またーり書き込みしましょ(´・ω・`)



41話『島の実態』

「実は…この島では最近、色が消える現象が起こっているの」

「色が消えちゃうんですか?」

優也達は、さっきまで食事をしていた席に戻ってアミィと話していた。

「色が消えた物は全てが真っ白になって、まるで死んでいるみたいに生気が感じられなくなっちゃうの。被害は拡大するばかり…だから、このまま放置してたらアタシたちのカラフルアイランドは…色が完全に消えてしまうのよ!」

アミィは涙目になりながら二人に訴えかけた。

「……幸いな事に、カラフルシティでは被害がまだ出ていない。でもいずれはきっとここも…。だから町長さんに原因を調べて欲しいってお願いしてみたんだけど…協力してもらえなかったんだ」

「それがあの一昨日の揉め事ってわけか」

「でもなんで町長はあそこまで怒っちゃったわけ?」

「町長さんはね、最初は仕事が忙しいから協力できない。って言ったんだ」

「うん」

「でも…一昨日、町長直々に優也くん達を街案内してたでしょ。本当に忙しかったら案内してる暇なんてないと思って、問い詰めたら凄い怒られちゃったってわけ」

「……えっそれであんなに?」

「…町長も、町長としてのプライドがあるみたい。旅人を案内するのは必ず町長である自分だっていうルールも設けてるみたいで、そこは曲げられないんだって」

「うーん、なんか納得いかないわ」

「ほら、この街の職人さん達も気難しい方が多いでしょ?自分の仕事の事を他人からとやかく言われるのをとにかく嫌がるの。…きっと町長も同じだったのかもしれない」

「……でも流石になんもしてくれないのはおかしくないかしら。一昨日私たちを案内してくれた時の町長は…困り事があったらなんでも聞いてくれそうなぐらい親切だったんだけど」

「確かに、あの人普段は本当に親切な人なのよ…」

「とりあえず、町長の協力は無理だって事だね。それで…さっきの電話、少し話聞いてたんだけど、一体誰だったの?」

「さっき話してたのは、アタシの親友の松村翠よ。グリーンフォレストにログハウスを建てて一人暮らしているの。…自然が大好きだから、この子が一番今回の事について心痛めてるんだ。…だからあの子の悲しみに比べたらアタシなんて…」

「…やっぱり友達想いなんだねアミィ」

「そ、そんな立派なもんじゃないよ。…話を戻すけど、さっき来た電話でね、とうとう翠の住んでるログハウスまで色の消失が及んでしまったみたいなの」

「えっ!?…翠って子は大丈夫なの!?」

「それは…正直私も心配よ。でも少なくとも、怪我とかはしてないみたい。ただ、精神的に参っちゃってるかもしれないけど…」

「……大変だね、一刻も早く行かなきゃ」

「うん。それでアタシ、さっきの電話で翠と話して、明日翠の家に行くことにしたの」

「…明日、なんだね。じゃあショッピングは…」

「町長が手伝ってくれないなら、アタシたちで直接原因を調べようって話したんだ。……ごめんね、後で言うつもりだったけど明日のショッピングはまた今度になるかも…」

「全然構わないわよ。この非常事態だもの」

「うん、そうだよアミィ。気にしなくていいよ!」

「…ありがとう」

「それじゃ、明日は私たちもついていくわよ?その…翠さんって人の家に」

「……本当に、アタシ達に付き合ってくれるんだね?」

「「もちろん!」」

優也と楓が力強く返事をした。

「うん…わかった。…もう、こうなって来たら、しばらく仕立て屋さんはお休みかな…。」

「それがいいかもしれないわ。…この事件が解決しない限りアミィも気になって仕事に集中出来ないかもしれないし」

「そうだよねぇ…最近服のインスピレーションが湧かなかったのは、きっとこの事件が心のどこかで引っかかってたんだ」

「えっ、今まで不調だったのアミィ?」

昨日や一昨日の様子ではそうは見えなかったアミィの姿に、優也が驚き聞き返す。

「んー、そうだよ?今までは毎日、10着は新しい服のデザインを思い付いてたのに最近は1日でも5着ほどしか湧いて来なくてさー…」

「…やっぱりプロは次元が違うんだなぁ」

「ともかく、これで話はまとまったわね。なんか燃えて来たわ!!必ず、解決してやるわよ!」

やる気に火がつき、楓がうずうずし出す。

「よーし、そうと決まれば今日は早く寝て明日に備えようか」

「うん、それもそうだね。…あっ、それと…明日、翠の家に来るメンバーはあと二人いるわ」

「え?誰誰?」

「ダイロと、咲希って言う子達よ。一昨日、会ったんじゃない?」

「えっ…ああ!魔道具店の子か!」

「そうそう!(ダイロは思い出せてないのね。)まあ二人ともうまく仕事抜け出せるか、わからないけどね。そうだ、一応翠にあなた達のこと電話しとくね」

「うん、わかった。…じゃあおやすみ〜」

そう言って二人は寝室に入っていった。



「あれ、もしもし…アミィ?……どうしたの?」

「翠?あのね、明日みんなで集まるって言ったわよね?」

「…うん」

「その件なんだけど…そうだ、二人には電話した?」

「ダイロと咲希?ごめん、まだしてないよ…。……ちょっと、心を落ち着かせてた」

「ああ、そっか…。それでね、明日なんだけど、新しく二人、アタシたちに協力してくれる人ができたのよ」

「……?そうなの?一体誰が…」

「ほら、アタシが雇ったって言った二人よ。優也君と楓ちゃん。明日、翠の家に一緒に連れて行きたいんだけど、いいかな?」

「……その二人が…。……悪い人じゃなければいいんだけど……大丈夫なの?」

「全然そんな!いい子達よ。二人とも訳あって旅をしてるんだけどね〜持ってた魔法の杖が壊れちゃったり、盾とかの防具を持ってなかったりーって感じだから装備を整えにこの島へ来てるの!」

「……そうなんだ。装備が…」

「でもね、それでもわりと戦えるみたいだから、島を探索する時は結構役に立つと思うわよ。装備がないのはちょっと心もとないけど…まあ今は緊急だから仕方ないか」

「……そっか…。そうだ、その二人の事……ダイロと咲希にも、伝えておくね」

「うん!よろしく頼んだよ。それじゃあねー」

要件を翠に伝えると、アミィは足早に明日の支度を始めた。

42話『緑の森と白い家』


「……ここが、グリーンフォレスト…」

「すごい、こんな木見た事ないわ」

翌日。朝にカラフルシティを出発し、三人は平原を渡りグリーンフォレストへと辿り着いていた。

グリーンフォレストは名の通り緑の森。もちろん森が緑なのは普通なのだが、
この森では、幹までもが緑のグリンウッズが生成していた。

「緑の幹って…なんかすごい苔むしてるみたいだね」

「グリンウッズって言うのよ。幹に多くの葉緑体が含まれていて、木全体で光合成をすることができるの」

「へぇ〜、不思議な木だなぁ」

「……それよりあそこを見て!ほら、色が抜けてる」

「あ!本当だ…こんな真っ白になっているんだ…」

アミィが指さした先には色が抜け落ちた木や草が広がっていた。この森には普通の木が
グリンウッズと同じぐらい生成しているが、色が抜けてはどちらか優也たちには見分けすらつかない。

「…アミィも言ってたけど、これじゃあ植物が生きている感じが全くしないね…」

「ねえ、色を抜かれた植物って枯れちゃったりしないの?ほら、葉緑体がなくなって光合成出来なくなったりとかしてさ…」

「そこは大丈夫みたい。色が抜かれても植物の健康状態は平常だって翠が言ってたわ。…だけど、森に棲んでる動物とかはこの光景に混乱するでしょうね…」

そしてしばらく歩いているうちに、三人は翠の家へたどり着いた。

「昨日電話で聞いたから、覚悟してたけど…ここにある以上、やっぱりこれが今の翠の家なのね…」

色を抜かれた木々に囲まれた真っ白なログハウスを前に、アミィはショックを隠しきれないでいた。

「…この家が、翠さんの家?」

「まるで白いペンキに塗られてるようね…」

「うん…そうだよ。この家はね、翠が住むためにアタシと翠と…友達の咲希とダイロが力を合わせて作ったログハウスなの。緑と茶色の二つの色の木の幹で作ってあったんだけど…これじゃ全くわかんないね」

そうぼやきながら、アミィはドアの前に立つ。

「…おーい、翠?アタシだよ。大丈夫ー?」

アミィが真っ白な扉を叩いて翠を呼んだ。

「…アミィだね、今、開けるね」

「……あっ……」

扉を開けるなり、優也たちを見つけた翠は少し扉を閉めてこちらを覗き込んだ。

「昨日言った優也くんと楓ちゃん達。こっちが迷惑かけてんのにアタシの事すごく気にかけてくれた凄いいい子達だから心配しないで、翠!」

「……うん、アミィがそう言うなら…」

「…この人が、翠さん?」

「うん、そうなの。この子…すっごく人見知りだから初対面の人だとこんな感じなんだけど…許してね?」

「ええ、わかったわ」

「それじゃあお邪魔するわよ翠。」

そして三人は翠の家へと入っていく。

「……い、家の中まで真っ白なんだね…」

「はぁ〜、翠も災難だね…まさか家まで色が抜かれちゃうなんて。…さてと、それじゃあとりあえず三人とも自己紹介しよ!ね、翠」

「あっ……うん。私は…松村翠と言います。この森で…自然を守るための活動をしているんです」

「自然を守るための生活?」

「は、はいっ…。き、木に異変が無いかとか森中を回って観察したり、植物の病気を治してあげたりしているんです」

「話にも聞いてたけど、翠は自然が大好きなのね!」

「……はい」

翠は少し照れ臭そうに返事をする。

「それじゃあ今度は私の番ね。私は桐谷楓よ。…あっ今日はね、なるべく打ち解けやすくするために馴れ馴れしく喋ってるけど、普段は敬語でもっと礼儀正しいのよ」

「いや、むしろそっちの方が素でしょ」

優也が横から突っ込んだ。

「やかましい!…ゴホン。アミィには私達色々お世話になってるから、今回一緒に協力させてもらう事にしたわ。翠、これからよろしくね!」

「こ、こちらこそよろしくお願いします。か、楓さん」

「俺は真田優也です、今訳あって楓と旅をしているんだ。今回はアミィや翠さんが困ってるって聞いて力になるためにやって来たんだ。俺の力が役に立つかわからないけど、頑張って協力するよ。よろしく!」

「よ、よろしく、ゆ、優也さん」

「よーし、自己紹介も終わった事だしこれからのことを…」

「…待ってアミィ、まだ二人が来てないよ」

「二人?…あっ、ダイロと咲希来れるのね?」

「うん、二人とも…なんとか仕事抜け出してくるって。……あっ、来たみたい」

翠が話してる最中、トントンと扉が叩かれ、翠は扉を開ける。

「よ、よお翠!大丈夫だったか!?俺、師匠になんとか無理を言って来…
「……ダイロ、邪魔。早く入って」

「いってーな、押すなよ咲希!!俺が話してる途中じゃねーか!」

「……話なら、入ってからでもできる」

「ぐぬぬ…み、翠。邪魔するぞ」

こうしてこの場に、六人の子供達が集ったのであった。

43話『一時しのぎの装備品』


「邪魔するぜ。…翠、大丈夫か?災難だったな」

「……うん。少し落ち着いた。みんなもいるし…」

「そっ、そうか!よかったぜ!」

「よく来てくれたね〜二人とも!あっ、紹介するよ。この子達は…」

「知ってるさ、昨日翠から電話で伝えてもらった」

「そ〜、ならよかった。じゃあ名前も知ってるわね?」

「おう。確か優也と…楓って言うんだっけな?名前は電話で聞いてたけど、まさかお前達だったとはな〜」

「あれ、面識ありましたっけ?」

「お、オイオイ。覚えてないのか?鍛冶屋橙堂で…まあ、俺はちょっとしか顔出さなかったけどよ」

「ああ、オランジュさんに怒られてた人!!」

「その思い出し方は勘弁してくれ」

「ごほん。…さてと、ちゃんと自己紹介もしとかないとな。俺は見習い鍛冶屋のダイロだ。今回は手伝ってくれてありがとう。この島の為にも、今日はよろしく頼む」

「…うん、よろしく!!」

「それで…咲希も一応、面識あるんだろ?」

「……誰、だっけ」

「おい、会ったんじゃないのか…?」

「…あの、お会いしましたよね。町長と、一緒に魔道具店に伺ったんですけど…」

「……あぁ。…仕事とお金がなくて困ってた人たち」

「その思い出し方はちょっと勘弁願いたいわ」



「ね、咲希も自己紹介しておこう?これから一緒に協力する仲間なんだし」

「……私は青村咲希。知ってると思うけど魔道具店をやってる。よろしく」

「一応言っておくけど咲希は無愛想に見えても、優しいのよ?」

「アミィ、恥ずかしいからそんなこと言わないで。」

「あははごめんごめん…さて、揃った事だし始めましょうか」

「……ちょっと待って、アミィ!…ねえ咲希…。昨日言ったアレ、持ってきてくれた…?」

アミィの話を遮り、翠が咲希に話しかけた。

「…………あぁ…今、渡した方がいい?」

「……どうしたの二人とも?」

「…これ、渡す」

咲希は楓に小さなロッドを渡した。

「これは…?」

「……売れ残った魔道具。使わないから代用にして」

「あ、ありがとう!」

「おおそうだったそうだった。俺からもこいつを」

そう言ってダイロは優也に盾を渡した。

「わー、いいの?」

「ああ。勝手に持ってってもバレない奴を持ってきたからな、あんまり性能は高くないがないよりはいいだろ?」

「うん、ちょうど盾が欲しかったんだ、ありがとう!」

「……でも、よく私達が今必要な物をわかったわね」

「……あ、あの、実は昨日アミィから電話が来て、優也さん達の事を聞いたんです。それで、装備品が揃ってたほうがいいかなと思って二人に無理言って手頃な物を持って来てもらったんです」

「へー、そうだったの!よく気が回るわね、翠!二人とも悪いね、ほんとはアタシからダイロと咲希に頼むべきだったかな」

「そんな、アミィは十分気を回してくれてると思うよ。でもまさかここで盾が手に入るなんて思わなかったな。翠、ダイロ、ありがとう!」

「私からもお礼を言わせてもらうわ。おかげで魔法がまたバンバン打てるわ!ありがとう二人とも!」

「は、はい!」
 
「へへ、いいって事よ!」

「……このロッドは、その杖みたいに壊さないでね」

「そ、そんなに壊したりしないわよ!」

「……多分楓は、杖で直接敵を叩いてる。そんな使い方したら、並の魔石だとすぐに割れる」

「な、なぜその事を…」

「……壊れた杖を見ればわかる。あんな壊れ方、何かを叩いた時ぐらいにしかしない。……とにかく、それも一応売り物だから壊したら、弁償」

「…わかったわよ!これを借りてる間は敵を叩いたりはしないわ」

(……借りている間は?)

「さっすが、咲希の眼は誤魔化せないな。…おっと、このままじゃ俺もただのお調子ものになっちまうから職人としてアドバイスさせてもらうぞ」

「優也、盾は過信するな。全ての攻撃が防げると思ったら大間違いだからな。盾を過信しすぎて大怪我を負った冒険者を師匠からたくさん聞いてきたんだ。…だからなるべく、敵の攻撃が来たら盾で無理に防ごうとせず、避ける事に集中しろ。わかったな?」

「……わかった。気をつけるよ!」

「それとだな、武器や盾には、愛情を持って接してやるのさ。例えば俺の場合な…」

「ちょいちょい、ストーップ。これ以上、話を長引かせてたら日が暮れちゃうって」

「おいおい、これからが大事な話だったのに」

「また後ですればいいじゃん。とりあえず、事件について話を進めようよ!」

「…ちぇっ、わかったよ」

ダイロは渋々、話を切り上げたのだった。

44話『色消失事件・対策会議』


「…えー、それではこれより!第一回カラフルアイランド色消失事件対策会議を始めまーす!!みんな、拍手!!」

パチパチパチパチとまばらに拍手が飛び交い、優也と楓も合わせるように拍手をした。

(……なにこのノリ?)

(俺たちが集まって話し合いするとき、アミィはいつもこんな感じになるんだ)

(第一回って…二回目以降もあるのかしら?)

「それじゃあまず事件の概要から整理していこうかな。事の始まりは6日前。翠がグリーンフォレストで、日課の木の体調管理をしていた最中に真っ白な木を発見したのが始まりだったんだよね?」

「…………うん。最初は、何かの病気かと思ってすごく焦った…」

「幸いなことに木の病気ではなかった。周りの地面まで真っ白になっているのを見て、色が消失しているって事に気づいたんだよね。そしてそれはみるみるうちに広がっていった」

「翌日には更にグリーンフォレストの木々が、その翌日はレッドマウンテンにブルービーチ。…極め付けは昨日、まさにここ。翠の家からも…色が吸い取られてしまった」

「……このままじゃ……島の自然が……」

「そんな俯かないでよ翠!!それを防ぐためにアタシ達は集まったんだから。」

「それで…何か色消失を止める手がかりはないのか?」

「うーん…。色が消える瞬間を直接見た人は誰かいない?」

「……この中じゃ翠だけ」

「そうね…翠、辛いだろうけど…昨日の事、思い出せる?」

「……わかった、ちょっと思い出してみる……。……昨日の夜、私は部屋で本を読んでたの…しばらくしたら何か、嫌な気配が外からして、窓から外を見てみると…木や地面がどんどん侵食するように無色になっていったの…私、もうパニックになっちゃって…」

「そっか…それで、私に電話をかけてきたのね」

「…何か嫌な気配がしたって言ったよね、何がいたか確認できなかった?」

「……外を見た時は既にもう気配が消えてて、姿は確認できなかったです…ごめんなさい」

(というか、本を読んでたのによく外の気配に気づけたな…もしかして翠って案外強いのかも?)

「もしかしたらその何かが色を吸い取ったりしてるんじゃないかしら?」

「え?どうやってだよ楓」

「そりゃあ…やっぱり魔法でしょ。不可思議な現象は大体魔法よきっと」

「……うん、すごくいい加減に言ってるような気がするけど、実際魔法の他に考えられない…かな?」

「だがよ、そんな魔法あるのか?」

「えーっと…アタシは魔法に詳しくないから知らないなぁ。ねぇ咲希は?」

「…………聞いた事ない」

「咲希が聞いた事ないなら存在しないんじゃないか?」

「待って。……この世には、まだまだ知られていない魔法なんて山ほどある。ましてや私の知ってる知識なんて全然乏しいから……あまり鵜呑みにしないで」

「……わかったわ。それじゃあ魔法じゃないかどうかは一旦置いといて、何か対策をみんなで考えましょう」

「対策か。…魔法かどうかすら分からないもん、どうやって対策すればいいんだ?」

「俺は翠が感じた気配が怪しいと思うな。そいつを追うのはどうかな?」

「でもそれがどこに現れるかわからないよ?…なんなのかもわからないし」

「それだったら、色の消える現場に先回りすればいいんじゃない?」

「それだわ!これから色が消えそうな場所に行けば、しっぽを掴めるかもしれない!!」

「…それはいい案だな。で、次色が消えそうな場所は…どう予測するんだ?」

「えーっと、昨日色が消えたのはこのグリーンフォレストだから…レッドマウンテンとブルービーチ辺りかな?」

「……一応、まだ色消失の観測ができていない場所だとイエローデザートとかがある」

「うーん、どれに行ったらいいんだろう?」

「いっそ全部行っちゃえばいいんだよ、三手に分かれて調査するってのはどう?」

「……いいと思う。三つに分かれれば、きっと何か掴める…」

「よし、それじゃあ早速チーム分けしましょう」

六人は三手に分かれて調査をする事となった。

「えっとブルービーチは…前にダイロが確認しにいったわよね、だからダイロはそこで決定ね」

「おいおい勝手に決めんなよ!」

「翠はどこに行きたい?」

「……え?えーっと……植物が綺麗なところなら…」

「ちょっ無視すんな!」

15分ほど話し合いをして、次の通りに行き先が決まった。
  • ブルービーチ
優也
ダイロ
  • レッドマウンテン


  • イエローデザート
アミィ
咲希

「よーし、よろしくダイロ!!」

「あ、ああ。」(あ〜…翠と一緒に行きたかったぜ…)

「翠を任せたわよ、楓!」

「うん!翠、一緒に頑張るわよ!」

「えっ…あっ……はいっ私も頑張ります!」

「さて、咲希!あれを貸してちょうだい!!」

「……そうだった。これをみんなに…」

咲希はアミィに何かを手渡した。

「よし、ありがとう。みんな!何かあったら…これで連絡してちょうだい」

そう言ってアミィは手に持った…結晶を掲げる。

「……それは?」

「通信魔石よ。咲希が用意してくれた魔道具なの。相手から着信があると淡く光りだすから、そしたらこの石に自分の魔力を流しこむと応答することが出来るわ。逆にこっちから魔力を流すと、相手に着信がいくの。簡単に言ってしまえば、電波の代わりに魔力を使った通信機ね」

「へえ、こんな魔道具があるんだ…」

「……でも一つ、注意がある。流し込む魔力があまりに多すぎると、魔力容量の限界を突破して爆発してしまうから、くれぐれも気をつけて…。流し込む魔力は、微量で足りる」

「なんか物騒ねっ!」

「魔道具は便利だけど、思わぬところに落とし穴があるんだよねぇ。…さあ、いきましょうか。何かあったら必ず連絡してね!」

「うん…わかった!!」

話がつくと、六人は翠の家から飛び出して三つに散らばっていった。

45話『青い砂浜と友好的な魔物』


青い空、青い海、……そして、青い砂浜。
優也とダイロの二人は全てが青に包まれた、ブルービーチに訪れていた。

「うっわぁ、一面青い砂浜…作り物みたい…でも暑い〜…まだ5月なのに」

「ブルービーチは見晴らしがいいからな、色が消えたらすぐに気づけそうだ」

「……ダイロは平気そうだね」

「ああ!俺はここより全然熱い溶鉱炉の前で毎日作業をしてるからな」

「そっか…あれ、あそこ…色消えてない?」

優也が指さす方向は確かに、色が抜けて真っ白になっていた。

「…あれは…前に消えたやつだな。俺が確認したぜ」

「そっか…じゃあ向こうにある家は?」

「あそこは…海の家、確か…あおいだすって言ったっけな?前に海水浴に行った時に寄ったんだが、店主が魔物のおっさんなんだ」

「えっ、魔物!?」

「ああ。あれ、知らないか?魔物は人間と敵対してる事が多いがな、中には人間と一緒に暮らす知能の高い魔物も結構いるもんなんだ。この前なんか魔物の冒険者がうちに来たんだよ」

「へえー…魔物にもいい人がいるんだね」

「ああ。まあ人ではないけどな。……せっかくだ、会ってみるか?」

「え?う、うん会ってみたいけど…俺たちだけ海の家に行くなんて、なんか悪いな」

「なんだ、意外に優也って真面目だな…別にサボる訳じゃないからいいのさ!ここで何か無かったか、聞き込み調査をするだけだ!!」

「……で、まあそのついでに…この暑さだ、水分補給にラムネとかアイスとか買っても別に許されるよな!!さ、とっとと行こうぜ」

(冷たいものが食べたいんなら素直に言えばいいのに…)


「わあ、お店の中も青でいっぱいだ…」

「いらっしゃいませ、『海の家あおいだす』へようこそ!!」

「いらっしゃいませー。ここじゃ見かけないお客さんだねー。」

二人を出迎えてくれたのは短い青髪とピンク色の長髪の女の子達だった。

「あ、こんにちは〜。あの、ここの店主さんって居ますか?」

「…あおっさんの事かな?ちょっと今、厨房で料理してるから待っててね」

「わかりました!」(あおっさん…?)

「せっかく来たんだから、何か頼もうぜ優也」

「……ダイロはそれが目的だったでしょ、絶対」

「メニューはこれだよ、どうぞー」

「ありがとうございます……わっ、すごい。メニューまで青づくし……」

「えーっと俺はかき氷とチョコミントと…ラムネかな」

「ちょっと頼みすぎだって、お腹壊すよ?」

「大丈夫大丈夫!優也もなんか頼めよ!」

「わかったよ…じゃあ、ラムネひとつください」

「はーい!」

パタパタと忙しそうに店員の女の子達は料理や飲み物を運んでいる。

「おまちどう、ラムネだよ!」

「わー、美味しそう!ゴクゴク…」

「……ぷはーっ、うめえ〜!」

「ぷはー。でも、ただラムネ飲んで待ってるだけじゃなんか暇だなぁ。」

「それじゃ ウチの うたきく?」(……じまんのうた……きかせてあげる……)

そう言って優也の前に現れたのは可愛らしい服とお人形を手にはめた、女の子だった。……おそらく人間ではないのか、特徴的な形の鼻をしていた。

「わわっ!」

「あ、ごめん おどろせちゃった?」(……すごくおどろいてる……)

「ああいや、実はこいつ。友好的な魔物に会ったのが初めてなんだ」

「えっ、この人魔物なの!?」

「そうだぞ、えーっと確か名前は…」

「うち、うたひめミコト!このおみせで おうたをうたってるんだ!(……あたしはミージュ。……ひとと くらす まものに あったことがないなんて めずらしい……。)

そう言いながらうたひめミコトは…手に身につけた、パペット越しで優也達に明るく話した。

「あの、人形が本体なんですか…?」

「んー、ほんたい? なんの ことかな。(……どっちが ほんたいかと きかれたら…どっちも ほんたいでは あるかな。)

「ミージュはパペット越しで会話するペドロリスって言う種族の魔族なんだ」

横から青髪の子が、そう答えてくれた。

「へえー…ペドロリス…」

「うたひめミコトって名前はパペットの名前なんだー。本当の名前はミージュっていうんだよ!」

「…ウチが しゃべってるあいだは うたひめミコトとして あいてしてね!(…くちベタだから ミージュとしては あまりはなしたくない。)

「ちなみにあたしの名前は姫路 杏っていうんだよ!よろしくねー♪」

と、ミージュの名が明かされたのを皮切りに、一同は軽い自己紹介を始めた。

「ボクは姫路 志郎、杏はボクの姉ちゃんなんだ。」

「俺は真田優也です!そして…隣でめっちゃアイスを食べてるのは…ダイロです。」

「そっかー、ゆうやくんと ダイロくんだね。それじゃあ あらためて…ウチのうた きく?(……あのこ、ダイロくんってなまえだったんだ。 …たまーに おみせにきてた… きがする。)

「それじゃあ…せっかくだし一曲お願いします」

「…おっけー!」(……はりきって……うたうよ……)

ミージュに歌をお願いすると、店内は綺麗な歌声で包まれた。

「……素敵な歌声…」

思わず歌声に浸る優也。

「おまたせ〜かき氷とチョコミントだよ!」

「おっ、来たか。早速食うぜ!」

「……そんな一気に食べたら頭痛がくるよ…」

すると突然、厨房の方から声が聞こえて来た。

「おおー、青い。青い服だ!」

「な、何!?…あっ!」

優也達の方へ歩いて来たのは、青い巨体の…おっさんだった。…おそらく魔族だろう。

「あ…あなたが、あおっさ…このお店の店長さんですか?」

「おう!俺は、誰よりも青を愛するブルチカーラ族のディコルノだ。お客さんが呼んでるって志郎が言ったもんだから何事かと思ったが…二人とも見事な青い服だな!青色は好きか?」

「えっと…はい。色だったら青が一番好きですね」

「…俺は、オレンジが一番だな。青い服なのは偶然だぜ」

「そうかそうか!青の魅力がわかるとは中々見込みがあるな。…ハッ、まさか店長である俺を呼んだのは、この店の青では、物足りなかったからなのか…!?」

「いやいやいやクレームを言いたい訳じゃないですよ!!第一、青はだいぶ足りてます。」

「あっ……そうか。足りてるか…だいぶ…」

うんうんと頷くミージュと志郎の横で、あおっさん…もといディコルノはガクッと肩を落とした。

(オレンジの事は全く触れなかったな…まあいいか。あとは青好き同士に任せて俺はアイス食べてよ。)
「すみませーん、かき氷追加でー!」

まだ食うのかと、優也は呆れ気味に隣にいるダイロを見た後、本題へ入ろうとした。

46話『あおっさんの話』


「あの、初めまして。俺は…真田優也って言います。こっちは、ダイロ」

「えっと…俺たちが店長さんを呼んだのは…聞きたい事があったんですが…それともう一つあって、正直に言うと、魔物が海の家をやっていると聞き…どんな方なのか、見てみたかったんです」

「ほお、人里で働く魔物が珍しいのか」

「は、はい。俺の故郷では全く見かけた事がなかったので…。」

「そうか、じゃあ俺のような奴に会うのは初めてって事だな。」

「はい。…今まで、人間を無差別に襲う魔物しか会った事がなかったので驚きました」

「…そうか、それは同胞が迷惑をかけたな。だが本当はな、魔物も人間も、どちらも同じようなものなんだぞ?」

「そうなんですか?」

「どちらもお互いを敵だと思っていたり、魔物も人も関係なく接する者もいるってわけさ。俺とミージュは完全に後者だな。」

「ウチはかよわい うたひめ だからね。 あらそいごとは にがてなの!(……ほかの ペドロリスは パペットに せんとうようの ギミックを しこんでるけど あたしはべつ。)

「な、なるほど… 魔物って、今まではとにかく人を襲ってくるってイメージでしたが…ディコルノさん達のおかげで、払拭されました。ありがとうございます」

「おう!人間も魔物も、別に悪い奴ばっかりじゃないのだ。…特に、青色が好きなやつに悪いやつはおらん!」

(……それは さすがに いいすぎだとおもう)

「そうだ、それで…聞きたいことってなんだ?… 青の魅力について語り合うか?」

「ち、違いますよ。あの、つい最近ブルービーチで…色の消失があったと思うんですが」

「……あぁ!ビーチの砂の色が抜け落ちてしまっている事件のことか?」

「はい、それですそれです!!」

「俺も困ってるんだ!このままじゃ綺麗な青のビーチがどんどん白い砂浜に…」

(…浜辺が白いのは、ある意味普通だし別にいいんじゃないかなぁ)

志郎が心の中でぼやく。

「あの、実は俺たち…その色の消失事件を迫っているんです。何か、怪しい人物を見たりしませんでしたか?」

「なるほどなぁ、そうと来れば喜んで知ってる事を話そう!……と、言いたいんだが…悪いが俺は何も見てないんだ。…すまないな」

「そうだ、シロ達はどうだ?何か怪しい奴、見なかったか?」

「え?ボク達?えーっと…そうだなあ……」

「あたしはなんにもみてないなー」

「ウチもかな。(……しいていうなら あおあおうるさい あおっさんは あやしいじんぶつに はいるかも?)

「……あの、ボク最近ブルービーチでディスカラーズに絡まれたかな…。怪しさは満点だったよ」

「ディスカラーズ?」

「カラフルアイランドに昔からいる魔物だよ。いろんな場所で、たまに会うと絡まれるんだけど、無視してれば被害は無いよ。…でも最近になって少し数が増えて来たんだ」

「そんな魔物がいるんだ。見た目はどんなの?」

「えーっと、色んな色の奴がいて、単色のスーツと帽子を被っててサングラスをかけてるんだ。ちなみにブルービーチだと青のディスカラーズがいるよ」

「青のディスカラーズはなかなかいいセンスしてるからな!悪いやつではないかもしれん」

「それはあおっさんから見た話でしょ!色で悪いかどうかなんて、変わんないよー。」

「ははは…それじゃあ俺たち、これからそのディスカラーズってのに会ってみたいと思います。」

「ああ。このブルービーチの未来は…お前たちに託したぞ!」

「気をつけてね、無視してれば全然大丈夫だったけど…正直話し合いが通じるか、わからないよ」

「うん!それじゃあ…ほら、いくよダイロ。もうアイス食べ終わったでしょ?」

「…が………ら、…イレを……てくれ。」

「うん?」

少し様子がおかしいダイロ。

「腹が痛いから、トイレを貸してくれえーッ!!」

「だから食べ過ぎだって言ったじゃんっ!!」

その後、お腹を壊したダイロは30分ほどトイレから出てくることはなかった…。



「……しかし、妙だな」

「あおっさん?どうかしたの?」

「…いや、あの少年…なんだか妙に、頭に引っかかっているのだ」

「錆びた剣を持った青い服の少年……どこかで、聞いたような」

「うーん、そのうち思い出すんじゃない?」

「……それも、そうだな。さて、客足も落ち着いた事だ、シロ、青の魅力について一緒に語り合うとするか!」

「しないよ!!」


…その男、ディコルノ(とミージュ)は…魔王軍に属している魔物だった。
今朝、八大幹部のマジーナから、彼へ連絡が届いた。

『魔王様に仇なす恐れがある、仙人の里に伝わる伝説の聖剣「イノーマス」。今となっては錆びているが、侮ってはならない。
…それを手に持った、青い衣を纏った勇者を見つけたならば…至急、捕らえて引き渡すのだ。』と。

優也は自信を勇者とは言わなかった為に、ディコルノは優也が持っている剣をイノーマスだと思わなかった。
そして同時に、ディコルノも自身が魔王軍である事は言わなかった為、優也に詰め寄られる事はなかった。

本来、お互いが敵同士ではあったのだが、奇跡的に敵対する事がなかったのだった…。

47話『紅蓮の火山と赤きマフィア』

一方その頃。楓と翠は真っ赤にそびえたつ、火山の登山口前へ来ていた。

「……わー、おっきな火山…」

「…………」

「ね、翠。あの赤い木は何かしら?紅葉…じゃなさそうだけど」

「あっ……あれは、赤いイチョウの木です。秋になると更に紅くなって綺麗に散るんです」

「へぇ〜、きっと紅葉よりも綺麗なんでしょうね。優也が見たら喜びそうだわ」

「…ゆ、優也さんは紅葉が好きなのですか?」

「そうよ、秋が一番好きで、毎年よく紅葉狩りに行くのよ」

「……そうなんですね。…自然が好きな人は…私も好きです」

「…そ、そう?でもまあ、自然が嫌いな人なんてそうそういないわよ」

「…………」

「翠?どうしたのよ。…なんかさっきからそわそわして」

「あの……さっきから、何かがこちらを…伺っている気がするんです」

「え?本当…?」

「ねぇ!!誰かいるのー!?いるなら出てきなさいよーッ!!」

楓が大声を出し何者かに呼びかける。…山に反響して、やまびこが返って来た。

「……何も出てこないわね。翠、やっぱり勘違いなんじゃ…」

「おやおや、気づかれてましたか。」

「うわっほんとに出てきた!?」

「ひゃあ!?」

突如現れた謎の魔物に、二人は驚き身を構える。

「ふふ…こんなところで何をなさっているのですか?ひ弱な女性がお二人だけで、人気のない場所にいては…悪い魔物に襲われても文句は…

「ファイア!!」

「わっぷ!?」

ぶつぶつ喋る魔物に楓はいきなりファイアを放った。

「楓さん!?」

「い、いきなり何するんですか、炎を浴びせるなんて!!わ、私が赤のディスカラーズだからよかったものの!!」

「何よ、アンタどっからどうみたって怪しいじゃない。それに私たちを襲うみたいな事言ってなかったかしら?」

「い、いやそれは…言葉の綾というか…話の切り出しというか。ふ、普通だったらとりあえず前口上は聞くものでしょうが!?」

「やられる前にやれ、よ!アンタみたいな怪しい奴、悠長に会話なんてしてたら途中で豹変して襲いかかってくるに決まってるじゃないの」

「…うう、女二人だけで楽勝だと思い話しかけてみれば……こ、こんな凶暴な女性だったとは見誤りましたね…!」

「だーれが凶暴な女性よ!失礼な魔物ね!!」

「ひえっ!!」

「今度は倒してやるわ!喰らいなさい、サン…

「楓さん、待って!!」

楓の前に翠が立ち塞がる。

「み、翠?危ないわね、何してんのよ!?」

「……見逃してあげてください。…多分、この様子じゃ襲ってはこないですから…」

「クッ!…よ、用事を思い出しましたよ。……今日のところは、失礼致しますよ〜っ!!」

そう捨て台詞を吐き、魔物は一目散に去っていった。

「……なんだったのよ、アイツ。」

「……あれは…ディスカラーズという魔物です…。昔から、カラフルアイランドに生息していて…たまに人に絡んでくるんです」

「そうなの?それじゃあ迷惑じゃない。やっぱ倒しちゃえば良かったんじゃないかしら?」

「や、やめてあげてください…。無闇に、魔物を倒す必要はないと思うんです。…確かに、迷惑は迷惑なんですけど…無視して通り過ぎれば…何もせず、見逃してくれるんです」

「…ふーん。一体何がしたいのか、よくわからないわね…でも、翠はどうして庇うの?確か魔物は…倒しても魔力がある限り死ぬ事はなく、魔界という場所で復活する…って聞いたわよ」

「……例えば、ディスカラーズ達はみんなこの島で生まれ育ったんです。それが倒されて魔界に送られてしまったら…きっと、仲間と離れ離れになって悲しい思いをするはずです。……ですから、いくら死ぬわけではないとはいえ、魔物を倒すのは…ちょっと可哀想だと思うんです」

その話を聞いて、楓は石にされた友達や家族の事を思い浮かべる。

「……うん、その通りね…私、魔物の心情なんて考えたこともなかったわ。…教えてくれてありがとう翠。間違ってたのは私みたいね」

「…は、はい!理解してもらえたのなら嬉しいです!」

「でも!もし私たちに襲いかかって来る魔物がいたら…それは容赦なく倒すからね、いいわね?」

「……は、はい。」

翠は楓の猛々しい姿勢に少したじろぎながらも返事をした。

48話『登山』


「さーて、変な邪魔が入っちゃったけど…行きましょうか」

「…はい!」

「ところで、前にレッドマウンテンで…色が消えた場所はどこら辺なの?」

「えっと、確か登山口から少し進んだ先だそうです。だから、次消えるとしたら…山頂付近が怪しいかもしれません」

「…なるほど、じゃあこれから山頂まで登るわけね」

「……そ、そうですね…。」

「……翠、疲れたら無理せず言ってね?」

「わ、わかりました」

そうして登山口を通り、どんどんと登っていく楓と翠。
その道中、別個体のディスカラーズがあいも変わらず絡んできたが
楓と翠は華麗にスルーしていった。(一回、あまりのしつこさに少し楓が手を出してしまったが)

そして二人は、山の中間地点まで来ていた。

「はぁ…少し疲れてきたわね…って翠、大丈夫!?」

隣を見ると、疲弊して膝をついている翠の姿。

「……はぁ、はぁ…す、すみません……私…た、体力が…無くって…」

「…うーん、翠に山登りはキツかったかしらね… 体力のありそうなダイロ辺りがレッドマウンテンに行くべきだったかしら…」

「……はぁ…私のことは…気にせず、先へ……後から、追いつきますから……」

「何言ってんのよ。……よっこいしょっ…と」

「な、なにをするんですか!?」

楓は翠を背中に背負った。

「何って…置いていくわけにもいかないでしょ。翠が復活するまで、私が背負っていくわ」

「そ、そんな!……うぅ、迷惑かけてごめんなさい…」

「困ったらお互い様よ。…それに思ってたより全然軽いわね翠。ちょっと羨ましいわ。」

楓は軽く冗談を言うと、翠を背負いながら一人で山を登っていった。

「ふう…それでも結構、足腰に来るわね…!」

「お、降ろしていただいても構いませんよ!私…歩けますから…!」

「いいからいいから、私に任してよ。これでもテニス部で鍛えてるんだから!」

「ふぅ……それにしても、なんか真っ赤な霧が出てきたわね…」

気づけば、辺りに真っ赤な霧が立ち込めていた。

「……レッドマウンテンは、たまに赤い霧が出るんです」

「へぇ…さっきのイチョウといい、中々幻想的な場所なのね」

そこから楓は翠を背中に、山を登り続ける。翠は最初は申し訳なさそうにしていたが、いつのまにか寝てしまった。

「はぁ…はぁ…」

「おやおやお嬢さん、人を背負って山登りとは大変ですねぇ。どちらへ
「うっさいわねっ!!どっか行きなさいよ!!」

「ひっ…用事を思い出しました!!」

近づいてくるディスカラーズも、疲労でもはや開口罵声で追い払う始末。
…その調子で一時間ほど山を登り続け…流石に限界を感じた楓は木陰に翠を下ろし、一休みを始めた。

「……はあー!もうクタクタだわ…。お腹すいたわね…そろそろお昼かぁ。……あら」

ふと横を見ると、赤い木に真っ赤な綺麗な木の実が実っていた。

「……すごい、綺麗な木の実…。少し…戴こうかしら」

疲れた足で、ゆっくり木に歩みる楓。そのすぐ後に、翠が目を覚ます。

「……う、うーん…私…寝ちゃってたんだ……。あれ…楓さん?何をしてるんだろう…」

「…………ああっ!!楓さんっ!!待ってくださいッ!!」

木の実をもぎ取ろうとする楓を見るや否や、翠は大声で待ったをかけた。

「…えっ?あ、これすごい甘くて美味しいわ」

時すでに遅し、楓はすでに木のみを手にし…口にしていた…

「か、楓さんっ!!…このレッドマウンテンでは、木の実や生き物は取っちゃいけないんです…!もし取ったら山の主の怒りを買ってしまうと言われているんですっ!!」

「っえええ!?じゃあこの木の実、食べちゃまずかったのかしら!?」

「はい!!ど、どど…どうしましょう…!!」

「うぅ……っていうか、なんか身体の疲労がどんどん和らいでいくんだけど…」

「も、もしかしたらその木の実の力なのかもしれませんね…」

「すごっ…え、そんなすごいもの食べちゃったの私!?…な…なんとかならないの翠?」

「…や、山の主は、火口にいると聞いたことが…あります。こうなったら…直接、謝りに行くしかありませんね…」

「ううう……襲われたらどうしよう…」 

元気になった身体に対し、心が沈む楓と翠は、再び山頂を目指して山登りを始めたのであった…。

49話『黄色い砂漠と精霊の力』

「…あ"ぁあ"ーづぅううーい"ぃいいいー…」

「……」

咲希とアミィは、イエローデザートにやって来た。通常より更に黄色い砂で覆われた、広大な砂漠である。
今は5月だが砂漠は砂漠なので真夏のような暑さが続いており、アミィは今にも溶けてしまいそうだった。

「はあ…この暑さ…熱中症になっちゃうって…咲希、水持ってない…?」

「……ない」

「そう…でも咲希はよく平気よねぇ…さっきから文句のひとつも言わず歩いてさあ…。ねえ?咲希。貴女、さっきから一雫も汗をかいてないように見えるんだけど…なんでかなぁ?」

「…………さぁ」

「とぼけないでよーっ!!どこかに身につけてるんでしょ?氷のクリスタルを!」

「……気づいた?」

氷のクリスタル。…身につけると、暑い場所でも全く暑さを感じずにすむことのできる魔道具だ。

「わかるよっ!!何年一緒にいると思ってんのさ!アタシにも貸してよ、氷のクリスタル!」

「……はい、これ」

「ああぁぁ涼しいぃぃぃ……もう!咲希は言わないと魔道具を貸してくれないんだからぁ…」

「……言われなかったからてっきり要らないかと思って」

「要るわよ、わかってよ〜!何年一緒にいると思ってんのさ!(二回目)…この暑さに耐えれる人なんてダイロくらいしか知らないって…」

「というか今思えば、ブルービーチもレッドマウンテンもここも…ぜーんぶ暑いよ…みんなにも渡してあげとくべきだったかなぁ」

「……過ぎたことを気にしても、仕方がないと思う。……早く、探索しよう」

色々と後悔するアミィを気に留めずに咲希は先を急ごうとする。

「はぁ…ほんとマイペースなんだから…」

それから二人はひたすら、砂漠を突き進んでいった。
しばらくすると、大量のモンスターが二人の前に現れた。

「…わああ、すごい量の魔物!!」

「……イエローマカレテラーがこんなに…」

咲希とアミィの前に、20体のイエローマカレテラーが現れた。

「これは…流石に、普通に戦ってたら埒があかないわね…!」

「…久々だからちょっと不安だけど…何かあったら咲希、サポートよろしく」

「……うん」

「よーし。出てきて!パタフリル!」

アミィは付けていた蝶々の髪飾りを取り外し声を上げた。
すると、髪飾りが光輝き…現れたのは。

「ハーイ!お呼びですか、アミィ様!!ってあっつー…」

可愛らしい蝶々の羽を生やした精霊。
なんとアミィは精霊を一匹従えていたのだった。

「ごめんね〜砂漠で呼び出して!アイツらを倒しちゃって欲しいの!」

「うわっ…沢山いますね!!りょーかいでーす!早速いきますよー。…スリープ!」

マカレテラー達全員に睡眠魔法が降り注ぐ。

「…………」

「あ、あれ!効いてないですよ!?」

「マカッ」

「きゃあぁ!」

パタフリルに巻きつく、マカレテラー。

「マカァ!」

そして、アミィ達にも襲いかかって来る。

「ま、巻き付かれちゃった。このままじゃまずいわ!」

「はーなーせぇー!!」

「……アンウィンドボール!」

「マカッ!?」

「…あっ、ほどけたっ!ありがとうございます!」

「咲希!!助かったわ!!」

咲希が投げつけた魔道具により、彼女達は巻きつきから抜け出す事ができた。
そしてすかさず、パタフリルは攻撃に転じた。

「もー!貴方達、許さないんだから!!こんどは…パラライズ!」

「マ、マカッ…」

麻痺魔法によってイエローマカレテラー達の動きが鈍る。

「よし、今度はかかった!それじゃあいっくよー!必殺『バタフライ・エフェクトー!』」

パタフリルが、羽を小さく羽ばたかせる。

「………マカ?」

「…はいっ、もう倒しちゃいました!」

「マカァアアアア!!!」

そしてイエローマカレテラー達はみるみるうちに倒れて行った。

「よし、あんなにいたのに一気にやっつけた!さすがパタフリルね」

「……少し手こずったけど」

「し、仕方ないよ。バタフライ・エフェクトは状態異常の敵にしか使えないんだから、スリープが効かなくて少し手こずっちゃったんだよ」

「でも…なんでスリープが効かなかったんでしょう?」

「……マカレテラー族は、眠らないから」

「へ!?咲希さん!それ、先言って下さいよー!」

「……聞かれなかったから」

「「…………」」

咲希のマイペースぶりに振り回されながらも、砂漠の探索再開するアミィなのであった。

【魔法解説】
バタフライ・エフェクト
蝶の精霊が扱える必殺技。小さく羽ばたくだけで攻撃には見えないが、
見えない力によって広範囲の敵に大ダメージを与えられる。
しかし、状態異常にかかっていないと効果が無い。

50話『砂漠の足跡』


「…はぁ、疲れた。それじゃあ私はこれで帰りますね」

「ありがとうパタフリル。ゆっくり休んで頂戴」

そう言い残しパタフリルは光に消え、帰って行った。

「……もう魔力を使い尽くしたの?」

「ううん。必殺魔法を使うと、反動で1日は技が出せないんだよ」

「……それをここで消費しちゃったんだ」

「背に腹は変えられないでしょ、流石にあの量のモンスター相手にしてられないって」

「……そう」

「それにしてもなんで急にあんなにモンスターが出てきたんだろうね〜」

「……モンスターが大量に出てくる時は、大体何かがいる。……もしかしたら、この砂漠…何かいるかも」

「おお〜!よーし、絶対見つけるよ!!」

それから一層、張り切ってアミィは探索する。……しかし、何も進展が無い状況が続いた。

「特にこれと言ったものはなにも見当たらないわね〜」

「……というか、遠くまで見渡せないから何かあってもわからない…」

イエローデザートは小さい砂の山が点々と存在している砂漠だ。
優也達がいるブルービーチのように平坦ではない為、周りを見渡して異常を
確認する事ができないのである。

「…じゃあ、一番高い場所に行ってそこから探すのはどう?」

「……それ、いい」

咲希とアミィは、付近にあった砂山を登り、一番見渡しがいい場所まで登った。

「……ここが、一番高い…」

「うーん、周りには…ほんと何もないね〜」

「…………異常なし。一旦帰る?」

「いいや、まだわからないよ!今日は日が暮れるか、何かあるまでは絶対帰らないからね!!」

「……うん。…頑張ろう」

改めて、しらみつぶしに探索を再開しようとした二人だったが…

「…あれ、あれれ!?咲希、あそこ!!」

「……!」

二人はなんと、色が消えている場所を発見したのだった。




「うわぁ…凄い広い範囲の色が消されちゃってるよ…」

「……さっき、こっちを確認した時は消えてなかった…。……まだ、犯人が近くにいるかも…!」

「絶対見つけるよ!!」

「……!アミィ、これ…」

咲希が地面を指さす。

「…これは!…ふふーん、犯人め。砂漠に来たのが、仇となったなあ。バッチリ砂に足跡残っちゃってるもんね!!」

そこには…二種類の足跡が残されていた。

「早く…足跡を!」

二人はすぐに白い砂に続く足跡を追いかける。

「あっ!!」

そして…すぐ側に、その足跡の正体はいた。

「なんなの、あの魔物…」

「……それより隣…!!」

そこには、マントをつけた大きな魔物が杖から色を吸い取っていた。
そして隣には……

カラフルシティの町長がいた。



「さぁ、ディスコツィオーネ。ここの色も全て吸い取ってしまいなさい!」

「…御意。カラースチール」

町長の指示により、魔物は杖を振り、詠唱をする。

「……あっ!」

「色が吸い取られていく…」

「……ム、誰だ!!」

そして2人の気配に気づいた魔物が、こちらを振り向いた。

「どうしたのですか、ディスコツィオーネ!!」

「…やばっ!見つかった!」

慌てて逃げようとする二人だったが…

「逃がさん!」

逆に、回り込まれてしまった。

「……っ速い!!」

「おや、これはこれは……。ふふ、思わぬところで会いましたねアミィさん、咲希さん」

薄気味悪い笑みを浮かべながら語りかける町長。

「…町長。アタシ達、その魔物が色を吸い取っている瞬間を見ましたよ。…それをあなたが指示しているところも!」

「……あなたが犯人だったんですね。…幻滅しました。」

「おやおや好き勝手言ってくださる。第一、何か問題になるというのです?色が消えて困る事なんて何もないでしょう」

「そんな事ないです!!…島の動物達や…何より自然が大好きな、あの子が…翠が、どれだけ辛い思いをしたか!」

「…ふん、取るに足らないですね。街の発展には多少の犠牲はつきものなのですよ」

「街の発展…?何を、企んでいるんですか!?」

「……ふふ、良いでしょう。私の尻尾を見事捕まえてみせたご褒美に、教えてあげますよ…。」

「私の計画を……!」

砂漠の熱い日差しとは打って変わって、背筋が冷えるような緊張感の中、町長は語り始めるのであった…。
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このページへのコメント

あおいだす組だけでなくディスカラーズまで丁寧にそのままのキャラで出演させてくださりありがとうございますm(_ _)m
あおっさんが青が足りないって理由で呼ばれたとカンチガイしたところ最高にあおっさんしてて大好きです

あと咲希さんに振り回されてるアミィちゃんにもグッと来ますた

1
Posted by 名無し 2021年07月13日(火) 20:49:53 返信

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