息抜き落書き - 【SS】ある日の魔王軍

迫力


ここは魔王リヴァの城の一室。
中央には大きな机がありそこで幹部たちが集まって食事したり
トランプしたりチェスしたりする、いわば幹部が使える自由な部屋なのだ。
そんな部屋に悩みを抱えた在りし日のガダル・カリナがいたのだった。

カリナ「…………はぁ」

魔王軍に加入して早数年。八大幹部と謳われる大役に着かせてもらったのはいいんだけど、他の幹部達に比べて自分は…

マジーナ「自分は、どーしたんだ?」

カリナ「うわっ!?脅かさないでよマジーナ」

マジーナ「いししししっ!ごめんごめん」

この子はトリッカル・マジーナ。自分と同じ幹部の仲間だ。三度の飯よりイタズラや脅かしが好きで
他の幹部達も手を焼いている。

マジーナ「それでさー?何を悩んでたんだよ、独り言にまで出してさ」

カリナ「声に出てたのか…恥ずかしいな。…実は…」


マジーナ「…なに?他の幹部に比べて自分は幹部らしくないって?」

カリナ「うん…ほら、見てわかる通り低身長でしょ?それに、なんか雰囲気が怖くないというか…。このままだともし人前に出た時に舐めてかかられちゃうよ!」

マジーナ「ほぉー、ほぉー。ナルホドねぇ……でもそんな気にすることないと思うぞー?だって他の幹部に女の子(しかも人間)が二人いるんだぞ?それに怖い奴なんてせいぜい悟郎丸とボーネットぐらいだぜ?」

カリナ「いやそれはオフの時の話でしょ。その気になればウルフ君とか、マジーナとか…。あの二人だって威圧感出せるよ?」

マジーナ「うーん…そうなのか?わかんないけど…とりあえずお前はどうしたいんだよ?」

カリナ「……幹部らしく、リヴァ様に認められた幹部として禍々しく恐ろしい雰囲気を出したい!」

マジーナ「オマエ、本当マジメだよなー…そうだな、んじゃ思い切ってイメチェンでもするか!」

カリナ「…イメチェン?」

マジーナ「あぁ!俺がぷろでゅーすしてお前をすんごくこわ〜くしてやるよ!」

カリナ「……うん、お願い!!」


………………2時間後。

カリナ「………」

マジーナ「よーし!完成だ!!」



カリナ「………ねぇ、これ凄い動きづらいんだけど…」

マジーナ「そいつは我慢だな、怖い幹部になるためだ!」

カリナ「………そして、この文字は一体…」

マジーナ「まがまがしい文字を並べたんだ。一目でこいつやベー感がわかるだろ?」

カリナ「極め付けに…トマトの匂いが半端じゃないんだけど!!」

マジーナ「しょうがねぇだろ、血が用意できなかったんだからよ。」

カリナ「あ、あと…手がこれ動かせないよね?本職の占い、できなさそう…」

マジーナ「あぁー…そいつはスマン」

カリナ「身長誤魔化せるのはいいけど、なんで竹うまを布で隠す感じにしたの?」

マジーナ「ああ、倉庫中を頑張って探して見つけたんだ。高さも結構あるしいい感じかなと思ったんだ!」

カリナ「……そっか、ごめん、マジーナが良かれと思ってやったのに文句ばっかり言って…」

マジーナ「?? 別に謝る必要ねーだろ、ダチなんだからよ。それよか、手が塞がれてるのが問題だな…うーん…義手でも付けるか…?」

ラネット「あら、二人でなにやってるの?マジーナ君と……カリナ君?すごい格好」

マジーナ/カリナ「ラネット!/ラネットさん!」

カリナ「実は…かくかくしかじかで…」

ラネット「ふぅーん…マジーナ君が衣装を作ってくれたのはいいけど手が塞がって困ってるのね…」

マジーナ「義手でもありゃ別なんだけどなぁー」

カリナ「ははは、どうやって動かすのさ」

ラネット「義手…悪くない発想だわ」

カリナ「ラネット?」

ラネット「…ちょっとしばらくその衣装貸してくれる?手が塞がってても動かせる義手を作れそう!」

マジーナ「ほんとかよ!?」

カリナ「すごいよ、ラネット!!」


…そして二日後。

ラネット「カリナ、ついにできたわよ』

カリナ「ありが…すごい眠そうだけど大丈夫?」

ラネット「ん…ちょっと熱中しすぎて二徹しちゃった…。」

カリナ「ほ、ほんとうにありがとうね!ゆっくり休んでよ」

ラネット「…動かし方は簡単…魔力を衣装に纏わせて…後は身体の一部のように動くわ…魔力が使いこなせるカリナなら、多分…。おやすみなさい」

マジーナ「おー、できたのか」

カリナ「…うん。立派な義手がついてるよ」

マジーナ「んじゃ、着てみろ!」




カリナ「……どうかな?」

マジーナ「おーっ!物もちゃんとつかめるんだな!!……どーせだから義手ってわかんないように上から布でも付け足すか」




カリナ「いい感じだね!!」

マジーナ「ああ、これならどう見ても仮面を被った怪人だ!手が義手なのも足が竹馬なのもバレやしないぜ!」

カリナ「やったー!ありがとう、マジーナ!、(寝ちゃったけど)ラネット!」

マジーナ「さて…見た目はこれで解決だ。あとは…喋り方だ」

カリナ「喋り方…?」

マジーナ「その見た目にそんなふわふわした喋り方だと違和感あるだろ?」

カリナ「そうか…うーん。わ、我はー…とか?」

マジーナ「…じっくり考えようぜ!」


カリナ「…わ、我の名はガダル・カリナ。魔王軍八大幹部の一人なり」

マジーナ「オーケーオーケー!いい感じに仕上がってるぜ!」

カリナ「これで大丈夫かな?」

マジーナ「ああ、普段のお前とは似つかないぐらいイメチェンしたぜ!」

カリナ「…何から何までありがとう、マジーナ!」

…かくして、カリナのイメチェンが完了した。
……もっとも、魔王軍の中でのイメージは変わらなかったが。