身の膝蹴りを食らわせる。


ポス…


だがダメージは無かった。寧ろゼロツーの膝が悲鳴を上げる。膝の皿が割れていた。

ゼロツー「うぎぃぃぃぃ!!?」

その激痛に片足から崩れ落ち、完全に隙を晒す。ダークマターは冷徹な眼で見下しながら構えていた。

ダークマター「哀れだな。戦う力さえ残っておらぬとは」

白刃が振り下ろされる。

 

ヒュン…

 

ゼロツー「(ごめん…約束、守れそうにない…)」




ゼロツーが死を覚悟して目を閉じる。





ピタ…





だが、その白刃は彼女の首元でピタリと止まったのだ。





ゼロツー「え…?」




何がなんだか分からなかった。ダークマターはふんと声を出し、白刃を鞘に納刀していた。

スゥゥ…カチン

ダークマター「死を覚悟してまで何かを貫くか、妹君よ」

ダークマターは背を向け、空を見上げながら喋り出す。

ゼロツー「……待って!いきなり刀を納めてなんのつもり!?」
ダークマター「その信念があれば、もう一人でも生きていけよう」

ダークマターが空へ飛び出す。彼女を見ずにただ言葉と背中で全てを伝えていた。

ダークマター「裏切り者の妹君は死んだ。貴様はこの星の住民ゼロツーだ」

言葉を繋げる。

ダークマター「我が一族は光に非ざるもの……光となった者に用はない。勝手に生きるがいい」

ボン…

身体が黒い霧と化し、散らばる様に宇宙へ飛んで行った。ゼロツーは余りの重圧と死への恐怖から解放され、フラリと横に倒れる。

ゼロツー「た、助かった…の…?アイツ、何で私を…」

ゼロツーは安堵した後、立ち上がる。片足が壊れている為、フラフラと木へ寄りかかり体勢を整えてから空を飛ぶ。

ゼロツー「(あの時…一瞬だけ渇望の目をしていた……何だったんだろ…)」

ゼロツーは僅かな違和感を抱えたまま、女王のいる城へ帰って行った。





女王「どんな無茶をしたんですか!?」



帰ってきた時、ゼロツーはボロボロになっていた。妖精達により速攻で処置を施され、自室で安静する様にと指示を受けた。
女王はゼロツーの惨状を見て思わず声を上げる。

ゼロツー「悪い。山菜採りしてたら転んで崖から落ちた」
女王「そんな訳ないでしょう!膝の皿が割れて身体中に刀傷、それに肋骨が折れて片腕が切断されかかってるなんて……」
ゼロツー「いやぁ…へへっ」
女王「何があったか話して下さい」
ゼロツー「…分かった」
 
ゼロツーはダークマターという存在から呼び出されたこと、そして彼女と戦い、何故か見逃して貰えた事を話す。女王は安堵したのか涙を浮かべながら彼女をハグして身体を擦った。

女王「良かった……よくぞ生きて帰って来ましたね…」
ゼロツー「いや、本当に死ぬかと思ったよ。ダークマター一族は裏切りに厳しい。確実に殺されるかと…」
女王「でも不思議ですね…何故そのダークマターという方は貴方を見逃したのか…」
ゼロツー「分からないよ。ダークマターの恐ろしさは私が一番知っているから」

ゼロの命令とあらば親も友達も殺せる程の忠誠を誓うダークマター。その名をシュラと言い、ゼロツー曰く「モノノフスター」の生まれとのこと。
モノノフスターの事を知っていた女王が席を外し、少しすると分厚い本を持って来る。

女王「モノノフスター…これですか?文献には滅びたと…」
ゼロツー「まぁ滅びたってのも間違いじゃないけど、その本だと氷河期に見舞われて全生命体が絶滅したって書いてあるわね」
女王「モノノフスターはサムライやニンジャと呼ばれる方達がいた宇宙屈指の強国でした。特に刀と呼ばれる剣が有名だと」
ゼロツー「ダークマターは一族がこの星を攻め落としてから現地で生まれたんだと思う。アイツの剣術や体術はモノノフスターで養った特別なもの。そして百夜虎徹の存在……」
女王「もしモノノフスターがダークマターに1人残らず皆殺しにされたとすれば……」
ゼロツー「アイツならやりかねない。出来てしまう。ぶっちゃけアレは反則級の存在だよ。お姉様もそうだけどあの2人は強さの桁が違うから」

ゼロツーですらゼロとダークマターだけは桁違いだと評する存在であり、付け加える様に放って置くしかないと断じた。

ゼロツー「だからゼロは放って置くしかない。アレを止められる奴はいないし、絶対に手を出してはならないの。対抗出来る奴に心当たりはあるけどそいつも特級のヤバい奴だから」
女王「大丈夫なのでしょうか…もし彼らが攻めて来たら」
ゼロツー「その時は精々足掻いて死んでやるわ。でもダークマターの態度を見るとその必要性も無さそうよ」
女王「そうだと良いのですが……貴方を信じますよ」
ゼロツー「死ぬ時は死ぬ時よ。地獄に落ちるなら私も一緒に落ちるから」


2人が互いの手を握り、窓から差し込む夜明けを眺めて身体を寄り添わせた。












変わって惑星???。暗黒に包まれたこの星にはダークマター一族しかいない。
人の形をしたもの、獣の形をしたもの、化物の様な形をしたもの…彼ら一族は“リアル”と呼ばれる状態で出生し、成長するにつれて自己の姿を確立していく。共通点は何れも片目が空洞の様に真っ黒であり、実質的に単願である事だ。

兵士「ダークマター様、お帰りなさいませ」

兵士たちが登城するダークマターを敬礼で迎え入れる。ダークマターは一直線にゼロのいる王の間へ入り跪いて報告する。

ダークマター「ゼロ様。ただいま帰って参りました」
ゼロ「そうか。で、出来損ないのアイツは?」
ダークマター「は、始末致しました」

ゼロツーは生きてこそいる。無論ダークマターの言葉がウソだとは理解していたのか、ダークマターへ詰め寄り頭を踏みつける。

ゼロ「始末した?貴様はいつから我にウソをつく様になった」
ダークマター「は…」
ゼロ「貴様、変な情に流されでもしたか?」
ダークマター「いえ。奴は既に虫の息であり再起は望めません。そして幾ら出来損ないとは言えゼロ様の血を継ぐ者を手に掛けてはゼロ様への不忠というもの…」
ゼロ「始末しろと言わなかったか?」
ダークマター「しかし、私にとってゼロ様に纏わるものは全てを優先させるべきものと考えております。貴方様が妹君を始末せよと仰られても私は臣下。ゼロ様の血筋を斬る事は出来ませぬ。仮に妹君が力をまだ持っていたのであれば躊躇いなく殺す事は出来ましたが」

ダークマターの淡々とした報告にゼロは脚を離し、頭を上げる様に指示する。

ゼロ「分かった。ならそれで良い。貴様がそう言うのならそうなのだろう。だが…」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

惑星全体が震え出す。ただ怒りの感情を顕にしただけだが、それだけで星を揺るがせる程、ゼロの力は凄まじかった。

ゼロ「我が四天王を尽く倒しおって……カービィめ…」

カービィの名を忌々しく吐き捨てた後、玉座へ座り、側近へワインを注がせるとグイッと飲み干し、ワイングラスを握り潰す。
ゼロが構築した宇宙支配システム。強大なる力を持ったダークマター四天王を筆頭に、ジャックマター、イヴマター等の精鋭のダークマター族が帝国の守備を固めていたが、全てカービィ達の活躍により倒された事でゼロは苛ついていた。
彼らが敗北した事で傘下入りした惑星や支配した惑星の一部からも反乱者が現れる事態となり、ゼロはますますカービィ達を目の敵にする様になっていた。

ゼロ「ダークマターよ」
ダークマター「はっ」

ゼロが掌の上にビジョンを浮かべる。

ゼロ「貴様に命ずる。ポップスター…この星を制圧せい」
ダークマター「はっ。その御心は」
ゼロ「ポップスターの制圧とカービィ殲滅は勿論だが…この星にある虹の剣…これが我らの脅威となりかねん」
ダークマター「虹の剣……」

虹の剣。ポップスターに伝わる秘宝の一つであり、クリスタルを凌駕すると言われる退魔の神剣。

ゼロ「とは言ってみたものの…貴様なら問題なかろう。貴様がおる限り我が帝国は盤石だからな」
ダークマター「ははっ!それではポップスターの制圧に取り掛かります」
ゼロ「頼んだぞ」

ダークマターは早急に踵を返し、城から飛び出して行く。

ダークマター「この私が出たからには最早奴らに抗う術は無し」

この日、遂に最強の刺客がポップスターへと放たれる事となった。

番外編・生きるとは

あの日、私は死んだ。

カービィ「トドメだ!ダークマター!!」

ザシュゥゥゥゥ!!

ダークマター「かっ…!」

私の身体は2つに別れた。身体の奥底から灼熱の痛みが走り、内側から私を灼き尽くしていく。
最早、声も出せない。指一本とて動かせない。私の身体が落ちていく。
死とはこの様な感覚なのか。

ダークマター「(ゼロ様……最後の最後に不覚を…申し訳ございませぬ)」

ただゼロ様への贖罪の言葉を口にしながら落ちていく。気づけば日が昇り、眩い光が私を照らしていた。

ダークマター「(日の光とは……あんなにも…)」

吾らが嫌う光。

太陽の光。

しかし今の私にはその様な不快感は無い。

そして私の目には。







とても綺麗に写っていた。







「ぶはあっ!!」

気づけば私は泉の中にいた。意識が覚醒した私は水飛沫を散らして水から上半身を出す。
見渡してみれば心地よい夜の闇に幾多もの星々。そして私の直ぐ後ろには謎の台座と先端に星が取り付けられた棒状のもの。

「何だ此処は…」

よく分からないが、あの一戦で死んだ筈の私は生き返っていた。2つに断たれた身体も一つに戻っており、隣には百夜虎徹とその白鞘が浮かんでいた。

「我が愛刀よ。無事であったか」

虹の剣と何度も打ち合ってもなお刃毀れ一つ付いておらぬとは。我ながらいい剣の腕を持っておるわ。そしてモノノフスターの鍛冶師の腕前にも関心する事となった。
鞘に刃を収めると私は取り敢えず近くの陸地へ立ち、服を脱いで絞る。このままでは気持ち悪いったらありゃしない。

「はっ…!ゼロ様は!?」

そして途中で最も大切な事を思い出す。

ゼロ様。

我が敬愛する主君。ダークマター一族の絶対的な神。
私は急いでゼロ様へテレパシーを送る。

「(ゼロ様…ゼロ様…!ゼロ様…!!)」

出ない。敗者となった私の事だ。見捨てられたか。だが臣下としてせめてゼロ様の裁きを受けるべきだ。だからこそゼロ様に出て欲しい。

「(ゼロ様……出て下さい…!)」

しかし何時まで経ってもゼロ様は出なかった。やはり捨てられてしまったと言うのか。

否。

ゼロ様はしくじった者は器を見て消すお方。私があの様な失態を犯しながら如何なる罰も与えぬ事があろうか。断じてありえぬ。なら何故、ゼロ様は何も答えて下さらぬのだ?

「困った…ゼロ様は何処へ行っておられる…」

早急に服を着替えると私は空に手をかざす。我が通信能力なら一族の拠点たる惑星…ハイパーゾーンの状態が分かる。

「……無い」

無かった。本来ならそこにある筈のハイパーゾーンが無い。なら何処へ消えたのかと気を探知してみる。

「な…何故……」

気も存在しない。一族特有の気。それを探知しようとしても感じ取れないのだ。一族の気もハイパーゾーンも存在しない。つまり…


ゼロ様は消滅した


「あ……か…っ!!」


苦しい。


何故かは分からないが、胸が強く締め付けられ、息を吸う事すら出来なくなった。その場に崩れ落ち、膝をついている。胸を強く抑え嗚咽を漏らしていた。

「あ……あっ…そ、そん…バ…か…」

目頭が熱くなり、身体が震えている。本来寒さも熱も感じない筈のダークマター一族の、その私の身に何かが起きている。身体が押しつぶされる様な感覚に襲われ、やがては強烈な吐き気が襲った。

「うっ……!」

口を抑えて込み上げる胃酸を無理矢理堰き止めると酸えた匂いと味が口と鼻の中を支配する。

「あぁ…っ……ぐ…ぅうううう!!ううううううううう!!!!」

気付けば私は叫んでいた。消えたゼロ様、なのに私だけが残ってしまったという生き恥、ゼロ様を消滅させた者への怒りと憎悪、そして理解出来ぬこの無の様な感情…全てが混ざり合い、声にならない声を張り上げた。
手にしていた白鞘を握る力が強くなる。ギチギチと木が締め付けられる音が鳴り、唇を思わず強く噛み締めた。鉄の味が私の口内に広がっていく。

「ゼロ様、私はどうすれば良いのですか」

もしゼロ様がいらっしゃるのであればどう言ったかが想像出来る。

何をしている。

そうした所で何にもならぬ。

役立たずだと思うのならそれ相応の働きくらいしてみせろ。

あの白く逞しいお身体と血よりも濃い赤色の目。そして己こそが頂点だと隠しもせぬ低く心の奥底まで見抜かれているかの様な声。その姿も、声も、今となっては二度と見聞き出来ぬものとなってしまった。
今の私は1人だ。帰属する所も、同じ一族の者さえも居ない。その思いが私に「」を作り出す。
「」とは何だろう。怒りとも、悔しさとも、恐怖とも異なる、空白の様なこの感情は何なのだ。言葉に表せぬその「」が私の胸の中を燻ぶらせる。

「刀……」

私は手にしていた白鞘から刃を抜いた。
夜闇の星の光が反射すると淡い光を放つ我が愛刀。やがてその刃の中に私の顔とオーロラが写り込む。
私は目を閉じて羽織を左右にどかし、サラシを解いて腹を露出させた。

「少々長いが……背骨も断てるか」

切腹。

私が生まれ育ったモノノフスターにて行われていた贖罪だ。主君への不敬不忠、重大なミス、主家を陥れた時、或いは主君が死した時……様々な要因で彼らは腹を切り死ぬのだ。
私もまたゼロ様の臣下としていざとからばいつでも腹を切る覚悟でいた。故にそれが今なのだ。

「………」

長い黙想とゼロ様への贖罪の念の後…私は両手で愛刀を持ち、左脇腹へ突き刺す。

ザシュ!

「っ…ぐ!」

それをゆっくりと横へ滑らせていく。己の肉を斬る感触は、重く、硬く、柔らかい。虹の剣で斬られた時と同等の痛みが迸り、口からとめどなく血が吹き出る。

「うっ……ぶ…!!」

私は迷う事なく、愛刀を腹膜から抜いて腹部中心の傷口の少し下側に突き刺す。

ドシュゥ!!

想像以上の痛みと苦しみに思わず刀を手放したくなるが、渾身の力で私はその刃を上へ奔らせた。
身体から力が抜ける。刀を握りしめたまま私は前のめりに倒れ、意識は深い闇の中へと落ちていく。

「(ゼロ様……お供を…)」











「ん……あれ…」

また意識が蘇った。彼岸…では無さそうだ。
大きな白い壁と木の柱。ドーム状に象られているその壁には額縁に入れられた写真、向こう側の壁には暖炉。そして私が居た…否、寝ていたのはピンク色の毛布と白いシーツのベッドだった。

「誰が運んだのだ?我が愛刀しかり…」

近くを見れば愛刀の百夜虎徹に私が纏う羽織と袴が畳まれて置かれていた。気づけば私には青いパジャマが着せられていた。

「そうだ……いっ!」

動こうとすると腹部に鋭い痛みが走る。恐る恐るパジャマのボタンを取って腹を見てみると、少し赤く滲んだ包帯が巻かれていた。そしてカービィに斬られたであろう傷もしっかりあった。

「2回も死に損なったのか…」

我ながら頭を抑える。よもや死のうとしたのに顔も知らぬ者に慈悲を掛けられるとは。
武士の死に様を邪魔するなと言いたいものだが、生憎その犯人すら分からぬ上に傷で満足に動く事さえ厳しかった。

コンコン…

「カーくん、いる?」

ノックが鳴ると女の声がした。
カーくん?誰だそれは。カラスじゃなかろうに。

「おーい、いないの〜?…ま、いないけど入ろっと。顔パスって奴だね」

ガチャ…

勝手に入ろうとしていた女。その女は赤いベレー帽に緑の服を着込み、脇に大きなスケッチブックを持っていた。

「あ…」

その女が私を見ると一気に顔色が変わる。見た事はないが奴は知っているという態度をしているな。

「ダークマター!!?あ、アンタ…何でカーくんの家にいるの!?」

仰天した様に私にまくし立てて来る。五月蝿い小娘が。私も立てかけてあった虎徹を身体を伸ばして手に取り、攻撃に備える。

「答えなさいよ!何で此処にアンタがいるのか!!」
「知らぬ。気付けば此処にいた」
「アンタはもう倒された筈でしょ!?いる訳がない!!」
「もう?」

もう、という言葉が気になる。

「もうとは何だ。確かに私はカーくんとやらに……はっ…!そういう事か…」

全てが繋がった。カーくんとはあの憎きカービィの事だ。そして目の前にいる奴はゼロツーを倒す為にカービィと行動していたアドレーヌか。私は思わず気になりアドレーヌに問うた。

「何かは知らないけどとっとと出てってくれないかな」
「待て。一つ聞かせろ」
「は、何を?」
「ゼロ様を知っているか」

ゼロ様の名を出した瞬間、気づいた様にアドレーヌも返して来る。

「そうか、アンタはゼロが倒された事を知らないんだね」
「な!?…か……はっ…ま…」
「え!?ちょ、何なの!?」

再び胸が締め付けられて呼吸が出来なくなった。以前、感じた以上の感覚。

「はっ……が…ぜ…ゼ…は…!あ…!」
「だ、大丈夫!?何で胸なんか抑えて……あぁ、もう!訳が分からないよ!!」

アドレーヌが駆け寄る。さっきの敵意は何処へやら、意表を突かれた様に驚いていた。苦しくて私は虎徹をあらぬ方向へ放り投げてしまう。

カッ!カラッ…カラン……コトッ…

「先ずは落ち着いて深呼吸しなさい、ほら落ち着いて」

アドレーヌが私の背中を擦る。奴に言われた通り、胸を渦巻くこの感情を何とか抑えながら息を吸おうとする。これを続けると呼吸が安定していった。

「はぁ…はぁ…はぁ……」
「本当に何なの……数年前に倒された筈の敵がカーくんの家にいるわ、いきなり苦しみ出すわ…」

私は胸を抑えながら息を整え、アドレーヌの呆れた顔を観察する。本当に訳が分からないみたいだが、それは私もだ。誰が私を助けた?そして何故カービィの家に放り込まれた?

「で、何で此処にアンタがいるわけ?」
「私も分からんのだ。少なくとも私は一度腹を切っている」
「え、何そのモノノフテイストな話…」

私はコイツに事の経緯を全て話した。アドレーヌはいきなりスケッチブックから画用紙を1枚取り出して眼にも止まらぬ早業で私が最初に目覚めた場所を描き上げて説明し出した。

「それ、夢の泉のお陰かもね。そしてアンタが最初に目覚めたのはレインボーリゾート」
「夢の泉…レインボーリゾート……」
「夢の泉はこの星の住民に夢を見せると同時に夢のパワーを吸収する事で夢を見せる力へ還元しているの。このスターロッドの刺さった台座からは夢の雫が直ぐ下にある杯みたいな所に蓄積しているの。恐らく貴方はこの杯の中に落ちていたから蘇ったんだと思う」
「なるほど」

合点が行った。つまりカービィに敗れ、ポップスターへ墜落した私は偶然、夢の泉に落ちた。そして夢の水が長年掛けて両断された私の身体を元通りにして復活させた訳か。

「しかしアンタもアホねえ。貰った命を速攻で無駄にするんだから」

ズッ!

アドレーヌがそう言った瞬間、私はコイツの胸ぐらを掴んで引き寄せた。腹部の痛み以上に私の心の中で、怒りとも悔しさとも異なる謎の「」が湧き上がっている。

「きゃっ…!」
「貴様に何が分かるんだ…!貴様如きに…!!」
「な、何よ…殺すっての?」
「貴様に……ゼロ様を失った我が思いを……分かるのか…!何とか言ってみたらどうだ!!」

本能のままにコイツを掴んだまま睨みつける。お前らみたいな平和ボケした連中にだけは言われたくないと感じた。

「ね、ねぇ…何で泣いてんの?」
「は?何を言っている…」
「アンタのその目から涙が出てるのよ。そんなに辛かったの?」
「だから何を言って……」

ガチャ…

「ただいま〜!」
「あ、カーくん!ちょっといい!?」

そこへ丁度、カービィが帰ってきた。ピンク色のツインテールに星の髪飾り…忘れもしない。私とやり合ったアイツだ。私の手の力が弱まっだ所をアドレーヌが抜け出してカービィの所へ向う。

「何で此処にダークマターがいるわけ!?」
「え、だってぼくが助けたんだもん」
「はぁ!!?」

アドレーヌもそうだが、私も驚きだった。カービィは私の方を見ると笑顔で近寄って来る。

「ねぇ、怪我は大丈夫?少しは良くなった?」

あの決戦の時とは思えないほど柔らかな声で話しかける。幼さやあどけなさのあるその声と態度に私は混乱する。

「怪我は…だが、何故助けたんだ」
「それは、ぼくがレインボーリゾートに遊びに行った時に君を見つけたからだよ。最初は驚いたけど。でもあの時の君ったら腹部から凄い血を出して倒れてて…放ってくておけなくて思わずね」

は?ゼロ様を殺して一族を滅亡へ追いやった癖にか?余りのバカさに私の何かが切れて大声を出してしまった。アドレーヌがビクッと身体を怯ませている。

「ゼロ様を殺し我が一族を滅亡に追い込んだ癖にか!!貴様、何処まで我らをバカにするつもりだ!!?頭おかしいんじゃないか!?えぇ!?今更になって情なんか掛けて…何だ、貴様の自己満足か!?脳みそ緩いクソ女が!!だったらゼロ様を助けろよ!!私なんかが生きていて何になるんだ!!私には何も残ってないんだぞ…いっそのこと介錯してくれりゃ良かったんだ!!」

バチッ!!

「いっ……」

大声でまくし立てる私の頬にビンタが飛んだ。カービィの表情は怒りがあった。

「介錯!?バカなこと言ってるは君じゃないか!!自分から死のうとするなんて何考えてるの!?まさかアレが綺麗な散り様とか言う気!?そしたら本当のバカは君だ!」
「……」

私の考えていた事を当てやがった。腹立たしいがコイツは妙に本能的に人の気持を理解出来るようだ。
何も言えなくなった私を見るとコイツは哀れみの様な表情で答えた。

「確かに君を助けたのは自己満足もあったかもしれない…ゼロを倒したのもぼくだ。否定はしない」
「なら…何で……」
「あ、ダークマターがまた涙を…」
「!」
「なぁ、どうしたらいいんだ?私にはもう何も分からないんだ……帰る所も主も失って……更に追い詰めるのか?」

奴に縋る私はどう見えたのだろうか。分かるのはアドレーヌの言う涙という奴があること。そして私の心の中の「」が肥大化していたこと。
私の顔を見ていた奴が更に哀れむ視線を送る。回答に困っているのかはコイツは少し目を閉じて思案した後、私にこう言った。

「ゼロツーからは聞かされていたんだ。君達の種族単位での問題だって。でもゼロや君は余りに強引にぼく達の星を狙って来た。だから……倒すしか無かった…」
「ゼロツーが…」

ゼロ様の妹君。奴はリップルスターの侵略に失敗し、生きていたと思えばすっかりあの惑星の住民に骨を抜かれていた。殺す気も失せた私はそいつを見逃したのだが。

「言ってたよ。ゼロツーが君に襲われた時、見逃す際に妙な眼差しをしていたって」
「何をだ?」
「渇望」
「私が羨むだと?戯言を…」
「でも少なくともゼロツーは君をそう見たようだけど」

ゼロツーは私に何を見ていた?渇望だと?奴の都合の良い解釈じゃないのか?そこへアドレーヌもゆっくりと口を開いた。

「さっき、私がコイツと会話してゼロ様の話を出した途端、いきなり苦しみ始めたんだ。それに加えて貴様に何が分かる!とかって。その時も涙があったんだよ」
「…余計な事を言うな」

ペラペラと私の事を喋るコイツに苛立つ私。それを見てカービィはなるほどと言わんばかりの態度をしてから話しかけて来た。

「…寂しかったんだね」

カービィの第一声はそれだった。寂しい?何だそれは。

「寂しいだと?」
「君がゼロを失ったと知った時の動き、さっきの言動…君はそう思わなくても無意識に強い仲間意識とかがあったんだと思う」
「我ら一族はゼロ様への忠誠は絶対だ。それはそうとしても仲間意識などは…」
「でも、ぼくの見て来たダークマター族の中でも君の忠誠心は他とは違うなって。まるで恋人かの様に想っている。ゼロを後追いしようともしてたよね。忠誠とはまた別の心がある筈なんだよ」
「黙れ…」
「そして君は孤独だった。ゼロツーの言ってたそれも、彼女が皆と友達になってゴハンを食べてる所が羨ましかったんだよ」
「断じてない!私が生きるのはゼロ様のため!ゼロ様に尽くす事こそ本望なんだ!」
「半分ウソ。本当はゼロへの忠誠以上に君は友達が、光のある所で暮らしたいっていう願望があったんだよね?」
「……」

コイツの言う事には妙な説得力があった。そして話を聞いていて「」の感情の正体を掴む事が出来た。

寂しい

私が惑星を侵略していた時、死者が出るとその関係者が死者を見て泣いていた。何故下等生物は泣くのか。戦場に死があるのは当然だろう。そして生物が死ぬのも自然の摂理。だからこそ私は理解に苦しんだ。
なるほど。よく考えてみればゼロ様が消えてしまわれた時、私は彼らと似た様な感情を抱いていたのか。

「寂しい…か」

思えば私は1人だった。かつてゼロ様が侵略されたというモノノフスターに生まれ、リアルから成長して姿を確立してから間もなく修羅の世界に私は飛び込んだ。
刀を手に取り、ただ殺し合っていた。いつも血の匂いと戦場だけが私の道にあった。

「お前、随分と稽古好きなんだなー」
「駄目か?ゼロ様へ尽くすのが我らではないか」

私はただただ認められたくて。ゼロ様へ尽くしたくて。その一心で刃を鍛え、振るって来たのだ。気付けば私の周りには同族ですら殆ど近寄る者はいなかった。

「何故?何故、私は皆から恐れられる?我らは力こそを掟とし、ゼロ様に尽くす存在ではないか」

命令されるがまま、刀を振るい屍の山を築き、星を闇に包んで侵略する。その働きが認められた私はゼロ様に謁見する事が許された。
武功を上げ続けた私はやがてゼロ様からこう言われる様になった。

「シュラよ。貴様は我が血を受けるに相応しき器だ」
「は……と、言いますと?」
「シュラよ、頭を上げて我が元へ来るのだ」

畏れ多くもゼロ様の元へ近づくとゼロ様は私の胸に手を入れる。しかし痛みは無く、何かを注がれているのだろうなという思いがあった。

「これで良い」

それはいやにあっさりと終わった。ゼロ様が手を引き抜くと私の身体に熱が入り、身体の何かが変化していく感覚があった。

「貴様は立派な暗黒の支配者だ。これよりは我が右腕として働いてくれるか」
「…!ゼロ様がその様に仰られるとは…本望でございます」
「では、これより貴様はダークマターと名乗るがいい」
「ダークマター…私が一族の名を名乗って良いのですか…」
「当然だ。貴様は私が見て来た中で最高傑作たる存在。これから先、貴様の様な戦士は二度と現れぬだろうな」

ゼロ様にさらなる忠誠を誓ったあの日から、私はより精力的に星を支配し、壊し、或いは死合い日を続けた。帝国が巨大化していくにつれ、強力な一族の戦士が誕生し、ゼロ様の元へ集う。
ティターン、イージス、ゼルーギル…奴らもそうして集まったのだ。だが、ゼロ様は彼らに対して同じ様な事をなされなかった。つまり私こそが真の信頼を受けていたということ。それが大きな優越感にもなっていた。

「流石ダークマター殿。我が二刀流も未だ通じぬとは」
「お前が弱いのではない。私が強いだけだ」
「だが、何れ貴殿に食らいつける様に刃を研ぎ澄ませるとしよう」
「私は常に頂点にいる。その心意気、忘れるなよ」

ゼルーギル。コイツはよく私に手合わせを申し込んでいたな。師弟の様な関係に近いやもしれぬな。

「が…かか…か…」
「無礼者が。即刻首を斬られたいか?」

イージス。コイツは嫌いだった。初対面の時からな。

「俺が四天王だぁ?ほう!ならゼロ様から大金が貰えるじゃねえか!!金は天下の周りもの!俺の価値に漸く気付いたんだな!!」

ドガ!バキッ!ドゴッ!

「うぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
「黙れ。俗物のクズめが」

ティターンは良く分からぬ。言える事はほぼ言葉を発さず黙しておった事だけだ。だが、忠誠はあり、一度戦えば安定した戦果を上げていた。

しかし彼らには個性があった。ゼルーギルでさえゼロ様への忠誠ではなく私を越える事こそが大切な様に見えた。
そんなある日の事だった。滅多に口を開かぬティターンが私に話しかけて来たのだ。

ティ「ダークマター様、意思を失わぬよう…」
ダークマター「どういう事だ」
ティ「ワシには分かります。余りに盲信し過ぎて己の存在意義を確立出来ていない」
ダークマター「貴様、私に説法か?」
ティ「無礼を働いてしまいましたか。申し訳ありませぬ。では」

アイツは不器用で舌っ足らずだったから理解出来ていなかった。しかし能力の観点から考えて見ると分かる。奴は相手の心の闇を形にして能力コピーをしたり、トラウマを幻影として呼び出せる事を可能とする能力の持ち主。だからこそ私の寂しいという感情を知って奴なりに伝えようとしていたんだな。

「私は…己の気持ちに見て見ぬふりをしておったのやもしれん」

思い返しながら発した私の返答にカービィの奴は慈悲でも掛ける様な目で見て来た。

「ゼロへの忠誠が君にとっては第一だった。それを自分に言い聞かせる事で寂しいという感情を押し殺して来たって所もあったのかもね」
「だが私はそうする事でしか生きれぬ不器用な存在だ……それにこれから先をどうするかさえ…」

思い悩む私にコイツは言う。

「なら此処に住もう!ポップスターには友達もいるしゴハンも沢山あるから!」
「は?」
「カーくんがそう言うならそれがいいんじゃない?それともダークマターは行く宛があるの?」
「いや…無いが…」
「なら尚更だよ!折角貰えた新たな命なんだ、今度は自分に正直になってもいいじゃないか」
「…そうだな」

カービィのその押しとまくし立てるセリフに思わず承諾してしまった。いや、こうして誘ってくれた事が無かった私にとってこれは願ってもない事だったかもしれん。

「君のして来た事は確かに悪い所もあった。でもそれを受け入れて反省して進む事が大事なんだ。最初は皆も怒るし嫌うかもしれない。でも今の君なら分かり会えると思う」
「…私がか?」
「勿論!ぼくやアドに感情をあれだけぶつけて本音を言ってくれたんだ。お陰で君の事をよく知れたし、君にとっても全てを曝け出せた。もうぼくと君は友達さ!」
「友達か…」

その響きは悪く無かった。抑圧していた私の心の反動もあるのだろうが。だが、コイツの言う通り、私自信の思いで生きる、というのも良いなと感じていた。

「うん!友達!アドもそう思うでしょ?」
「確かに見ればとんでもない堅物かと思ったけど、今は私達と同じ様に悩むし怒るし泣くしで随分と親近感が湧いてるわ。宜しくね、ダークマター」
「あ、あぁ…よろしく」

アドレーヌにもそう言われた私は最早否定しようとも思わなかった。

「でもそうするとマターの住む所だけど…」
「あっ…その問題ね」
「何時までもカービィの家にはおれんからな」

するとアドレーヌが提案して来た。いきなり大声で。

「旦那!旦那の城はどう?あの城、使われてない部屋も多くてさ!」
「確かに!それにマターってば、デデデに取り憑いてたもんね!」
「してたな」
「多分、分かってくれると思うから!話してみようじゃないか!」

事はトントン拍子に進んでいき、デデデの城に向う事となる。早すぎるだろう。


「は?待て待て待て待て!!コイツを俺の城にぃぃ!!?」
「旦那〜頼むよ!部屋あるでしょ?」
「だがよぉ…コイツ俺に取り憑いて好き勝手しやがったんだぜぇ?」
「旦那、こんな女性…みたいな人に取り憑かれるなんてモテモテじゃん!」
「うっせぇ!それとこれは話が別だろ!しかもバカみてぇに強いし怖ぇし」

そこで私は少しジョークを飛ばしてみた。やはりデデデはいじり甲斐があるな。

「ふ…また夢遊病でも体験するか?」
「やめろ!お前が言うと洒落ならねえ!」
「あれ、マターももうこの星に慣れて来た?」
「いや、コイツの反応が面白いなと」
「旦那、言われてるよ?」
「あぁ分かった分かった!だが良いか!お前がまた変な事したら俺がギッタギタにしてやるからな!そこんとこ覚えとけよ!」
「あぁ、分かった分かった」
「ぷっww」
「笑うなっつーの!カービィ!」
「何だかんだ旦那とは息が合いそうじゃん」
「合わねえよ!コイツが無理矢理合わせた!」

そんなやり取りをしていると自然と笑みが溢れる。すっかり毒されたか。いや、これが毒されたと言うなら私はある意味、己の存在意義を確立出来た様にも思える。
デデデも照れ隠しする様な感じで私を迎え入れていた。

「ま、まぁ、何だ。一応お前も大王たる俺の立派な民だな。これからよろしく…と言っておくわ」
「デデデよ、私からも一つよろしく頼むぞ」
「へ、案外悪くねえかもな」


これから先は私の意思で生きる。勿論、散っていかれたゼロ様や同胞の思いも忘れはしない。それを背負い私は私の生き方を貫くつもりだ。

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