またーり書き込みしましょ(´・ω・`)





71話『灰色の景色』

その後、アミィは翠を休ませる為一時離脱をする。

そして街はといえば囚人達が解放してくれた恩を返そうと、身体を張って大人達の進撃を食い止め、
事情を全く知らない街の住民がますます騒ぎ立てているという中々に世紀末な状況だった。

普段ならそんな状況を見て止めない選択肢はないが彼らには時間が残されていない。
すぐにでも町長を追う為に、彼らは上空へ飛ぶ方法を求めてレッドマウンテンへと向かった。

せっかく再開を果たしたが、今は積もる話も全て後回し。
囚人達に全てを託そうと、レッドマウンテンへと向かった優也達…だったが。

「……ここから先へは行かさんぞ」

「…オランジュさんッ…!!」

優也達の前に立ちはだかるは、ダイロの師匠、オランジュ。
手に抱えるは、彼が愛用している大剣。

「…ほ、ほんとうに…裏切ってたんですね。こうして見るまで…俺も、信じられませんでした」

「…御託はいい。優也…何があったのかは知らんが、剣が見違えたな。…そんな剣を持つお前だからこそ、冷静な判断ができると信じて聞くぞ。…今からでも遅くはない。こちらの仲間になる気は…」

「ないっ!!」

相手が言い終わる前にキッパリと断る優也。もうとっくに、答えは決まっていた。

「……言ってみただけだ。しかしそこの精霊…随分とやってくれたな…見ていたぞ、囚人達の解放を」

ここにいる精霊といえばパタフリルのみ。当然自分の事を話していると気づいたパタフリルは話に応じた。

「……わ、わたし…ですか」

「あぁ…。これは、俺のミスだったな。お前の事は前からダイロを通して知っていたよ。だが俺は精霊自体をあまり知らなかった。だからこそ問題は無いとたかを括り、町長に報告するのを怠った。…その結果が、これという訳だ」

「…アンタでもこんなヘマするんだな…!」

「言ってくれる。貴様もいつもミスばかりするバカ弟子の分際で…」

「俺は、もうアンタなんかの弟子じゃねえ!!……優也。お前達は、先に行ってくれ!!」

「…ダイロ!?」

「こいつはな…俺が、蹴りをつける!!」

「……。うん!!わかった、頼んだよ!!」

優也達はダイロを信じ、街の外へ急ぐ。

「…おふざけは無しだ。本気で行くぜ」

「ふん…かかってこい」

オランジュ VS オレージ・ダイロ

『戦闘開始』



「…………ひどい。」

街の外に出た感想はこれにつきた。
グリーンフォレスト、イエローデザート、ブルービーチ、そしてレッドマウンテン。
見える景色が全て黒と白の明度で表されている。彩度に色相などという言葉はこの空間には存在しなかった。
色の消えた自然達は、全て死んでしまっているかのように感じた。

「あんなに、沢山の色があったのにな…」

ぼそっと呟く優也。

「……あんまりうだうだしてると、永遠にこうなっちゃうのよ。急がなくちゃ!!」

せっかく再開した優也に楓達だが今は積もる話も全て後回し。

「でも…こんな大きい山、今から登ってたら間に合わないんじゃない?」

「ええ、でも大丈夫!ゴンドラがあるから!!」

「ゴンドラ?そんなのどこにも…」

「山の裏側にあったのよ。帰りはそれで帰ったから良かったけど、行きは大変だったんだから」



「…うっそ!?ゴンドラが…止まってる…」

「……まあ…こんな色が消える非常事態じゃあ、運転も中止しているんじゃないか?」

「そんな…じゃあこれから歩いて登らなきゃならないわけ!?そんなの時間が…」

「…………ちょっと、いい?」

そこで珍しく、咲希が自分から口を開いた。

「な、なに?咲希。」

「……これは俊足のバッジ。そして跳躍のリストバンド。つけるとそれぞれ走る速度、ジャンプ力が増す。みんな急いで、これをつけて」

「あ、ありがとう咲希!…それでも、流石にこの山を登るのは…」

楓が喋っている間に、咲希は険しい岩肌を軽く飛び越えて登った。

「…………ついてきて」

「……もうっ!ほんとに私と翠の苦労はなんだったのよ!」

そう嘆く楓なのだった。


二つの魔道具を付けた優也達は驚くほどに、体が軽かった。いつもは出来ないような身のこなしで、
とても人が登れそうにない崖を駆けるように登っていく。

「なんだか…体力も上がってる?これ!!…気のせい?」

「……ジャンプや走った時の疲労を抑える効果もある。…それぞれ、たった一度しか使えない。
素材もみんな貴重な私の最高傑作の一つ」

「そ、そんな貴重なものを貸してくれたの!?だ、ダイロの話じゃ咲希は全然魔道具貸してくれないドケチだって言ってたけど…」

「……ダイロ、後で締める」

「そんな事話してる場合じゃないわよ。さぁそろそろ山頂よ!!」

最後の崖を軽々と飛び越えた三人の目の前に、同じく三つの人影。

「あっ…。貴方は…!」

「ミチルさんッ!!」

「…楓さん。…この景色…昨日伺った事件とやはり関係があるんですね?

「はい!!……今ならまだ、間に合うんです!そして私達がここに来た理由…島の色を取り戻す為には…アヴィドレイクさんの力が必要なんです!!!!」

「楓、アヴィドレイクって話で聞いたドラゴンか?…もしかしてお前」

「そうよ!ドラゴンなら空も飛べる筈。アヴィドレイク(敬称略)に乗ってあの渦の中心部に行くのよ!!」

「…わかりました。この事態を解決する為ならば、きっと快く力を貸してくれるはずです。すぐに案内します」

そう言い、ミチル達はアヴィドレイクの元へ案内をした。



「なんなんすかっこれは一体!!」

…そこには不服そうに灰色のマグマへ浸かっている1匹のドラゴンの姿。

「これが…アヴィドレイク…さん…?」

「ん?誰っすかアンタ達。それより!おれの火山から色をぜーんぶ奪ったのは誰っすか!?」

「…話に聞いてた以上に、喋り方が軽い。」

「あの、実は…」

楓は町長が島から色を奪ってしまったことを簡潔に話し、協力して欲しい旨を話す。

「なにーッ!?!?許せないっす!!おれですら、このレッドマウンテンの物だけを独占しているのに、その町長は島全部の色を奪ったんすか!!なんて欲張りな奴っす!!!!」

(…独占してるって自覚あったのね)

「こうなりゃ居ても立っても居られないっす!!今すぐ、取り返しに行くっすよ!!!!」

「……やった!!協力してもらえたな!!!」

「…それで、その町長はどこにいるっす!?」

「空に浮かぶ大渦の中心地です!!あの、私たちも背に乗せてってくれませんか!?」

「……危険っすよ?落ちれば、助けられる保障はないっす」

「…分かってます。でも、私達もあいつと決着を付けないといけません!!」

「…………わかったっすよ。それじゃあ外で待っているっす!!」

そうアヴィドレイクが言うと、突如地響きが鳴り響く。

「うわわわわわっ!!なんだ!?」

「…みなさん、危険です。早く、出口の方へ!!」

ミチルの素早い誘導により一同は火口から離れていった。

…火口を出てすぐ。再び大きな揺れがしたと思えば、大きくマグマが噴き上がりその勢いでアヴィドレイクが地上へと飛び出した。

「うぉおおおおおおっ!!!!」

「何が起きてんだ!?」

「アヴィドレイク様はレッドマウンテンの噴火を意図的に起こすことができるのです。ほら、あっという間に地上へ飛び出すことができましたよ」

「…す、すごい」

「……さぁ!!背中に乗るっす!首を洗って待ってろっすよ…!!」

優也達は大空へと飛び立つ。目標は町長もとい、ディスコツィオーネ!

……禁術発動まで。後、10分。

72話『師弟対決』

「……オオオオ……」

「…ディスコツィオーネよ。まだかかりそうですか?」

「……ああ、我が主人よ。現在、島中の人間を捜しているのだ。漏れがあると、都合も悪いであろう?」

「…ええ、その通りです。…ですが、もう少し早めにはできませんか?奴らが来ないとは限りませんしね」

「フハハ…ご冗談を。こんな短時間にこの上空までやってくることなど不可能!まして、かかるまで後ほんの10分…それで来るはずが…」

「ウォオオオオオオッ!!!!」

「…主人よ、何かおっしゃったか」

「いえ、私はなにも…」

「町長ゥウウーーッ!!ディスコツィオーネェーーーッ!!!!」

目の先には、大声で叫びながらこちらへ進撃してくる赤い龍と、背中に確認できる優也達。

「こ、この叫びはあのドラゴンからですか!?あ、あの背中に乗ってるのは…真田優也 はっ…!更に捕まえたはずの奴らまで…!!」

「…ク、フラグ回収が早すぎたようダナ…」

「その自覚あるんだったら言うんじゃないですよ!くそ…本当に邪魔してくれますねえあなた方は!!なんですか、そのドラゴンは!?」

「…貴方がした事に怒る、カラフルアイランドの住民代表だ!!!!」

大きな怪人と赤き龍が今、ぶつかる。

アヴィドレイク
真田優也
桐谷楓
青村咲希
パタフリル

VS

町長
覚醒 ドン・ディスコツィオーネ

『戦闘開始』



「……いいのか、すんなり行かせちまってよ。」

ダイロはオランジュを鋭い眼光で睨みつけていた。

「僅かだが時間は稼げた。戦力も、お前が抜ければダダ下がりだろう」

「…へえ。意外だな、そこまでアンタに認められてたのかいオレは。」

「あぁ…敵なのが惜しいぐらいになぁ!!」

大剣を持ってるとは思えないほどの速度で懐へ潜り込むオランジュ。

「大一閃!!」

大剣の半分にも満たぬほどの剣で対応すれば力負けしてしまい、弾き飛ばされてしまう。
……それを、ダイロはわかっていた。

「ウィンドネススピン!!」

ディスカラーズ戦で使った大技。風魔法の出力をあげ、オランジュの攻撃を受け止める。

「ぐっ…俺の大剣をいなすだと!!」

勢いを増した回転切りは、大剣の一振りも弾くほど。

「おらぁあああ!!!!」

ダイロはそのままオランジュに回転斬りを当てようとする。…が。

「…ずっと同じ動きならば、止めることはいとも容易い」

オランジュは剣を構え、大きく飛び上がった。

「大天・月夜斬り!!」

そのまま、高速回転をするダイロの剣目掛け、勢いよく大剣を振り下ろす。
剣と剣がぶつかり合い、鈍い音を鳴らす。

「ぐっ、勢いが止まった!!」

「そこだ!!」

怯んだダイロの手を、大剣で弾く。ダイロは剣を手放してしまった。

「あぁっ剣がッ!!」

「ふんっ!!」

さらに動揺した隙をつき、みぞおちを喰らわすオランジュ。

「ぐがあっ…!」

「…やれやれ。店から勝手に商品を持ち出すとはとんだ不届き物だな」

「おめえに…言われたかねえ…。…ぐふっ、こうなったら…剣次郎を…!」

ダイロはいざと言うときのために持っていた、自身の剣を取り出す。

「…お前、まだ武器に変な名前をつけているようだな」

「……武器に名前をつけるのは…変なことじゃねえだろうが…!」

「いいや。武器に名前をつけていいのは職人が全身全霊を込め作った業物だけだ。お前のお遊びで作ったなまくらにつけていい物ではない」

「……今…なんつった…!」

「お前のお遊びの鍛治で作られた剣は、名前を付けられるほどの物じゃないと言ったんだ」
「…もう、いい。……もうたくさんだ!!」

「……キレているのか?冷静力にかけた敵を撃ち倒すのは、実に容易いことだぞ」



「いいや。冷静じゃねえのは…アンタのほうさ!」

「……なに?」

「普段のあんたならよ、そんな事は絶対言わねえ。俺の鍛治に対する姿勢を、そして剣を、馬鹿にして笑うなんて絶対しねえさ。俺の尊敬する男はな!!…今のあんたこそ、冷静さが欠けてどうかしちまってるぜ!!!」

「っ…黙れっ沈めぇえ!!」

思い当たる節があるのか、激昂するオランジュ。大剣を再び、振りかぶった。

「……」

それをギリギリ避けるダイロ。そこへ攻撃を仕掛ける。

「ウィンドネス・カット!!」

風の力を纏い、素早い斬撃をオランジュへと食らわす。

「…くっ…はっ……、その程度か?」

ダイロの剣は全て大剣により防がれてしまっていた。
ましてやオランジュの持つ剣は彼の打った中でも傑作品。まるで歯が立たない。

「…うぉおおおおお!!」

それでも斬るのをやめないダイロ。オランジュはそれをみて嘲笑う。

「結局、勢いに任せただけか!!万策尽きたか!?」

今にでも隙を見つけ、反撃してやろうとオランジュは企む。…だが。

(…おかしいぞ。これだけ攻撃を続けてながら、なぜスピードが落ちぬ!?むしろ、増していっているような…)

次の瞬間、ダイロの斬撃がとうとう防ぎきれずオランジュの身体へと走った。

「うぐおぉっ!?」

「うぉおおおおお!!!!」

「なぜだっ…ぐ、熱ッ…!!……ひ、火属性の魔法!?」

「当たりだ」

…ダイロは風属性だけでなく火属性の魔法も剣に宿し戦っていた。
火の力はまるでエンジンのように、斬撃の速度を、勢いを限界を超え速める。
複数の魔法を武器に纏わせ戦える者は少ない。それほど難しい高等技術をダイロはやってのけているのだった。

「うおらぁあああ!!」

「ぐあぁっ!?」

火と風の力で速度と火力を増したダイロの剣は、とうとうオランジュの大剣を弾き飛ばすことを実現した。

「おらぁ!!!!」

そのまま肩へと、思い切り剣を振りかざす。

「ぐぁっがぁっ…!」

肩を押さえながら、膝をつくオランジュ。それを戦闘不能とみて、ダイロは攻撃をやめた。

「…い…いつの間に……そこまで強くなってやがった…」

「アンタが弱くなったんじゃないか?ハッキリ言って、アンタの剣は曇っていたぜ。…素人目でもわかったよ」

「…そんな事まで…言えるように…なりやがって……」

オランジュは気を失い、倒れた。

「はぁ……ちょっと…無茶し過ぎたか。でも……勝ったんだ…し、師匠に…」

オランジュ VS ダイロ

勝者 『ダイロ』

73話『赤の守護龍と色の覇者』

「ディスコツィオーネ!!」

「はっ」

「今すぐ…奴らを倒しなさい!!」

「…御意!レインボーウェーブ!!」

ディスコツィオーネは吸収した島中の色のパワーを使い、アヴィドレイクに攻撃を仕掛ける。

「そんな攻撃、当たらないっすよ!!」

しかしアヴィドレイクは俊敏な動きでそれを避ける。

「うわっとと!」

背中に乗る優也達は落ちないよう必死にアヴィドレイクを掴むのだった。

「…!」

「ククク…レインボーウェーブだ!!」

「当たらないと、言ってるっすよ!!」

しかし今度の攻撃はなかなか止まない。当たらないと分かっていてもディスコツィオーネは攻撃を続けていた。

「くっ…しつこいっす!スタミナ切れでも狙ってるんすか…?」

「…きゃああ!!」

「!!」

背後で、声がする。

「咲希!!」

色々な方向へ激しく回避を続けていた結果、咲希が捕まりきれず落っこちてしまったのだ。

「ッ…今助けるっす!!」

アヴィドレイクは咲希を助ける為に下へ降りていく。

「…うあっ!!」

見事、背中でキャッチ。楓に支えられながら咲希はアヴィドレイクの背中にしがみついた。

「よいしょっ、大丈夫?咲希…

「そこだ!!」

「っす!?」

当然生まれる隙。アヴィドレイクはディスコツィオーネの攻撃をまともに喰らってしまった。

「ぐぁああああっ…ぐっ…中々、効くっすね…!!」

「アヴィドレイク!!平気!?」

「……ごめん…なさい…わたしのせいで」

「これでもおれは守護龍っす。こんなのたいした事ないっすよ…!!」

「龍にも効くかわからないけど…キュアー!!」

「フハハハハ!!荷物を四つも背負ってこの我に挑もうとは…片腹痛いわ!」

「に、荷物だと…!!」

「そうだ!背中に乗るだけの貴様らに、何ができる?そこの娘は回復ができるだろうがそれだけ。貴様らを守る為にその龍は動く。足を引っ張っているだけではないか!」

「なんだとっ…フロスト!!」

「……ふん」

攻撃を軽々かわすディスコツィオーネ。

「そこっす!…レッドブレスっす!!」

避けた先に、アヴィドレイクはお返しとばかりに真っ赤に燃え盛る火炎を口からはいた。

「フハハ!遅い!!」

しかしその攻撃も交わす。

「くそっ、やっぱりアイツ、物凄く速い…!」

「こうも攻撃が当たらなかったら…タイムリミットが来ちゃうわ…!」

「…だったら…こうしてやるっす!!」

アヴィドレイクが作り出すのは、いくつもの大きな火球。それがディスコツィオーネの周りを囲うようにして、襲いかかった。」

「フレイムボールっす!!」

「……カラーチェンジ、クリムゾンレッド!!」

炎が当たる間際、ディスコツィオーネは姿を変える。

「クク…こうすれば貴様の炎など我には効かん」

「…クソ、中々やっかいっすね!!」

「うあちちちちちっ!!ちょ、ちょっと止めなさい!!」

しかし次の瞬間、そう叫んだのは背に乗る町長だった。身体が火属性となったディスコツィオーネの身体に乗るのは人には耐えられない。

「ハッ!?スマヌ、主人よ…!カラーチェンジ!!」

急いで自身の属性を元に戻すディスコツィオーネ。しかしアヴィドレイクもその隙を見逃さなかった。

「そこっす!!」

「ぐふっ!?」

渾身の右ストレートが腹に炸裂する。

「…フン、どうやらあんたこそ…背中にお荷物を背負ってるみたいっすね」

「がはっ…!クソが!!ええい、貴様ら全員カラフルスプラッシュで吹き飛ぶがいい!!!!」

優也達に飛んでくる絵の具の光線。

「なっ、あの技は時間がかかったはずじゃ…」

溜めるのに時間がかかるカラフルスプラッシュも今のディスコツィオーネは即座に撃つことができるようだ。

「レッドブレス!!」

紅い炎で対抗するアヴィドレイク。しかし、威力は断然向こうの方が優っていた。

「…ぐぐ…!!」

「フハハハハ、さあさあ!!吹き飛ばしてくれる!その背中の荷物共々な!!!!」

「俺達は…荷物になんて、なるもんか…!!みんな!!俺達も出来ることをやるぞ!!!!」

「わかったわ!!」「…了解!」「わかりました!!」

「フロスト!!」「ファイア!!」「脆弱の札!!」「ウィンド!!」

咲希が魔道具で敵の魔法を抑え、優也・楓・パタフリルが魔法攻撃で援護をする。

「ぬぅ、押し返されている…だと!!」

「はぁああああああああ!!」

攻撃を跳ね除けたレッドブレスはディスコツィオーネに直撃。

「……くぅっ…!」

かろうじて、攻撃は通ったようだ。だがそれでもディスコツィオーネはピンピンしている。

「こうなればもう、全ての力を使ってでも潰して…っ!!」

ふと気づく。背中に乗る町長の感覚が無い事に。

「あっ…町長が!!」

優也達も気づいた。…先程のレッドブレスが直撃した際、町長はディスコツィオーネの背から落っこちてしまったのだった。

「主人!!!!」

ディスコツィオーネは主人を助けるべく急降下で下へ降りていく。

「追いかけるっすよ!つかまってろっす!!」

それをアヴィドレイクも後から追うのだった。

「うあああああああぁああああっ!!!!」

「主人ッ!!」

間一髪、地面に着く前にデイスコツィオーネは町長をキャッチすることができた。
落ち着いたディスコツィオーネはゆっくりと地面に足をつける。

「ふ、ふぅ…中々危なかったです。…ディスコツィオーネ、もう少ししっかりと…」

「……ッ!!」

「レッド・クローっす!!」

「な…ディ、ディスコツィオーネ!!」

急接近したアヴィドレイクの渾身の攻撃によりディスコツィオーネは大ダメージを負った。

「ぐぉおおおおおおッ!!」

「…こいつらはお荷物なんかじゃないっす。それなりの決意を決めておれの背中に乗せてるんすよ!!…そっちに乗ってる町長の方がよっぽど足を引っ張ってるみたいっすね!」

「…今、なんと言った…主人を…我が主人を馬鹿にしたか!!」

よろめいていたのも束の間。ディスコツィオーネは怒りに身を震わせ、こちらへ向かってきた。

「……かかってこいっす!!レッドマウンテンから色を奪われたおれの怒りも、まだまだおさまってないっすから!!」

……禁術発動まで。後、5分。

74話『色の力』

「よいしょっ」

ディスコツィオーネとアヴィドレイク。お互いが地に足をつけている今、優也達が背中に乗る意味は無くなった。

「ふうっ、やっと降りれたわ。」

「……色腕!!ぬぅうううはぁああああ!!!!」

「…何をする気っすか?」

「はぁああっ!」

「!?腕が…六本になった!?」

「でぃ、ディスコツィオーネ…それは…」

「何も言うな主人よ」

身体から新たに4本の手を生やすディスコツィオーネ。色のエネルギーにより生み出された腕は彼の思い通りに動くようだ。

「出し惜しみはせん。本気で潰してやる」

「くぅうう…ぬぉおおおおお!!」

何かを、六つの手でチャージし始めるディスコツィオーネ。

「や、やばいぞ…!!さっき放ったカラフルスプラッシュも、元々は溜めが必要な技だった。…今のあれは、その比じゃないくらい強いはずだ…!!」

「レッドブレスッ!!」

「ぐっ…」

火を吐いて溜めを止めようとするアヴィドレイク。意外にも効いているようだった。

「防御がガラ空きなのか…?なら!!」

優也も近づいてこうげきをしようとする。

「氷結斬!!」

「がぁっ…」

攻撃が、当たる。切った部分は凍り、ディスコツィオーネの表情も崩れていた。

「くらいなさいっ!!」

楓もファイアを出して応戦をする。

「……ぐぅう…………フフッ」

ディスコツィオーネの表情が変わる。

「!?あぶないっ、す!!」

アヴィドレイクが勢いよく前に飛び出し、優也と楓の服を爪で掴んで逃げ出した。咲希達も、手に抱えられている。

「…危険を感知したか。流石レッドマウンテンの主と言ったところか?…逃げ回るも自由。だが、決して逃がしはせん…!!くらうがいい。主人を馬鹿にしたものに天罰を…!!」

「カラフル・アサルト・スプラッシュ!!」

六つの手から放たれる幻想的な虹色の光線が、一つになって凄まじい音を立て飛び出した。

「……!!こちらに向かってきてるっす!」

大きく迂回するアヴィドレイク。しかし光線もそれに合わせて大きく曲がっていく。

「…当たるまで永遠に追いかけ続けるのか!?」

「ふはは、そうだ!!そのまま当たるまでずっと、飛び回っていろ!!」 

光線の勢いはどんどんと増していく。空を飛ぶアヴィドレイクとの距離を、刻一刻と確実に狭めていった。

「くぅう…このままじゃ…追いつかれるっす…!!」

「くそっ!!フロスト!!フロスト!!」

「効いてないわ!!咲希、あの光線を打ち消したり跳ね返したりできる魔道具は無い!?」

「っ…本当にごめん。私の技術じゃまだ作れていない…!!」

「くっ、だめっす!!こうなったらあんた達だけでも…」

アヴィドレイクは地表に近づき、優也達を雑に地面へ投げ捨てた。

「あぐっ。…あ、アヴィドレイク!!」

「ぐぁあああああああぁぁぁっす!!!!」

…アヴィドレイクはディスコツィオーネの攻撃を避けきれなかった。

「そ、そんな!!アヴィドレイク!!アヴィドレイク!!」

「……死んでは……ないっす……」

「…ほう。驚いた。我の攻撃を持ってしても生きながらえているとは。だがもう、飛ぶこともできまい」

「……ディスコツィオーネよ!行くのです、我々にも時間はない」

「ああ…主人よ。ぐっ…我もまだ傷が癒えていないが、致し方あるまい」

ディスコツィオーネ達は空へ舞い戻っていった。

「う、うぅ…そんな、アヴィドレイク…ごめんなさい…私が貴方を戦場に連れてきたばかりに」

「……気にする必要、ないっす…この程度、ちょっとすれば治る…っすよ…それよりもあいつを…」

「…そうだよ、ディスコツィオーネをもう一度追わないと。でもどうやって…!」

「空を飛べるのはアヴィドレイクだけよ!?あっ…パタフリル、ねえ貴方は!?」

「む、無茶を言わないでくださいよっ。人一人背負うどころか、自力でも地上から数メートル浮くのが限界です!!」

「……は、はは…万事休すっすね…。レッドマウンテンに成る果実さえあれば…復活できるんすけど、色が失われたせいで果実もみんな力がなくなって無理っす…」

「…………っ!それじゃあ、これは!?」

楓が取り出すのは、前に楓が勝手に取って食べてしまったレッドフルーツ。念のためにまだ取っておいたのだ。

「…それ…食べかけっすね。あんたが前に食ったやつっすか…?」

「……だめ、なの?」

「…いや、いけるっすけど…ちょっと……人が齧ったのは…後時間が経ってるのも…あまり食べたくな…」

「いいから食べるっ!!」

「ちょ、無理矢理押し込まないでっ……ぐぐ…うぉおおおおおおおっす!!」

楓に果実を食わされたアヴィドレイクは再び立ち上がる。

「…いける!?」

「あぁ…全く、龍使いが荒らい奴っすね!!…流石に一つ(しかも食いかけ)じゃあ完全にとは言わないっすが、あいつの元へ行けるっすよ!」

「わかった、ありがとう!!もう一回、頼む!!」

「まかせろっすぅう!!…奴に思い切りぶつかって魔法を止めさせてやるっすよ!!」

優也達は勢いよく空へ舞い上がった。

「うぉおおおおおおっ!!」

ディスコツィオーネの姿が見える。もう、すぐにでも禁術が発動できるよう準備をしていた。

「……!?」

「おらぁあああああっす!!」

「ぐっがはっ!?」

ディスコツィオーネがこちらに気づく瞬間に、アヴィドレイクは渾身のタックルをかます。

「ぐぁああああっ…!!…また貴様らかぁあああ!!何度も復活しおって…本当に、本当にしつこい奴らだ!!!!」

「それはこっちのセリフだよ!!」

「グハッ、ぐくぅ…」

…今の攻撃で、今まで蓄積されたのが効いてきたのか、力なくディスコツィオーネは垂れる。

「まだ、我は…戦え…!」

「っ!?ち、血がッ…!」

先程の、優也との戦いでついた傷が、今の攻撃によって開いてしまったようだ。

「おらぁああああっす!!」

そしてよろめくディスコツィオーネを、アヴィドレイクが尻尾で吹きとばした。

「ぐぁああああああぁああああああっ!!!!ぐっ、主人…だけは…!!」

そのまま、彼は地面へと叩きつけられた。
…これ程の大ダメージを受けたディスコツィオーネは気を失っていた。……町長を守るようにして抱きかかえて。

「……終わりのようっすね」

アヴィドレイクがゆっくりと、地表へ降り立つ。

「…それで、どうすれば色は元に戻せるんすか?」

「……ディスコツィオーネを倒せば元に戻すと言ってたけど…一回その約束も破られてるからな…」

「……禁術を止める方法は二つ。術者に止めさせるか、術者が死んで魔界送りにされるか。……向こうが信用ならないのなら。後者しか、無いと思う」

「…わかったっす。じゃあ、魔界送りにしてやるっすよ…!!」

「やめてくれえぇえええ!!!!」

こだまする一つの声。その主は…町長。

「町長っ…!」

「やめてくれ、見逃してくれぇえ!!ディスコツィオーネを、殺さないでくれええぇえぇぇ!!」

「なっ、そんな事…貴方達も散々、こっちを殺しかけたわよね!?」

「いやそれはっ…!!すまなかった!!こっちも殺す気は更々無かった!!…ディスコツィオーネの暴走を止められず、君達を殺しかけてしまった事は本当に申し訳ないと思っている!!だから…だからっ…!!頼む!!見逃してくれっ…!!魔界に送られた魔物はほとんどの記憶を失う。私との日々も全て消えて無くなってしまう…それだけは、それだけは本当に…許してくれっ…いや、許してください…!!」

「つ、都合がいいわねっ…!!それくらい、貴方がした事の罰として…」

「楓、もういいよ。……なら、大人しく降伏してください。それと、島の色を…元に戻してください」

「っ……わかった!!約束する!!……この勝負は、我々の…負けだ……。」

「…優也…貴方は、いいの?」

「…町長も。町長なりに町の事を考えての行動だったんだ。それに、言ってた通り町長はディスコツィオーネに殺さないように加減しろって指示も出していたよ。……町長、三度目はないですよ。アヴィドレイクさんも、それで…いいですか?」

「……仕方ないっすね〜…色が全部帰ってくるんだったら…今回は特別に、許してやるっす。あ、ただ…おれを傷つけた事に対しては何か等価交換が必要っすね。美味しい料理とか…楽しい話とか」

「うう…ありがとうございますっ…ありがとうっ…!!」

「…わかったわよ。みんなそう言うなら、もう何も言わないわ。…はぁ…優也"も"ほんとに…優しいんだから…」

「……も?」

「翠の事よ。あの子もディスカラーズを倒そうとした時私を止めたのよ。」

「…そっか」

……その後。目を覚ましたディスコツィオーネに町長が魔法を止めるようお願いする。
ディスコツィオーネも、一度は渋り、このまま優也達を倒そうと発案したがアヴィドレイクも臨戦体制。
町長が「お前を失ったらわたしにはもう何も残らない」と、一言言ったのを聞き、素直に言うことを聞いたのだった。

「では…行くぞ。カラフルアイランドの全ての色よ…元の場所へ、還るがいい…!!」

そう告げるのと共に。ディスコツィオーネの虹色に光る体から、色が地面へと流れ出す。
蘇る、色、色、色。草木に、丘に、山々に。島全体が、元の輝きを取り戻していくのを優也達は見届けた。

「これで…これで…やっと、終わったんだ…」

空は暗雲がすっかり晴れ、綺麗な夕焼けが大地とみんなを紅く、染めていた…。

75話『処罰と後継者』

……その後、優也達は街へ戻ってきた。その惨劇はすさまじく、
多くの負傷者に破損した建物がいくつもあり、
未だに戦う町長側の人間を諌める形で、戦いは終止符を打った。

今回の件で捕らえられていた囚人達の記憶を街の人々は全て思い出した。
当然止まぬ非難の嵐。それを町長は真っ向から全て受けて、謝罪を述べなぜこんなことをしたのかを、全て語った。

街が元々ピンチに陥っていたのもあり、今回の件も祟り、カラフルシティから何人か出て行くと言う人も出た。

「……この街も…終わりですね」

町長がそう口ずさむ。

「…そうとは、限らないぜ。町長」

そう答えるのはダイロ。気絶したオランジュを連れ帰っていた。

「今回、アンタ達がした事は間違いだったさ。それは覆しようもねえ事実だ。…だからさ。今後は…俺たちに任せてくれよ」

「……えっ…?」

「俺たち若い世代が、腕を磨いて名を馳せてこの街を盛り上げていくのさ!!終わったわけじゃねえ。むしろこれからだ…な、アミィ!咲希ィ!!」

「ええ!!」

「……そうね」

…まだまだ、一人前と呼ぶには青すぎる小さな職人達。…それでも。町長にはどこか頼もしげに映っていた。

「…すまなかった…本当に…本当にすまなかった…!!」

…涙をこぼしながら。町長は街の留置所へ連行されていった。今後、新たな町長が決められる事だろう。
そして、町長に関与していた住民達も。同じように連れて行かれた。

「……ダイロ」

「…し、……師匠。」

「…ふん、俺のことをもう師匠じゃないと言ったのはどこのどいつだ」

「……っ。アンタの鍛冶屋としての腕は…最高だった。だからこんな事になっても…やっぱりアンタは、俺の師匠だ…」

「……いいや、俺はもう違う。……橙堂を…お前に、任せるぞ」

「えっ…そ、それって!!」

「だが。しばらくは俺が作り置いた物しか売っちゃいかん。お前が売りに出せる物を作れるようになるには…後3年ほどといったところか?」

「ははっ…い、いつもの師匠だ」

「…ふん。……ダイロ、すまなかったな。」

去りゆく師匠の背中を、ダイロは少し悲しく、それでもしっかりと最後まで見つめていた。



翌日の夜。一晩ぐっすり休んで疲れを癒した優也達は…レッドマウンテンで勝利の記念パーティーを行っていた。

「…腕によりをかけて作ったから…どんどん食べてね」

パーティーのご馳走は主にミノルが。ミシェルとミチルも感謝の気持ちを込め、料理を手伝っていた。

優也達は島を救った英雄として、街の人達から讃えられた。今回のご馳走の材料も
救った囚人達や街の人から譲り受けたものだった。

「それにしても…ほんとに街の修復作業、手伝わなくて良かったのかな…?」

「いいんじゃないか、街の人達も俺たちはゆっくり休んでてくれって言ってくれたし。…ま、明日、手伝いしにいこうぜ」

「それもそうね。今は私たちの勝利を祝いましょう!」

「アヴィドレイク様、料理をお持ちしました」

「ありがとうっす。ん〜最高っす!!焼きレッドフルーツは甘みが増して激うまっすね。こっちの料理もうまそうっす〜」

「…そっか、あの果実はアヴィドレイクの所有物だから…料理の使用を許されているのね」

「…………」

「どうしたの、翠?せっかく街が救われたって言うのに元気がないわよ」

「あっ…いや、その……。肝心な時に私…気を失っていたから…」

「なーに言ってんのよ!優也から聞いたわよ。アタシ達がいない間ずーっと二人で頑張ってたんでしょ!!大したものよほんと!!」

「そ、それだったら優也さんだってずっと戦ってたんですよね!?そっちの方が…」

「どっちが凄いとか、そんなものないって。翠、君は立派に戦ったんだよ、誇っても全然許されると思うよ」

「う……優也さんがそう言われるなら…。」

「……しかし、町長は捕まったが、ディスコツィオーネはどうなったんだ…?」

「なんでも、街の地下で町長の帰りを待ってるみたい。町長が指示したからディスカラーズ達ももうちょっかいかけては来ないみたいよ」

「…そうか…ま、もう悪さしないならいいか。」

「ねえ、それよりも面白い話しましょ。そうね〜恋バナとか!」

「こ、恋バナ!?」

「じゃ、まずは〜ダイロからね!好きな人、いないの?」

「い、いい、いいいいるかよっ!!」

「わ、わかりやすっ…」

「……アミィ。相手を知ってて聞いてるでしょ」

「…?誰ですか…?」

「誰って、みど…

「だぁあああーっ!!そうだ優也、楓!!お前ら幼馴染だろ。お互い思うとことか無いのかよ!!」

「えっ、こっちに振るの!?」

「ああ!いいから答えろって!!」

「ふふ、それもそうね〜そういえばアタシ二人の昔からの話とか色々聞いたけど、仲良いわって思ったわ〜ねえねえ、貴方達お互い好きなとことかないの?」

「えっ…えっと…」

「……気になる」

「ほぉら、みんな気になってるぜ〜?」

「う、いや…勘弁して〜っ!!」

そんな楽しい楽しいパーティーは、真夜中まで続いたのだった。



翌日には、優也達も街の修復作業に加わり、半日もしないうちに作業は全て終わった。
街を出ていき空き家になってしまった家も多くのこってしまったが
それでもこの島を愛する者たちも多く留まり、皆がこの街の為に出来ることを考えているようだった。

「……ふーっ。これで…ほんとに、一件落着…かな」

「…そうね。いやぁー…それにしても私たち…なんでこの島にやってきたんだっけ…」

「「………………」」

「…あぁっ!!」

「装備品!!」

「そうだったわ…装備品よ。盾も杖も…断られちゃったのよね」

「…それなら任せてくれよ!!」

「うわっ!?いたんだ!?」

「……修復作業は私達も手伝ってたからね。」

「咲希…!」

「……それより。…楓。ほんとに特別だけど……今の私の技術を全て注ぎ込んだ、最高の杖。……作ってあげる」

「えぇっほんと!?」

「俺もだぜ優也!!ま、師匠には劣るかもしんねえし、商品を出すには3年早いって止められたんだけどよ。……これでも、腕に自信はあるんだ。今から俺が、本気で作る盾…貰ってくんねえか!!」

「……もちろん!!」

「よっしゃあ!そうだ、ついでに名前もつけよう。盾だから…シールド次郎…」

「な、名前は遠慮しとくよ!!」

「ねえ、アタシの事も忘れちゃダメだからね?」

「……アミィ!」

「今回の件…ほんとに、ほんとに感謝してます。もう、言葉では言い表せれないくらい。…もうアタシも本気出しちゃうから。構想してた服の、何倍も何千倍も高性能なやつ、作るから!!」

「楽しみねー優也!」

「…うん!」

「あっ…それと言ってはなんだけど…ちょっと欲しい素材があるのよ。カラフルアイランドのモンスターを倒せば手に入る素材なんだけど…」

「そ、素材?」

「あ、俺も必要だな。色んな鉱石が必要になってくんな…各地で集めなきゃならねえや」

「鉱石…」

「……私も。レッドマウンテンで採れる、赤くて頑丈な魔石がどうしても必要。……持ってきてくれるね?」

「「いや素材はこっちに集めさせるんかい!!!!」」

「あ、あははー…そうよね。それじゃ、みんなで探しましょう!」

優也達は必要となる素材を自分達で探すこととなったのであった。

76話『素材集めツアー』

ここはアミィの家。翠や咲希達も一緒に六人、不足している素材についての話し合いをしていた。
最初はまた、事件の調査時のように分担して探しに行こうかとも議論されていたのだが…

「そーいえばさ、二人ともこの島をまともに観光した事はまだ無いんだよねぇ」

話の途中でアミィがそう切り返す。

「あぁ…そういえば、そうだね。ここに来てすぐ今回の騒動に巻き込まれたからなぁ」

「二人それぞれ行ってない場所もあるよね」

「そういえばそうね、私はブルービーチもイエローデザートも行ったことないわ」

「一応レッドマウンテンは祝賀会の時とかに登ったけど…」

「よーし決めたわ!!私達で、二人をカラフルアイランド観光ツアーに連れてってあげましょ!!」

「またアミィがなんか始めたぞ…」

「み、みんなで行くの?」

「ここ最近なーんか散り散りになって行動すること多かったでしょ。たまにはいいじゃん!」

「……効率悪いんじゃない?」

「んー…そんな事ないわよ!頑張れば一日で終わらせられるし。さ、善は急げよ、行きましょう!」

「やれやれ…こうなったら止めるだけ無駄か」

……その後、優也たちはレッドマウンテン、グリーンフォレスト、イエローデザート、ブルービーチ、パープルスワンプ、オレンジガーデンなどなど…。
それぞれが行ったことが無かったり、全員で行ったことがあったり…各地のスポットをまわり、モンスターや鉱石から採れる素材を収集していくのだった。

そのうちの一つ、イエローデザートでは…


「暑ー…ここわざわざ来る必要はあるの…?」

「砂漠の鉱石が必要なんだよ…… うー…あっぢー…やっぱ砂漠は暑いぜー、こりゃすぐ参っちまうぞ…」

「あっ、そうだ。また忘れてたよ!!…咲希!氷のクリスタル!!」

「……ああ。いる?」

「いるってば!!人数分、渡してよね!!」

「あれ、咲希その魔道具持ってたの!?」

一度、レッドマウンテンの火口で氷のクリスタルを知っていた楓は呆れて声を上げた。

「何であの時貸してくれなかったのよ、火山も暑かったんだからね!」

「あ、あはは…そ、そこも…咲希らしいよ…」

…相変わらずの咲希にみんなも困惑する始末だった。
更にブルービーチに寄った際はみんなで休憩がてら海の家へ遊びに行った。


「いらっしゃいませー!…あっ、貴方達は…」

「あ、どうも、先日はありがとうございました」

「あおっさーん!!島の英雄が来たよ!」

「うぉおおおおおおお来たかッ!!!俺は!!モーレツに!!感動しているッ!!」

歓喜の声を上げながらこちらへ走ってくる、あおいだす店主ディコルノ。

「ちょ、ちょっとどうしたんですか、ディコルノさん!?」

「わっ…ま、魔物!…前に優也が言ってた方ね…!」

「ぜひ礼をさせてくれッ!!君達にはほんとに感謝しているのだ!!」

「あおっさん、島から色が消えた時、誰よりもショックを受けてたんだ」

「あぁ…。ブルービーチや俺の店から、全ての青色が失われてしまったあの時…。俺は…ショックが大きすぎて、立ち直れそうに無かった。」

(……げんみつには、青以外の色もなくなったんだけどね…)

「おおげさだけど…ほんとに全てにやる気を無くして、机に突っ伏したままピクリとも動かなかったんだよ」

「…だがッ!今は見ての通り、この店とビーチには美しい青が蘇った!!…俺は確信していた。お前達がやってくれたと!」

そうディコルノは優也とダイロへ向かって発した。

「本当に感謝している!!だから今日は…全員、好きなだけ食ってってくれ!!俺の奢りだ!!」

「わあ、いいんですか!!」

「ちょ、ちょっと。少しだけの休憩のつもりで寄ったんだからね。まだまだ集めなきゃならない素材は沢山あるんだから程々にしてよ?」

「よっしゃあー、アイス頼みまくるぜ!!」

「ダイロ!またそんなに頼んだら、お腹壊すよ!!」

「また?」

「あんたら…私と翠が必死こいて登山してる間…呑気に海の家でお腹壊すくらいアイスを食べてたのね…ふふふ…ふふ」

笑いながら楓がこちらへ近寄ってくる。

「あこれ相当キレてるね。黙って殴られるしかない」

「お、おいっ!!よ、余計なこと言うからだぞ優也!!あ、すんません、あのアイスやっぱいいっす!!そ、そんじゃ俺は先に素材集めに戻るぜ!」

「待てぇえ、コラァダイロ!!逃げるなッ!!!!」

「楓の怒りの矛先が、逃げ出したダイロに…」

「…はぁ、これじゃ休憩になんないよ…」

その後、ダイロをしばいてもどってきた楓にきっちり優也も拳骨を食らいつつ、海の家「あおいだす」で感謝のおもてなしを堪能したのでした。


そして、休憩を終えた後は実に六時間くらい島の各地を巡り、やっとの事で素材を集め終えた
六人がフラつきながらアミィの家へ戻ってきたのは夜8時ごろの事だった。

〜アミィの家〜

「…………」

6人は着いて早々、床やソファに倒れ込んだ。

「バカ疲れた」

「…うん。これー…ぶっちゃけ分担して集めた方がよかったね。島を1日で回り切るの、ものすごく疲れるねえ」

「……だ…だから、言ったのに。」

「…見てみなさいよ、翠なんて、もう寝てるわよ?」

「これでもすごく耐えた方だよ。体力無いはずなのによく最後まで自分で歩けたよ…。今日のところは、翠はウチに泊めてあげようかな。」

「…あっじゃあ俺も、帰んの面倒だからついでに泊めてくれ」

「……私も」

そう言ってここぞとばかりに咲希とダイロも泊まりの流れに便乗して来た。

「何言ってんの、あんた達ウチのすぐ隣じゃない!」

「バカ言うなよ、うちも師匠居なくなってから、一人で風呂沸かしたり晩飯作ったりよお…今からやってらんないぜ」

「……同上」

「はーっ…わかった、わかったわよ!ただ夕ご飯作るの、手伝ってよね。私も今から作るの正直面倒なんだから」


結局その夜はみんなで晩御飯を作ってお風呂に入って、すぐに寝た。
6人も泊まるのを想定していなかった為、布団が二人分足りず、急ピッチでアミィが作成したのだった。

「…疲れてんのにわざわざ0から布団を作れんのか…」

「仕立て作業は別!!楽しいから疲労とか、関係ないの!」

77話『束の間の休息』


翌日。素材が集まったアミィ達職人はいよいよ、作業に取り掛かる事となる。

「これから完成まで何日かかるかわかんないんだけどさ、その間お店も閉めるし、二人は自由に過ごしていいよ。…はい、これ…少ないけどこれまで働いたお給料!お昼とか好きに食べてきていいからね!!」

「ありがとう、アミィ!」

その言葉により優也と楓は束の間の休息を得ることができたのだった。

「…あぁ〜何もする事がないこの感じがなんか懐かしいよ」

「そうね、ここ最近が濃過ぎたわ。毎日のようにアミィ達と島を駆け巡ったりね」

「……とはいえ。何もしないって言うのも暇だな…」

「そうだ楓。昨日は島を回ったけどさ、今日は街をじっくり回るのはどうかな?」

「それ、良いわね。まぁ街の人も結構出て行っちゃったけど…暇つぶしにはなるかしらね」

「じゃあ、早速いこっか」

そう言って二人は部屋から一階へと降りていった。
そこで作業中のアミィに呼び止められる。

「あれ?二人とも、お出かけするんだね」

「ええ、ちょっと優也と。今日はカラフルシティで行った事のない場所でも巡ろうかと思ってね」

「あらぁ〜。うふふっ、そっかそっか!それじゃあお二人さん、仲良くデーt…いや、観光楽しんでってね!」

「うん、行ってきまーす」
「なによそのにやけ顔は」

そして、二人は町を一緒に散策することとなった。



「…それにしても…町を歩いてる人も、少し減ってるね」

優也はボソッとそう言葉をこぼす。

「そう…ね。初めて来た時と比べて、寂しい感じがするわ」

「ダイロ達もこれから大変だろうなぁ」

「ぜひとも頑張ってもらいたいわ。…あっ!アイスクリーム屋があるわよ」

「おお、こんな場所にアイス屋さんがあったんだ。……あっ」

【アイスクリーム屋『スノーホワイト』は、店主が引っ越すため閉店しました。長良期に渡り当店をご利用頂き…】

「……閉店しちゃってるみたい。それもつい最近に。」

「うぅ…やっぱりダイロ達には頑張って町を盛り上げてもらわなきゃ…」

「それでアイス屋復活するかはわからないけどね?」



【カラフルシティ図書館】

「図書館…カラフルシティにあったんだなあ」

「…待って!扉に張り紙よ。まさかまた開いてないんじゃ…」

【当図書館の管理者である 緑島本四郎 は、色消失事件に関与していた為逮捕されました。
代理人として 黒崎茶太郎 が管理を務めます。閉館の予定はございませんのでご安心ください】

「……だってさ。よかったぁ、閉まってなくて」

「…図書館の管理人も共犯者の一人だったのね…」

開いてることに安心した二人は、図書館の中へと入っていった。

「…へぇ〜、結構広いねここ!」

「でも流石にヒイラギ図書館(優也達の街の図書館)と比べたら少し小さいかしらね」

二人はそれぞれ自分の好きな漫画や小説を読み漁って行った。

「…あぁ面白かった!この漫画、あの日家に帰ったら読みたかったけど結局騒動のせいで読めなかったからな〜。ここで読めてよかった〜!」

「ふー、漫画もひと段落ついたな。楓は…まだ小説を読んでるな。俺も他に何か本を探そうかなぁ…あれ」

ふと、奥の方へ目をやると見えた文字は『魔導書』の文字だった。

「……あんなコーナー…ヒイラギ図書館にはなかったぞ…」

興味本位でそのコーナーへ足を運ぶ優也。

「…えーとなになに…『世界の魔法大全』…『魔界の魔法』…『初級から上級まで!魔法使い入門』……すごい、これ…旅に役立ちそうだな」

「なにみてんの?」

「わぁっ!楓!!きゅ、急に来るなよ!」

「ちょっと、図書館では静かにしなさいよ!」

「だ、誰のせいだよ…それより見なよここのコーナー。魔法について書かれてる本がたくさんあるんだ。旅に役立つかもしれないよ」

「そうね、…それもいいんだけどさ」

「…どうしたんだ?」

「私…お腹すいたわ。さっきアイス食べそびれたのもあるし、余計に。」

「…………」

ふと図書館の時計に目をやる優也。

「…そういや、もう11時半か…それじゃあどこか食べに行くか」

その後二人は近くで見つけたラーメン屋へと寄ったのだった。


「ふー食べた食べた。よかったよ、美味しいお店が残っててさ」

「結構美味しかったわね、また今度行きましょう!」

「さーてそれじゃ図書館に戻…」

「ねえ、腹ごなしの運動しない?」

「えっ?でも…」

「アミィ達も数日かかるって言ってたし。別に図書館に行くのは明日でもいいんじゃないかしら?…ちょっと私、体動かしたくなってきたのよ」

「…うーん…わかったよ。でも運動場とかあるかなぁ…」

「じゃあ、どっちかが先に見つけたら勝ちってことで!それじゃ一足先に行くわよ!」

「えっおい、待てよっ!」

…その後楓が見つけたテニス場で、楓と優也は結局夜までテニスをやり続けるのだった。


「おかえりー!って優也くん、大丈夫?」

「……う、うん…」(…今日はゆっくり買い物でもしながら町観光するつもりだったけど…結局、ヘトヘトになるくらい運動しちゃったなあ)

「うふふっ。あー、久々にハッスルした!こういう羽根を伸ばせる日って、最高ね!」

「…まあ、それは同感だけどね」

…次の日優也は筋肉痛で体を休ませる事になり、結局図書館に再び向かったのはその更に翌日の事だった。
そこで、上級編までの『基本魔法』の詠唱や発動、効果などが記されている
『初級から上級まで!魔法使い入門』を買ったのであった。

78話『新たな装備』


……完成を待ち始めてから一週間後。優也と楓はアミィ達に呼び出された。

「ついに…出来たのね!!」

「うん、待たせちゃって悪いね。…でもでも、アタシたち本気の本気で作ったから!きっと気に入ってくれると思うよ!!」

「楽しみだなあ、早速見せて!」

「よーし。まずは、俺からだ。さあ見てくれ!!俺の渾身の…盾だ!!!!」

そう言いダイロに渡された盾は…片手で持てるサイズで、重みがありつつも軽く、持ち運びに適した扱いやすい盾だった。

「おおっダイロ、すごいよこれ!!使いやすそう!」

「ああ!うちの店の一番高価なものをベースにして、さまざまな鉱石で加工して、ありとあらゆる攻撃も防げる硬さになっている。
おまけに熱、電気は通さねえ、魔法攻撃の威力を抑えて防ぐこともできる。さらに魔力を盾に集中させれば…淵から結界が発動して、より広い範囲の防御も可能になっているんだ。これで自分だけじゃなく仲間も守ってやる事だってできるぜ。」

「…ほ、ほんとうに盛りだくさんですごいねこの盾。」

「さあ、存分にこの盾を役立ててくれ。…ただし…これだけは忠告しとくぜ」

「盾は過信するな、でしょ?」

「おっと、覚えてんじゃねえか!へへっ。なら、武器には愛情を持って接するってこともわかってんな!」

「もちろん!」

「っと…ああ、そうだ。それと…こいつもだな」

「…これは?」

そう言ってダイロからさらにもう一つ渡されたものは…

「そいつは鞘だ。その剣を納めておくためのモンだ、ほら最初ウチに来た時…師匠が鞘を作る約束、取り付けてくれたろ?…その約束もダメになっちまったが、どうやら設計図は既に作ってたみたいだからな。俺が再現してみたんだ」

「す、すごいよダイロ。これ…ピッタリはまる、最初から付属してたみたいに。この剣…正確なサイズ合わせとかしてないはずなんじゃ…」

「そいつはお前と会った時に剣の形や大きさを記憶してたのさ。ま、これも鍛冶職人としちゃ当然かな」

「……凄過ぎて言葉が出ないわね」


「……次は私…楓。これを…」

咲希が楓に渡した杖は橙色の大きな水晶が付いた杖だった。

「わっ…こ、これが私の新しい魔法の杖なのね…!」

「楓は(一応)僧侶という事だから…回復魔法を補強するように、杖本体に仕組んどいた。…あと炎の魔法の火力を上げる、特殊な魔水晶。…火山の地下深くで鍛えられた魔水晶だから鈍器としても申し分ない。…敵の頭や金属を思い切り叩いても、割れたりしないよ。むしろカチ割る。」

(……物騒だ)

「ありがとう咲希!!うん、手にもしっくりくる!振り心地もいいし最高の杖よ!」

「……当たり前、私が本気で作った杖だもの……」


「ふっふっふ…さぁーて、大トリをつとめるのは、もちろんアタシよ!!今日の為に!かんっぺきにこしらえた最高の冒険服!!…さあさあ早く試着室で着てみて!!」

「う…うん、わかった!」
「楽しみ!」

そして服を着替える事5分。…楓はさらに15分時間を要した。

「さぁさぁおまたせしました。いよいよお披露目開始よ!!まず一人目!得意な氷魔法に反して、温かい優しさを持つカラフルアイランドを救った若き勇者!!真田優也!!」

「何その紹介文?!」

「おー、かっけーぞ優也!!」

「優也さん、似合ってます…!」

「そ、そう言われると嬉しいよ。…えへへ」

「そして二人目!灼熱の業火で敵を薙ぎ払い、味方を治癒する万能戦士!戦う僧侶、桐谷楓!!」

「どう、似合ってるかしら?」

「……私のあげた杖によく合うデザイン。アミィと打ち合わせた甲斐があった」

「最高に可愛いわよっ楓!!アタシがセットした髪型もきまってるわ!!」

「あ、髪型セットしてたのか、どーりで少し時間がかかったわけだ」

「ね、ね、優也くん。楓ちゃん可愛いでしょ?」

「え?うん、楓らしくてかわいいと思うよ」

「だって楓ちゃん!!」

「別に…優也に言われたって、そこまで嬉しくなんかないわよ?」

「ほんとかなー、うふふふ!」


「さてと。これで、俺たちがこの島にやってきた目的は果たしたな」

「ええ、思ってた以上に素晴らしい装備を貰っちゃって、至れり尽くせりって感じ」

「……って事は…もう二人とも。そろそろ行っちゃうんだね」

「うん。…俺達もはやいところ街のみんなを助けたいし」

「そうよ。それに今私達が、中学生で居られる貴重な時間をいつまでも潰されてたまったもんじゃないし。…明日準備をすませて、明後日には出て行くつもりよ」

「…そっか。寂しくなるけど…仕方ないよね!」

「……あ、あのっ!!」

…そこへ急に声を張り上げたのは翠だった。

「……翠?急に、どうしたの。」

「…………すー…はー……」

「……翠?」

翠は深呼吸をすると、ゆっくりとこちらへ向け口を開くのだった…。

79話『翠の決意』


「…わ……私を……優也さん達の旅に、ど…同行させていただいても……よ、よろしいでしょうか!!!!」

決死の覚悟の翠から飛び出した意外な言葉に優也と楓は驚愕した。

「……ええええええっ!!!!」

「み、翠!?」

「なっ…おっおい。み、翠。ど、どうして急にそんな」

これにはダイロも驚きを隠せない。

「急にじゃないです!あ、いえ…確かに、急に言い出したのは事実ですけど…
私…ずっとずっと考えてたんです。…優也さんは勇者。楓さんは僧侶として、魔王を倒すために冒険をしていて…。アミィや咲希にダイロ"さん"はその二人のために、職人として自分たちの仕事を全力で取り組んでいて。……私も何か出来ることないかって…考えていたんです。」

「それで私、思い出したんです。町長と戦っているあの時、私…"魔法使い"を自分のジョブにしました。あの時はなりふり構ってられず、不本意な形だったのですが…それ以来魔法も、色々なものを扱えるようになったりして。…私、この道も悪くないかなって思ったんです。」

「だから、私は…一人の魔法使いとして優也さん達の旅を…ほ、補助というか…その…助けてあげられないかな…と思って…。」

「……翠。ありがとう。でも、貴女が無理して来ることはないのよ…。私達は私達の都合で、みんなを助ける為に旅をしているの。貴女が無理をする必要はどこにも無いのよ」

「そ、それでも!!私、やっと!自分にできること…したいことを、二人のおかげで見つけられたから…!!こ…こんな私じゃ…だめ…ですか!」

「…!」

「…翠、落ち着きなさい。楓ちゃんも翠の事を心配してくれているんだから。…ね、楓ちゃん」

「それは…断ってしまってごめんなさい。でも、私達のことに…貴女を巻き込んでしまうと思うと申し訳なくって…」

「…覚悟は、出来ています。その上で…私、告げました。……私がここまで出来たのもお二人が私に勇気を与えてくれたからです。それに…自分達の事に巻き込んでしまうのはお互い様だと思います。二人は親身になって私たち…この島のみんなの、力になってくれた。…だから私も…貴女達の力になりたいんです…!」

「……。…楓、俺も…翠に無理をさせたくない気持ちはある。でも彼女はちゃんと考えて言い出してくれているみたいだ。……俺は、彼女の覚悟を尊重したい」

「それは……私もよ。……うん、わかった!もう、危険だからとか巻き込みたくないからとか…過度に心配するのは、やめるわ。…翠は、私達と一緒に行きたい。私達も、翠が居てくれれば心強い。…お互い、それでいいわねっ!」

「 ……はいっ!!」

「翠…改めて、よろしく!」

「こ、こちらこそ…よろしくお願い致します!!」

「……さっ!それじゃあ翠にも、もちろん冒険着や魔法の杖が必要よね〜」

「…あっ、そうでしたっ…私も装備がなければ、二人の足を引っ張ってしまうし…でも今から作るのも時間が…」

「……待つ必要は……ない」

「…えっ?」

「ジャーン!翠の冒険着と杖よ!!アタシと咲希でつくってたの!!」

「なっ、お、お前ら…こうなること…予期してたのか!?」

「そーよ、アタシ達何年一緒に居ると思ってんの。ふふーん、少なくともダイロよりもずーっと長いんだからね!」

「そ、そこでマウント取るんじゃねえよ…」

「……フッ。ダイロ"さん"……」

「あっ咲希お前この野郎!!人が気にしてた事を!」

「ストーップ!ストップ!!ほら翠、着替えてきなよ。あと髪もアタシが服似合う髪型にセットしてあげるから…」

「あっ…うん。ありがとうアミィ」


……10分後。試着室から出てきた翠の姿に一同(主にダイロ)が歓喜の声を上げた。

「おおおっ!す、すっごく!!にに似合ってるぞ翠!!!」

「……まるで翠じゃないみたい…」

「いいわね、より活発的な女の子になったってカンジ!」

「あのドレスも似合ってたけど、これも似合ってていいね」

「あ…あぅ……その、あんまり皆さん、見ないでください……」

「うふふっそりゃ見るでしょ。今の貴女、すっごく輝いてるんだからっ」

「…ところでこの、腰についているのはなんですか…?」

「いい質問ね!!そう、それはね、水晶が即座につけ外しできるベルトなの!!咲希、おねがい!」

「……ここからは私が説明する…まずこの杖を受け取って」

「あっ……ありがとうございます」

「……その杖は…水晶が、付け外し可な魔法の杖……。つける水晶の属性によって…その属性の効果が、強まる…」

「今ついてるのは地の水晶だから地属性の魔法の効果が高まるわけね!」

「……他にも。水と雷と風の水晶をあげるから、腰のベルトに、付けといて……」

「二人とも、何から何まで本当に……」

「いいのよ。親友だもんね!!」


こうして翠は、優也たちと共に冒険する事となったのであった…。

そしてそれから。優也達は翌日を荷物の準備や、次の目的地のサーチに費やした。

「……こことかどう?」

「んー…そこは交通の便が悪いから時間がかかると思うわ」

今調べてるのは、魔物の活性化により問題が発生している場所。
口コミや情報屋が売ってくれる情報を頼りに探してゆく。
なおかつここからあまり遠くない場所など条件を出して次行く場所を絞っていった。

「……ここだ、ここにしよう!!」

…どうやら。次の目的地が決まった様だ。

その日の夜、優也と楓は部屋で最後の身支度をしていた。

優也はダイロに貰った鞘に収めた聖剣を取り出しやすいようにできないか試行錯誤している。
その姿を見てふと楓が言い放った。

「……そうだ、それにしても今まで触れてなかったけど。優也の剣、ほんとに進化したのね」

「そりゃまた今更だな…もっと早く触れる時無かったのかよ」

「アヴィドレイクと共闘した時も気づいてたけど、それどころじゃなかったでしょ?で、それからしばらくその剣のこと、私すっかり忘れてたもんだから…」

「……戦いが終わった後、みんなに軽く説明したと思うけど…翠も俺も力を使い果たして、もう無理だって時に剣に語りかけたら…剣から声と共に…力が湧き出てきたんだよ」

「…声って…その剣にまるで何かが宿っているみたいね」

「ああ…この剣と心を通わせる事が成長に繋がってるんじゃないかと俺は考えてる。…多分、まだまだ成長の余地はあるかもしれない」

「魔王を軽くひねれるまで成長して欲しいわね」

「…それは無理があるんじゃないかな?」

そんな話を交えつつ。二人は明日の船に間に合うよう早めに就寝したのだった。

80話『友に別れを告げて』

翌朝。二人は最後の朝食をアミィと一緒に取る。

「カラフルアイランドでの食事もこれが最後かー…」

「…それでもやっぱり慣れないわね、この目に優しくない色合い」

「あははっ、そう?アタシ達は生まれてからずっとだからあんまりわかんないんだけどね〜」

最後の食事といいつつも、昨日の夜にみんなで集まって晩餐をした後だったので、いつも通りの朝食だった。

「‥‥忘れ物、ない?」

「昨日何度も確認したから大丈夫よ」

「OK、じゃあ翠を迎えに行こうか」

「……この家にも。今まで、お世話になったわ」

「…うん。ありがとう…!」

優也と楓はアミィの家に振り向き、一礼をする。

「それじゃアタシ先に港で待ってるからね」

「うんわかった」

先に港へ向かうアミィを見送りつつ
優也達は翠を迎えにグリーンフォレストへと向かった。

「翠、おはよう。…準備はできてる?」

「はっ……はいっ!!」

勢いよく開けられた扉の先には昨日アミィが仕立てた服と咲の杖を握りしめた翠の姿。

「あはっ。やっぱりその姿、とっても良い感じよ」

「そっ…そうですか。そう言ってもらえると嬉しいです…」

「多分しばらく、帰って来れなくなると思うけど…やり残したことはない?大丈夫?」

「は、はい!全部昨日済ませました。
私が管理していた植物たちにもちゃんとお別れを言いましたし、
お世話係もアミィ達が募ってくださるそうです!!」
(本人達は自分の仕事で忙しくて出来ないそうです)

「……そっか。それはよかった!じゃ、行こうか」

「はい!!」

(……お父さん、お母さん。私行くよ)

棚に飾られている両親との写真に視線を送り、翠は歩みを進めたのだった。






「おっ、来た来た。意外とお早い到着だね」

「うん、待たせちゃ悪いと思ってね」

港ではアミィにダイロに咲希が待ってくれていた。

「……ほんとに、行くんだな」

「ええ。もたもたしてらんないからね!」

「それで?次はどこに行くのか決まってるんだろ?教えてくれよ」

優也たちの次の息場所を尋ねるダイロ。

「……次に行くのは、ティーア大陸…」

「ティーア大陸だって!?」

「ね。それってどんなところなの?」

そのアミィの質問にダイロが…

「ああ、俺も話に聞いただけなんだが
「ティーア大陸は99%が獣人という種族で構成されている大陸。……この世界のほとんどの獣人はそこで生まれ育っていくの」

……咲希が答えた。

「おい!人がせっかく説明しようとしてんのにお前なぁ」

「ふふふっ…ダイロと咲希って、ほんとに仲良しですね」

「うっ…翠にそう言われるのはフクザツだぜ」

「……べつに、仲良くなんかない」

一緒になって否定する二人を見てアミィは思わず微笑む。

「それはそうと、獣人がいる大陸なんだね〜。この島にもたまーにやってくる事があるけど…二人は見た事ないんじゃないの?獣人。」

「ええ、会ったことも見たことも無いわね」

「会った事もない種族が殆どを占めてる大陸に行くなんて中々チャレンジャーだね」

「うん。だけど獣人と人の関係が悪いって話も無いし、
悪いようにはならないと思ってそこに決めたんだ」

「場所もここから一週間ほどで着くらしいから、意外と近くなのよ。
…後はカラフルアイランドから船が通っているっていう点が決め所かしら」

「へえー、なるほどね。で、翠もそれに賛成したんだ」

「は、はい!私はお二人の旅について行かせてもらう形ですので、文句は言えないです!」

翠はあたふたしながらもそう答えてみせる。

「翠、昨日も言ったけど嫌なら今後も言ってくれていいのよ!目的地はみんなで決めるんだから」

「わ、わかりました。でも今回は私も…その…
獣人という種族に興味がありますので、行ってみたいと思いました」

「翠は動物好きだからね!頑張るのもいいけど、楽しんでおいでよ!」

「ありがとう、アミィ…」

優しい友人の言葉に翠は目に涙を浮かばせた。

「…おっと。そろそろ、出航時刻みたいだよ。早いところ別れの挨拶を済まそうか」

「そうね。…アミィ、咲希、それにダイロ。今まで本当にお世話になったわ。特にアミィ、私達の面倒を見てくれて…本当に助かったわ」

「なに、困った時はお互い様だよ!是非、旅が終わったらまた遊びに来てよね!!」

「ええ。もちろん!」

アミィと楓がグータッチをする。

「…みんな、今日まで本当にありがとう。別れるのが惜しいけど…俺たち、行くよ。」

「ああ!元気でやれよ!翠もな!!」

ダイロが元気な声で喝を入れてくれる。

「っ……みなさん!!あの…その…。うぅ…考えてきたのに言葉が出ない…」

「…翠、落ち着いて。」

「は、はい。……アミィ、咲希。ずっと、一人だった私と…友達になってくれてありがとう。
ダイロさんも、色々私達を友人として支えてくれてありがとうございました。
他の島でも私、頑張ります!!優也さん達のお役に立って…私…もっともっと!成長してこの島に帰って来ますから!!」

自分の気持ちを全て言い切った翠を、アミィが抱き締める。咲希も翠の頭をポンと触った。

「それでこそ私たちの翠よ!!…元気でねっ!!貴女はずーっとアタシの大切な親友なんだから!!」

「……翠…こちらこそ、……その、ありがとう。
……体壊さないように気をつけて」

「優也、楓…翠を頼んだぜッ!!」

「おーい!そこの坊主達!もう出航するから早く乗んな!」

いつまで経っても船に乗り込まない優也たちを、船から船員が呼びかけにやってきた。

「あっすみません待たせてしまって!それじゃあ皆さん…また会う日まで!」

優也達が船に乗り込むと、大きく汽笛を鳴らして船が出航する。

「また会おうねぇーーー!!」

アミィが大きく声を上げながら両腕を振る。
ダイロも片手を大きく振り、咲希は小さく手を振っていた。

「…旅の別れっていうのは、何度味わってもせつないね」

「なぁに、また会えるわよ!」

「私、今…すごいドキドキしています。初めて乗る船…
そしてこれから見たこともない場所に、行くんですね…!」

「ええ!私もワクワクしているわ!!待ってなさい、ティーア大陸…!!」

三人を乗せる船は青く輝く海へ飛び出していく。美しい幾千もの色に包まれた島へ別れを告げて。
目指すはティーア大陸。初めて会う、獣人達に優也達の期待は大きく膨らむのだった…。


第二章 色の消えゆく島 END
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このページへのコメント

翠ちゃんがダイロさんを1回だけ呼び捨てで呼んでた(意を酌んで呼んであげた?)けど
結局さん付けに戻っちゃったダイロさんカワイソス(´・ω・`)

あとあおっさんが青を失って意気消沈したところまで魅力的に描写してくださって涙が出、出ますよ……

1
Posted by 名無し 2022年02月24日(木) 19:55:13 返信

あぁ^〜師弟対決、空中戦といった熱い展開からの大団円で心がウキウキワクワクするんじゃ^〜
最終的に町長も希望を見出だしてたし、キャラクターの描き方が丁寧で巧いなあと改めて思いました(こなみ)

1
Posted by 名無し 2021年11月29日(月) 19:13:23 返信

更新来てる!
面白いです。毎日楽しみにしています。

2
Posted by 名無し 2021年11月29日(月) 15:05:11 返信数(1) 返信

ssへのコメントはモチベに繋がるからありがたい☺️

1
Posted by 名無し 2021年11月29日(月) 17:45:38

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