…次の日、二人は村長達に見つからないよう…早朝に村を出て行く。
そして道中色々あり…ザワメキの森を北へ抜けて、ムチンの森に着いたのは昼ごろになっていた。
「ここから…ムチンの森かな?周りの木々も雰囲気変わってるし」
「…そうみたいね。ムチンがたくさんいるわ」
優也と楓はムチンを難なく倒して行く。手慣れたものだった。
そして…ほんのしばらく進むと二人目の前に巨大なキノコのモンスターがいた。
「……キノコのモンスター…もしかして」
「んんー?なんだい貴様らは。このマザーフンギ様の縄張りに何の用だ」
そしてそのキノコのモンスターこそ、マザーフンギそのものだった。
「俺たちは…お前を倒しにきた!」
「私を倒す?ぬふふふふ…舐められたもんだね。でも待ってくれよ、私は何もしてない」
「…あなたが生み出したムチンが村を襲ったのよ。人間をみんな養分にするつもりだったんでしょ?全部ボスムチンから聞いたわ」
「チッ…アイツらヘマしやがったか。ベラベラ私の事も話してくれたようで…全く、使えない」
「ああ、そうさ!お前たちのいう通り、ムチンを村に襲わせたのはこの私だ。…お前たちは少なくともあのボスムチンに勝てる程度の実力は持っているようだな。…だが、私には勝てない」
「やってみなくちゃ…わからないわよ!!」
「ぬふふふふ…これを見てもそう言えるか?」
「むちぃぃぃいい」
マザーフンギの笠から大量のムチンが生み出される。そのムチン達はそれぞれ合体していき…
「むぢぃいい!!我らが相手ムチ!!」
あのボスムチンが10体現れた。
「あ、あのボスムチンがこんなに…!?」
「…怯む事はないわ!!私達は勝ち方を知っている!」
「ほう…?ぬふふふふ…それなら戦ってみることだね!!」
「「「「「ムヂィイ!!」」」」」
ボスムチン達が突進をしてくる。
「優也、頼むわよ!!」
「ああ!!アイスッ!!アイスッ!!」
優也がアイスを連射する。たちまち、ボスムチンの体は凍っていった。
「ほぉ…?」
「てやっ!!」
「アース!!」
そしてすかさず凍ったボスムチンを剣と魔法で砕いて行く。瞬く間にボスムチンは粉々に分裂していった。
「…ファイア!!」
「ムチいいいい!!」
砕け散ったムチンをファイアで焼く。
「…よし、一気に四体倒したわ!!どうよ、あんたがいくらムチンを出したところでもう私たちにはなんともないわ」
「ぬふふふふ…だが、私には全くダメージが与えられていないようだが?」
「……ならくらいなさい、ファイア!!」
「ムチン達!!」
「ムチいいいい!!」
ムチン達が集まってマザーフンギを魔法から守る。
「…仲間を盾にするなんてタチが悪いわね」
「こいつにとって私は母親同然。子が親を守るのは当然だろ?」
「とんだ親がいたものね…」
「……アイス!!」
優也が壁をしているムチン達を凍らせる。
「はぁっ!!」
そしてそのムチンを切って蹴散らす。
「…いまだ楓、奴を!」
「ええ!ファイアー!!」
「無駄だ!!ムチーン!!」
マザーフンギは高速でムチンを生み出し再び攻撃を防いだ。
「どんなに素早くムチンを蹴散らしても私はお前達より早くムチンを生み出せる!ましてやお前たちは二人!!私に攻撃できる隙なんてありゃしないのさ!!」
「しかしそろそろこっちも反撃させてもらうとするよ…ぬふふふふ…」
一方、その頃…
「…ザワメキの森にワープホールがあったんだな?」
「…はい。こっちです」
ジーノとノインズは、ワープホールを調査する為にザワメキの森を進んでいた。
「……ここら辺に…あれ?ない」
「……どうした?」
「い、いやそれが…昨日確かにここにあったはずの…ワープホールがないんです!!」
「そんなはずあるまい…!!道を間違えたのではないか?」
「いえ、それは…ないかと」
「…いったい、どういう事なのだ…!!」
「さあ、生まれてきなムチン達!!」
マザーフンギは再びムチンを生み出す。それもさっきより多く。
「そうはさせるか!!アイス!!」
「防御しなァ!!」
アイスを少数のムチンが体で受け止める。その間にもムチンはたくさん生まれていた。
「ぬふふふふ…ムチンハンマー!!」
大量に集まったムチン達は合体してハンマーの形になった。そして二人目掛けて振り下ろす。
「あ、危ないっ!!」
「きゃああ!!」
間一髪避ける二人。
「チッ…避けられたか。大人しく呑まれな!!」
「あ、アレに呑まれたら…きっと養分にされるわよ!!」
「な、なら…アイスで凍らせる!!」
優也がアイスを放ちムチンのハンマーを凍らせる。
「おやおや…ありがとさん。わざわざ氷のハンマーを作ってくれて」
凍ったムチンハンマーをムチンが持ち上げる。…そしてさっきと同様優也たちに向かって勢いよく振りかざした。
「うわーっ!!」
ドガァアアアン
避けた二人がいた場所には大きな穴が空いていた。
「…な、なんて威力だ…!!」
「凍ったせいでかえって鈍器としてパワーアップさせちゃったみたいよ…!!」
「ぬふふふふ…もっと私を楽しませなさい!!」
ドォオオオン!!ドォオオオン!!と氷のハンマーを振り続けるマザーフンギ。
二人は逃げるのに精一杯だった。
「うわああ!!は、反撃する暇がない!!」
「くっ!!そのうち体力が尽きて当たっちゃうわよこれ!!」
「……ちっ、こざかしい!!ムチン、もっともーっと出てこい!!」
「な、まだ生み出す気…?」
「ハンマーを増やす気か!?二つになったら流石に避けきれないぞ!!」
「……仕方ないわ。優也!!」
「…わかった!なるべく早く頼む!!」
優也の名前を呼ぶや否や、楓は元来た道を戻って行く。
「……んぬ?なんだ、あの小娘は逃げたのかぁ?ぬふふ、可哀想に。一人だけ残されちゃって」
「……」
「チッ、何も言わないなんてつまんないねェ。…それじゃあ私の養分になりな!!」
マザーフンギが新しくできたムチンのハンマーを振り下ろす。
「…くっ!」
「逃がさないよ!!」
避けた優也めがけ、アイスハンマーを振り下ろした。
「うわああ!!」
必死に転がって避ける優也。
「…はぁあ!!」
そして振り下ろされたアイスハンマーを剣で攻撃した。
「無駄無駄、壊したところで…すぐに元通りさ!!」
壊れたアイスハンマーがムチンで再生される。
「さぁ!!さぁ!!私の養分におなり!!」
「ひゃっ!!わぁあ!!…かえで!!はやく!!」
「追い詰めた!!」
避け続けバテた優也にムチンハンマーが振り下ろされる…!!
「ぬはははははァッ!!………ぬ?な、なんだこれ…」
「…間に合ったか!!」
振り下ろされたハンマーの先は、見えなくなっていた。