またーり書き込みしましょ(´・ω・`)




51話『青いマフィアとの対話』

一方その頃、ブルービーチ…。
ようやくトイレから出てきたダイロに
優也は呆れながら切り出した。

「……ダイロ、なんか言うことは?」

「…わ、悪かったよ!調子乗って食いすぎちまった」

「もう!全然調査出来てないじゃん。こんな所をみんなに見られたら怒るよ」

「ああ、そうだな…。今からちゃんと調査しねえと」

「…とりあえず、ディスカラーズって魔物が怪しいって情報があったからそいつを探すよ」

「おう!任せとけ!!」


青い砂浜を歩く事数分。…遠くに、それらしき影が見えた。

「…あっ、アレかな?ディスカラーズって」

「ああ…多分そうだな。あの丸いシルエットは他にないぜ」

「…よし、話しかけてみよう。……」

青いディスカラーズは何かを探しているようだった。
その後ろから、優也は声をかける。

「あのーすみません」

「!?なっ、何者ですか!」

普段向こうから話しかけられ慣れていないのか、青いディスカラーズは
想像以上に取り乱しながらこちらを向く。慌てふためいて動いたせいか、ネクタイと帽子が少しずれていた。

「あっ…驚かせてごめんなさい。ディスカラーズ…さんですよね?」

「……珍しいですね、人間の方から話しかけられるとは。……私をディスカラーズと存じていらっしゃるようですが…何者ですか?」

「俺、真田優也って言います!こっちはダイロ。あの、貴方に聞きたい事があるんです」

ディスカラーズは服をただしながら口を開いた。

「…ふふ、面白い。我々ディスカラーズと、真っ向から話そうとするとは。貴方、只者じゃ無いですね?」

「え?…いや多分只者、ですけど」

「そう謙遜なさらなくてもよろしい。…それで?私に何を聞きたいのですか?」

「はい、えっとですね…最近、この島で色が消失する事件があるじゃないですか」

「…………ええ。それがなにか?」

「…ディスカラーズさん、何か…知っていませんか?」

「……………………」

…重い沈黙が流れた。
ディスカラーズは顔を逸らさずただ、じっと優也を見つめている。

「…………ふっ」

沈黙を破ったのは、一声の笑い声。

「ふっふっふっふ……そうですか。そこまで見抜かれていましたか…」

「……えっ?」

「全ては貴方のお察し通り、我々ディスカラーズ達は…この事件を調査する者達を引っ捕らえ、地下に監禁する為に各地に出向いていたのですよ!!」

「えっ、えええええ!?」

「いやマジかよコイツ。自分から言ったぜ…」

突然の告白に驚く二人。

「これも…我らのボスであるドン・ディスコツィオーネの邪魔者を消す為!!」

「…しかしこうも見抜かれていたとは、敵ながらお見事ですよ…」

「え、えっと…そのー」

「…悪いけど、アンタ。全部外れてるぜ」

ダイロが思い切り指摘をした。

「…………ん?どういう事でしょう?」

「俺たち、貴方が今言った事全部知らなかったんです」

「無駄に深読みしすぎたみたいだな。おかげで俺達はアンタが"黒"だってはっきりわかったぜ」

「………………マジで?」

「うん」

「………………」



「…………やらかしたーッ!!!!」

「おっそ!!」

「は、は、謀りましたねっ!!」

「いやアンタが勝手に喋ったんだよ…」

「お、お、おのれぇ〜!!…こ、これは奥の手とされてましたが…こうなってはもう、容赦しませんよ!!」

逆上したディスカラーズは、懐から笛を取り出し、思い切り吹いた。

「カモーン!!」

ピーッ…

笛の音が響き渡る。…その直後、足音がどんどんこちらに近づいてくるのがわかった。

「な、なんだ!?」

「……なにか来るぞ!!」

ドドドドドド…

「であえであえー!」
「そいつらをひっ捕らえろ!!」
「うぉおおー!!」

そこに現れたのは、今までのディカラーズと違い
武器や防具などのさまざまな武装をした…青のディスカラーズ達だった。

「「「我ら、精鋭ディスカラーズ!!」」」

「…あなた方は絶対に逃しません…ククク」

「…や、やるしかないみたいだ」

「しゃあねえ。いくぜ優也!」

52話『ペイント・バトル』


「ここまで秘密を知られてしまったからにはここで捕まってもらいますよ!さぁ、一斉攻撃です!」

武装したディスカラーズ達は大きなバズーカ砲を手に持っている。

「…あ、あんなもの一斉に撃たれたら死んじゃうよ!?」

「……いや、死にはしねえはずだ。ディスカラーズの武器だから中身は…」

「撃てーッ!!」

バシュバシュバシュっと一斉に放たれる砲弾。
その砲弾により優也達は…

「うわぁ!……え、絵の具?」

「くっ!!防がれましたか!!」

「……ふー、良くやったぞ盾美。」

間一髪のところで、ダイロは盾を取り出し、優也と自分を攻撃から防いでいた。

「(盾美?)…ね、ねえ!あの武器の中身って…」

「……ああ。青い絵の具さ!!」

「それだったら最悪、当たっても大丈夫なんじゃ…?」

「ダメだ。ディスカラーズの絵の具には魔法がかかっていてな。青い色は濡れると、力が出なくなるんだ。…って昔咲希から聞いたぜ」

「へ、へー…」

「…っていうか、次からはお前もその盾で防ぐようにしろよ。流石に、ずっとお前を守るのは無理だぜ」

「う、うん。わかった!」

「くらいなさい、ブルーペイントマシンガン!!」

「って、来たぞ!防げ!!」

「うわっ!」

「……このままじっとしてちゃ、回り込まれて後ろから撃たれる。近寄って直接、叩くぞ」

「う、うん!」

二人は盾でペイント弾を防ぎながら精鋭ディスカラーズ達に近づいていく。

「…くらえっ!!」

優也の斬撃が、精鋭ディスカラーズに命中した。

「…くっ。効きませんよ!」

しかし、防具を着ていてあまり効いていない。

「お返しです!」

攻撃をして防御が疎かになっている優也にディスカラーズがペイント弾を発射した。

「あぁっ、当たっちゃった…ほ、ほんとに力が入らなくなる…!」

「おい優也っ!!くそっ。…剣次郎よ、俺に力を貸してくれ!!」

「秘技・ウィンドネススピン!!」

ダイロは剣を構え、高速で回転をし始めた。
どうやら風魔法で動きを加速させているようだ。

「うっ!ぐっ!うおおお!!」

ディスカラーズ達の防具にも傷をつけている。が、ダメージを与えるに至っていない。

「ふふ、集中砲火です!!」

「……寄せねえ!!」

だが回転の風圧で、ダイロに飛んでくるペイント弾は全て弾き返されていた。

「そのマシンガン、壊させてもらうぜ!!」

そしてディスカラーズ達の武器を、斬撃で破壊していった。

「お、おのれえ…!!ぶ、武器が壊されたら我々は何もできない!なんとしても、死守するのです!!」

「無駄だぁっ!!」

「ぎゃふんっ!」

ディスカラーズごと武器を切り飛ばすダイロ。
その調子でどんどん武器を破壊していったが…

「うっ…。め、目が回…」

…流石に、長くは続かなかった。

「…今がチャンスです、残った皆さん、ヤツを撃ってしまいなさい!!」

その様子を、入らない力を振り絞っていた優也は見ていた。

「…ま、まずい、なんとかしなきゃ!でも、どうすれば……そうだ!」

地面に突っ伏する優也は、そこらじゅうにまかれたペイント液に向けて手をかざした。

「…アイスッ!!」

たちまちに、液が凍っていく。

「うぉっとっとっと!!あだっ!!」

「うわああ!!か、体が!!」

凍った地面で転んだり、ペイントに濡れていた部分が凍ったりとディスカラーズ達に大きな隙が生まれる。

「…ナイスだ、優也!いくぜ、ソードブレット!!」

そしてダイロの突きが残された武器を貫いていった。

「ああああああ!!わ、我らのマシンガンが…!!」

「うう、ううーっ!おのれおのれおのれぇええええええ!!」

「…さてと、どうする?…今の手持ち無沙汰のお前らを蹴散らすなんて、俺たちじゃ楽勝だ。まだやろうってんなら…」

「……あっ!そういえば私、今日バイトでした!きょ、今日の所はここでお暇させてもらいますー!!」

「わ、私も友人とゴルフの約束が…」

「私も彼女と…」

それぞれのディスカラーズが、それぞれの適当な言い訳を述べて…その場から逃げ去っていった。

53話『一つの連絡』

「……ったく。圧倒的不利になるとあいつら、こうも弱腰になるもんなんだな」

「す、すごい強いんだねダイロ。あんな剣技、見たことないや」

ようやく力が戻ってきた優也が、ダイロに近づく。

「ああ。鍛治修行の傍ら、剣も習ってんだ」

「それと…ごめん。ペイント弾に当たって全然戦闘に参加できなくてさ…」

「なーに言ってんだ、お前のアイスのお陰で助かったぜ!ただ…まあ、確かに敵に突っ込んで行く時、防御がお留守で全然盾が扱えてなかったけどな」

「あ、あははは…。…盾といえば、そういえばダイロ。さっきなんか…盾美とかなんか言ってなかった…?」

「…ん?ああ。こいつの名前だ。あとこっちの剣は剣次郎」

そう言ってダイロは先ほど使用した盾と剣を優也に見せる。

「武器に名前付けてるんだ(ネーミングセンス…)」

「変か?…そうだった、さっき盾をお前にやった時も言っただろ。武器や盾には愛情を持って接してやるってさ」

「俺の場合は名前をつけて、いざという時に強く呼びかけんだ。そうするとな自然と、勇気と力が湧いてくるもんなんだぞ」

「なるほど…ダイロなりの武器への接し方なんだね」

「ああ。そういや、お前のその剣も…多分元から名前ついてんだろ?師匠が聖剣の類だっつってたからな」

「う、うん。イノーマスって言うんだ。ダイロのお師匠さんもよくこれが聖剣だってわかったね…」

「あの人の武器を見る目は世界一と言っても差し支えないからな。さて、雑談はこれぐらいにして…と」

「……戦闘があったせいで霞んでたが…とんでもねぇ手がかりを、掴んじまったな俺ら」

「ドン・ディスコツィオーネってのが…多分この事件の犯人だよね」

「あぁ。しかしもしかしたら俺たち一番乗りで有力な情報ゲットしたんじゃないか?」

「……お腹壊したせいで一時間ぐらい時間浪費したのに」

「だー!!その事は忘れてくれ。…とりあえず、こいつで報告しとくかい?」

そう言ってダイロは通信魔石を取り出す。

「ああ…そうだね。こんな有益な情報、共有しないわけにはいかないもん」

そう言い、連絡しようとした時…。連絡魔石が、淡い光を発した。

「あれっ!誰かから着信来たぞ!?」

「他のみんなも何か見つけたのかな?」

「おいおい…一番乗りだと思ったのに、ちくしょー。」

悔しがりながらもダイロは魔石に魔力を流し始めた。

「はいはい、こちらブルービーチ組。…そっちはどのチームだ?」

〈…もしもし。ダイロ?繋がってる?こちらイエローデザート。緊急事態よ〉

「なんだ?一体どうした」

〈あのね…こっちで探索してたら私達、事件の黒幕に見つかって、それで色々話を聞いたのよ…〉

「……なんだって!?」

〈ああっ馬鹿!!声がデカいって!!バレちゃったじゃないの!!せ、せめて黒幕の名前だけでも!!犯人は町…ザザザーッ!!〉

突然声を遮るかのように雑音が鳴り響く。

「おいっ!!おいっ!!無事か!?」

「一体どうしたの!?」

〈……ザーーッ……〉

ツー…ツー…

通話はそこで切れてしまった…。

「…………」

「……ただことじゃねえ」

「今の声…アミィだったよね?」

「……あぁ。一体イエローデザートで…何があった…!?」



一方その頃、イエローデザート。


「ああっ…!通信結晶が…!!」

「……いやいや危ないところでしたよ。まさか、通信結晶をお持ちでしたとはね…」

アミィ達は…ひとしきり、町長の話を聞き終えた後だった。
そして、とにかくこの事を優也達に伝えようとしたのだが…ドン・ディスコツィオーネにより阻まれてしまったのだった。

「うぅ!なんか急に暑くなって来た!…なんで?」

「……今、使った技。…たぶん、魔道具の効果を打ち消す力がある。氷のクリスタルも通信魔石も…全部効果が消されたんだ」

「…………よく、分かったな。これはブラック・ペイント。…効果は、今説明してくれた通りだ」

「さぁて、ディスコツィオーネよ。外部に連絡する手段がもう無いとは限りません。面倒になる前に地下に案内して差し上げましょう。二人の動きを封じなさい」

「…御意。グリーンペイント!!」

緑色の絵の具が二人を取り巻く。

「……あ…ね、眠く…」

「クク…今しがた眠っててもらいますよ…!!」

……こうして、アミィと咲希は…町長率いるドン・ディスコツィオーネにつれ攫われてしまったのであった…。

54話『火口の龍』

話は少し前に遡る。
楓と翠は、レッドマウンテンの山頂付近まで上り詰めていた。

「…そろそろ…頂上ね…!」

「そうですね…つ、疲れました…」

「ちょっと大丈夫?私が背負っていこうか…?」

「い、いえ!大丈夫です!!もう少しですし、自分の力で頑張ります。それに大変でしょうし」

「…そう?私、結構パワー有り余ってるんだけどなぁ」

楓はあの不思議な果実のおかげでここまで全く疲れずに山を登ってきた。
…そして、二人はとうとう山頂へと辿り着く。

「……レッドマウンテン山頂…だって!やっとついたー!!」

「はぁ…よ、よかったです…」

レッドマウンテンの山頂には、大きな火口と祠があった。

「……あの、祠にいるのかしら…。山の主さん」

「き、きっと…そうですね。行きましょう」

楓と翠は、恐る恐る祠に近寄って行く。
そして、入口を開けると…。

「いらっしゃいませ!!」

「ひゃぁああっ!?」

突然の声に思わず声を上げる翠。

「あっ、驚かせちゃってすみません…!!コホン、気を取り直して…。本日はレッドマウンテンにお越しいただき、ありがとうございます!」

そこには、二人の女の子と…一人の男性がいた。

「…あ、貴方達は…?」

「はじめまして。僕は結城ミチルです。ここ、欲龍のほこらで巫女をやっているんです」

「よ、欲龍の祠…?」

「レッドマウンテンの主である、アヴィドレイク様を祀っている祠なんですよ。」

「俺は……結城 ミノル。 この祠の神主を……やってるんだ。」

「あ、あぅ…ウチ、ミシェル。」

「初めまして。私は桐谷楓です!」

「…ま、松村…翠です」

「ふふっ。お二人は、観光へここへ?」

「いえ。あ、あの私…この山の木の実を食べちゃったんですけど…」

そう言い、楓はしまっておいたひとかじりした木のみを取り出す。

「…そうでしたか。それを持ってきたということは…ご存知なんですね?」

「…は、はい……」

「ではアヴィドレイク様の元へ案内しますので、ついてきてください。…ミシェルも来て。…明かり頼むよ」

「うん!」

そう言いミチルとミシェルは楓達を先導し始めた。

「…………」

「……こ、怖いね。私達何されるんだろ…」

淡々と案内されるのでいよいよ怖くなってきた楓達。

「……龍と言ってましたから…た、食べられちゃったりして…」

「…はぁー、またドラゴンか…」

ドラゴンにいい思い出がない楓は思わず深いため息が出る。




「……こ、ここからは火口の中です。とても熱くて人間には耐えられません。ですので…これを身につけてください」

そう言ってミチルは氷のクリスタルを取り出した。そう、イエローデザートでアミィ達が使用したものである。

「ミチルさん大丈夫ですか?声が震えてますが…」

「だ、大丈夫です。僕は暗い所が…苦手なんです」

そして楓達は、火口の中へ案内された。

「…アヴィドレイク様。木のみを食べた人間を連れてきました!」

そこにいたのは、一匹の火龍。浴びるように溶岩に浸かりながらも貫禄のある姿で
楓達は息を飲んだ。

「…………」

「…………」

お互い見つめ合う龍と楓。これから何をされるのか?楓はいよいよ緊張で強張っていた。

「あんた達っすかー!おれのレッドフルーツを食べたのは!!」

「……へ?」

「へ?じゃないっすよ!!ここレッドマウンテンにあるものは、みーんなおれのものなんで!!勝手にとっちゃ駄目じゃないっすか!!」

「あっ…はい。す、すみませんでした!」

想像とかけ離れた喋り方に思わず面食らったが、誠意を込めて謝罪をする。翠も、それに釣られて頭を下げた。

「すみませんで済んだら、警察はいらないっす!!…なにか、代わりの物を要求するっす!!」

「…か、代わりの物ですか?」

「等価交換って奴っす。そうっすね…じゃあまず。あの木の実の感想を、正直に言うっす!!」

「え?えっと…。すごく甘くて、美味しかったです。食べた途端に疲れが取れて…おかげで、ここまで一気に登ってこれました」

「やっぱそうっすよね!?あの木の実は、おれの力が入っているっす。だから俺の力が届くレッドマウンテン限定っすけど、食べたら力が湧き出てくるっすよ」

「そ、そうなんですか。すごいですね」

「そこの子はどうだったっす?」

「あっ……わ、わわ私は…た、食べてない、です」

「……ほんとっすか?」

楓に問いかけるアヴィドレイク。

「本当です!木の実を食べちゃったのは私だけです」

「…ふーん、そっすか。ならそこの子は免除っすね」

「アヴィドレイク様、満足頂けましたか?」

「…これだけじゃ、その木の実の分には届かないっす。そうっすね…じゃあ冒険譚!その格好、冒険者っすよね?今までの冒険をぜーんぶ聞かせてくれっす!!」

「ぼ、冒険譚です…か」

「…話せないなら許さないっすよ?」

「わかりましたよ、話しますよっ!」

ドラゴンに襲われた事。そしてムチンに襲われた村。狼の森に、魔王軍の襲来。
楓は自分が今まで体験してきた話を全部、アヴィドレイクに話した。

「……というわけで、今は色消失事件を調査する為にレッドマウンテンに来たってわけです。」

「…おぉおおお〜!!いいっすね最っ高っっっす!!想像以上の旅をしてるんすね!!」

火山の主はすっかり満足して、木の実の件を許してくれた。



「…お疲れ様でした!それにしても…楓さんも、大変だったんですね…」

祠へと戻る道中、楓の冒険譚を一緒に聞いていたミチル達は楓に同情をする。

「いえいえそんな…」

「話は分かりました。色消失事件は、我々も困っていたのです。協力できることなら、なんでも言ってください」

「…ほんとですか!!」

悩みの種であった山の主の怒りも収まり、新たな情報も得られそうな楓達は次に…

(ぐぅ〜…)

「……す、すみません私ですっ!!」

「あはははっ。それじゃ少し早いけどお昼にしようか。一緒に食べていこう!」

楓達は少し早めのお昼ご飯を取ることになった。

55話『祠の昼餐』

「できたよ。……桜ニンジンのカレーだよ」

欲龍の祠では、毎日ミノルが料理を作っている。
そして楓達に出されたのは、ピンク色のにんじんが入ったカレーライス。

「わぁ、美味しそう…!」

「それじゃ」

「「「いただきまーす!!」」」

「おいしっ…!この人参甘くて美味しいわ!!」

「それはよかった。…たくさん、食べていいからね」

「ミツルさんって、料理上手なんですね」

「うん、料理は得意なんだ…。たまに、アヴィドレイク様にも作っているよ…。」

「へえ、そうなんですか。ミシェルさんとかは、料理するんですか?」

「え、う、ウチ!?し、しな… カンニンしてぇ〜!」

急に名前を呼ばれ、ミシェルはテンパりながら顔を隠し叫んだ。

「…ごめんね楓ちゃん。ミシェル、初めて会う人と話すの苦手なんだ」

「ああっそうだったんですか!すみません」

「いいのいいの!ところで翠ちゃんはグリーンフォレストに住んでるんだって?今僕達を案内してよ!」

「…あ、……は、はいっ」

しどろもどりになりながらも翠は答える。

「うふふ、実は翠も、初対面の人ちょっと苦手なんです」

「そうなんだ〜ふふっ。なんだかミシェルと、そっくりだねえ」

その後も、お互いの身の上話や好きな物の話を交え、
賑やかな感じで楓達は昼ごはんを終えるのだった。


「……それで、色消失事件について。何か知ってることはありませんか…?」

昼食後、楓は早速三人に事件の事を尋ねる。…しかし

「…ごめんね。実は僕…この事件に関しては特に何も知らないんだ」

「俺もだ…。特に最近ここら辺で変わった事はなかったよ。」

「う、う、ウチも…知ってる事はないで」

……まさかの完全不発。それもそのはず、彼女達はここ数日祠から出ていないと言う。
色消失事件に関しては、レッドマウンテンの異常が分かるアヴィドレイクから聞いたとの事。

「そ、そんな〜…」

「うう、力になれなくてほんとにごめんね…」

「…いえ、全然大丈夫です!少なくともレッドマウンテンに現在誰も不審人物はいないですから…あとは、他の仲間達が何か見つけてくれるのを祈ります」

するとその時、楓の持っていた通信魔石が光り輝く。

「わ、わわっ…。これって…着信?」

「……そ、そうみたいです。楓さん、魔力をすこしだけ流してください」

「はいはいっ…もしもし?もしもし?」

〈もしもし!こちら、ブルービーチ組!!〉

「ブルービーチ組って事は…優也とダイロね?何か見つけたの?」

〈それが…大変な事が起きたみたいなんだ!!〉



「なんですって!?イエローデザートに行ってたアミィ達が、事件の黒幕に捕まった!?」

〈ああ…こっそり俺たちに通話してくれてたんだが、途中で切れちまって。何回掛け直しても繋がんねえんだ。…くそっ!〉

〈…それでさ!とりあえず一旦、翠の家に集合って形にしない?イエローデザートにいた事がわかった以上、今俺たちがここにいる必要もないし…それに、俺たちも色々情報をゲットしたんだ。それは実際にあって、話したい〉

「……わかったわ。急いで、戻るわ」

楓がそう言うと、向こうからの通話は切れた。

「…………アミィが…咲希が…!!」

「翠、落ち着いて!!」

心配のあまり俯きながら唸る翠を、楓が優しく介抱する。

「…何やら、大変な事になってしまったみたいですね…」

「……そうみたいです。ごめんなさい、私達そろそろ戻らないと」

楓達は、急いで祠を出発する準備を整えた。少し気持ちを整理した翠はゆっくりミチル達に向き、礼を言う。

「あの…あ…ありがとう…ございました。お、お昼ご飯…美味し、かったです…!」

「ええ、ほんと!色々とお世話になりました」

「あ…ま、また来て…ね」

「…次はもっと、美味しい料理をご馳走するよ。」

「それじゃあ私たちはこれで…!…ふー、下りとはいえ降りるのも大変ね…」

「ちょっと待って!」

帰ろうとする二人を、ミチルは呼び止めた。

「……裏の方にある、ゴンドラを使うといいですよ!」

「……へ?」




…楓達が登って来た山道。その反対側には山道こそなく断崖絶壁だったものの…ゴンドラが、通っていたのであった。

「……私達が頑張って登った苦労とは…」

「…お、おかげでお昼ご飯美味しかったじゃないですか」

「はぁ。…ま、それもそうね」

「……あの、ところで…。」

「ん?どーしたの翠?」

「いや、その…。色々あったので、触れられ無かったのですが、楓さんと優也さんは…魔王を倒すために…冒険してたんですね」

「…あぁ、そうね。ごめんなさいね、言うタイミングが無くって」

「いえ、いいんです。…でも…すごいなって…私、思いました。同じ年くらいの子が、友達を救うために冒険をするだなんて…」

「……私なんかには、とても…真似できない、です。」

「今、こうしてアミィ達が攫われたと聞いた時も……私、すごく怖くなって…逃げ出したい気分なんです」

「翠…」

「……すみません。こんな、気分が下がる話をしてしまって」

「いいのよ、そう言う事は溜め込んでたらダメよ、むしろ話してくれてありがとうね。
…でも、翠にだってきっとできるはずよ」

「…ほ、ほんとでしょうか…」

「ほんとよ!だって、アミィ達は翠の大事な親友なんでしょ?大切な人の為なら…人間、なんだってできるのよ!!」

「……楓さん」

…そうこう話しているうちに、二人を乗せるゴンドラは下へとたどり着いた。

56話『情報共有』

…数時間後。翠の家に、イエローデザートの二人を除いた四人が再び集う。
流石に、仲間が敵に攫われたとなっては誰一人としてお気楽ムードでいる訳もなく。
とにかく、この調査で得た情報を共有する時間が始まった。

「……っつーわけで俺らは、その精鋭ディスカラーズを追い払ったわけだ」

ダイロがブルービーチであった事を一通り楓達に話した。…海の家でうつつを抜かしな件は含めず。

「嘘、あの胡散臭い奴らに自分達から話しかけたっていうの?」

「ああ。…あれ、楓達もディスカラーズと会ったのか?」

「ええ、私たちは赤色のディスカラーズと。まぁ…どいつも私たちにしつこく絡んでくるもんだから怒鳴って追い払ってやったわ」

(こ、怖え…)

ダイロは心の中でそう呟いた。

「…とにかく、俺らが得た情報を纏めるとすると
一つ、ディスカラーズ達の目的は、事件を調査する者達を引っ捕らえ、地下に監禁するという事
二つ、ディスカラーズ達を統べるボスの名はドン・ディスコツィオーネ
……って所かな。」

「後はさっき話した通りアミィ達が事件の黒幕に捕まってしまったって事だな。これからわかる事は
アミィ達は恐らく…地下に監禁されている筈だ。俺たちが得た情報でわかるのは以上。…そっちは?」

「…私達もレッドマウンテンで聞き込みをしたんだけど…残念ながら成果は得られなかったわね。発見した事と言えば山の主である欲龍と…食べると力が湧き出る木の実かしら」

そう言って楓は、さっきの木の実を取り出した。ちなみに一口齧った時点でこの木の実は楓のものと言うことになったらしい。
いくら欲龍と言えども流石に誰かが既に齧ったものを返せとまでは言わなかったそうだ。

「これを一口齧っただけで、登山の疲労も全部取れたのよ。戦闘で使えると思うんだけど…」

「…本当?信じられないなあ」

「だったら食べてみなさいよ、ほら」

「(シャリっ…)あ、美味しい。凄い美味しいよこれ。…だけど特に身体に変わった感じはないよ?」

「え?嘘…(シャリ。)……あれ、ほんとだ…どうしてだろ」

「あ……それだったら多分、さっきアヴィドレイクさんが…」

『あの木の実は、おれの力が入っているっす。だから俺の力が届くレッドマウンテン限定っすけど、食べたら力が湧き出てくるっすよ』

「……って、言ってたと思います」

「レッドマウンテン限定の力って訳か。…ま、そう都合のいい物なんてないよな」

「でよ…話を戻すが。アミィ達を連れ去った黒幕ってのは、十中八九そのドン・ディスコツィオーネって奴だ。そいつの居場所を見つければ…アミィ達も助けられる」

「……それだけども、なんか引っかかるんだよな…」

「どういう事だ、優也?」

「さっき通話が切れる寸前にアミィが言ったボスの名前は…最初しか聞き取れなかったけど『ちょ』だったと思うんだけど…」

「…確かに、そうだったな」

「ちょ?…そんな名前の始まりの人、居たかしら」

「…さあな、俺にもわからん!だが、ともかく…キーワードは地下だ。地下を中心に探ってみようぜ」

「地下…と、言われても見当がつかないね」

「 そうだな…じゃあ、今度はカラフルシティで聞き込み調査するか?」

「……いえ、そんな事するよりもっと確実に情報を得られる奴がいるじゃない」

「え、誰さ?」

「ディスカラーズよ!!アイツらなら地下の入り口とかも知ってるでしょ!仲間が攫われてるんだもの、こうなったら力尽くでも、聞き出してやるのよ!」

「……お、おう。(やっぱ怖え!)」

「でも、ディスカラーズから話を聞き出すのは大変だと思うよ。俺たちが聞いた時はなんか勝手に勘違いしてペラペラ情報喋ってくれたけど…そうなんども上手くいかないだろうし」

「そうだな…それにアイツ、ピンチになると仲間をたくさん呼ぶからな。無駄に武装が濃い奴らを。」

「…じゃあ、どうするのよ」

「作戦を立てよう」

……こうして、四人はどうすればディスカラーズから情報を聞き出せるか作戦を練り始めた。




……数分後。四人は家を出発し、グリーンフォレストでディスカラーズを探し始めた。
ディスカラーズ達は各地で目撃されているため、きっとここにもいると踏んだのだ。
その予想は的中。10分もしないうちに、一人ほっつき歩いているディスカラーズを発見した。

(…いたっ!緑のディスカラーズ…さしづめ、グリーンディスカラーズってところか?)

(んな事どうだっていいわよ!…優也、いい?バレないように…ね?)

(オッケー。んじゃ行くよ…)

「アイスッ!!」

優也はディスカラーズに向けてアイスを放った。
もはや優也の代名詞と言っても差し支えないだろう。

「冷たッ!?何ですかいきなり!!」

いきなり攻撃されると思わなかったのだろう、アイスはディスカラーズの体に簡単に命中した。

「アンタに話があんだよ」

そうダイロが切り出し、優也達も姿を現した。

「…はっ、話ですって?突然攻撃しておきながら…!でも残念でしたね。動きを封じるつもりだったのでしょうが下級の氷魔法など、水が無ければ物質を凍らせることはできないのですよ。お返しです…食らいなさい、ペイントガン!!」

ディスカラーズはペイントガンの銃口を優也達に向け、勢いよく引き金を……引けなかった。

「…なっ!?」

「そんな事ぐらい、今まで戦ってきて十分に分かってるさ。そんなことより…あなたの武器はもう使い物にならないですよ?」

優也の放ったアイスは…確かに、ディスカラーズの身体を凍らせるには至らなかった。
…しかし、武器として所持していたペイントガンの中身はしっかりと凍っていたのである。

「…クッ!こうなったら応援を…」

「おっと、仲間を呼ぶ笛があるのも確認済みだぜ」

ダイロが間髪入れず、取り出した笛を剣で弾いた。

「なっ…なっ…!」

「チェックメイトよ!!」

四人はディスカラーズを完全に包囲した。武器も使えない、仲間も呼べない。この状況は完全に詰みである。

「…さぁ、話を聞いてくれるな?」

「………………わかりましたよ!!」

長考の末、どうしようもないと気づいたディスカラーズは、渋々観念した。

57話『尋問』


「…さて。とりあえずだ、お前らのアジトの入り口を…教えてもらおうか」

「……アジト?はて、なんのことでしょうかね」

「しらばっくれないでよ。アジトがあんの分かってんだから」

「……素直に教えると思いますか?」

「ああ。…こんな状況じゃなければな」

ダイロはディスカラーズに詰め寄る。

「…ふ、ふん。そんな凄まれても全く動じませんとも。どうぞ、煮るなり焼くなりご自由に…」

(こいつ…他の奴よりもしぶといな…)

「…ちょっとダイロどいて!」

楓がダイロを退かす。

「御託はいいからさっさとアジトの入り口を教えなさいよ!!」

「ひぃいっ!教えますっ教えますからぁ!!」

「……すげー…」

「ええ…やっぱり楓さんはすごいです…」

抵抗も虚しく、あっさりとディスカラーズは折れた。



「……アジトの入り口は…カラフルシティの各所にありますよ…」

「…カラフルシティの地下が、お前らのアジトってわけだな」

「……くっ…そ、そもそもアジトがある事自体秘匿のはず…!誰か漏らしたんですかっ!!」

「それは…まあ、教えてやってもいいか。青いディスカラーズが、なんか勘違いしてベラベラ喋ってくれたぜ」

「…あいつかーッ!!」

どうやら思い当たる所があるようだ。

「うぅ…だからあいつは出回り役向いてないって私は言ったんですよ…素直に地下で働いていればこんな事には…」

「おい、話はまだ終わってないぞ。…お前達に捕まった人間は…どこに連れてかれんだ?…そして、何をされるんだ?」

…………

その後もダイロと楓が中心にディスカラーズに情報を問い詰め続けた。
結果、得られた情報は

カラフルシティの地下に、アジトがある。その入り口は多数あるが、ホテル・ルージュの倉庫から入れる入り口しか吐かなかった。
そして、アジトは地下都市ブラックシティという巨大な空間。捕らえられた人間は、牢屋に入れられ地下労働をさせられる。
労働内容は…ディスカラーズの武器でもある、魔法の絵の具を作らされる事だった。

「……まあ、こんなもんかな?」

「ぐ、くぅう…」

悔しそうにこちらを睨むディスカラーズ。

「さーて…どーする?今から乗り込むか?」

「いや…今からじゃちょっと…。みんな疲れたと思うし、もう日も暮れるよ」

あたりは、既にもう夕暮れだった。

「…じゃあ、明日朝一で乗り込むか。それじゃ今日は…一旦帰るか」

「うん」

「それで…こいつはどうするのよ?」

「あ、あの。…か、解放してあげませんか?さ、流石に…かわいそうです」

「…いや、だめだ。ここで逃したら、敵に報告して何か対策されちまう」

「それじゃあどうするってのよ?」

「……俺が、連れて帰るよ。ぐるぐる巻きに縛れば逃げたりもしないだろ」

「…………」

「み、翠!そんな顔すんなって。ちゃんと今回のことが解決したら解放してやるさ。…アミィ達を助けるには、こうするしかないんだ。わかってくれるか?」

「……ごめんなさい。そうですよね…。ダイロさん、よろしくお願いします」

「お、おうっ。…じゃ、ちょっとじっとしてろよな」

「…な、や、やめなさい!そんな、うわあああああ!!」

ディスカラーズの悲鳴が森に響き渡った。


「うぅ…ぜ、絶対に許しませんよあなた」

「はいはい、わーったって。んじゃ、帰るか」

「……あっ!!」

「どうしたの、優也?」

「いや…アミィの家の鍵って確か本人が持ってたから…入れないや」

「…ほんとだ!?私達、今日泊まる家無い!?」

「……そ、それだったら…わ、私の家に泊まってください」

「…いいの、翠?」

「……は、はい。…色が抜けて殺風景ですけど…」

「全然いいわよ!ありがとう翠!」

(羨ましいなおい…)「……それじゃ、明日もまた翠ん家で落ち合おう」

「わかった。また明日ー!!」

そう言い、ダイロはグルグル巻に縛ったディスカラーズを担いでカラフルシティへと帰って行った。


優也達も、翠の家にたどり着く。

「お風呂、あるのでよかったらどうぞ」

「ほんと?ありがとう、結構暑かったからね…汗流したかったんだ」

「それと…お客様用のお布団も出しておきます」

「翠、ごめんね。気を遣わせちゃって!」

「き、気にしないでください!それとお風呂入ったら…晩御飯にしますから!」

流石、一人暮らしをしているだけあり翠はのんびりした雰囲気と打って変わり
テキパキと家事をこなしてみせた。

そして晩御飯にシチューとパンを出してくれた。
消えたアミィ達の事や、他愛のない昔話をして、翠もすっかり二人と打ち解けた様子だった。

「そういえばさ、翠って…戦闘はできるの?」

楓が、翠に質問をする。

「えっ…戦闘…ですか?」

「うん。結局レッドマウンテンじゃあ戦うこともほぼ無かったし。…自分の身を守るぐらいの護身術がないときついんじゃないかなって」

「え、ええと…。防御結界とか…力増強魔法とか、移動速度上昇魔法とか…」

「へえ、後方支援系の魔法が使えるんだ」

「そっか、そんな魔法もあるのね〜。私も使えたら便利かしら!」

「あっ…それだったら、詠唱とかやり方教えますよ?」

「いいの?やったー!」

……その後、夕食を食べ終えると翠に魔法を教わりだした楓。
しかし、翠が使える後方支援系の技は…ことごとく、楓は使用できなかった。
逆に翠に攻撃魔法を教えても翠も全く覚えられなかった。

「……魔法ってこんな、人によって適正とかあるの?」

「魔法は奥が深いんですね…」

一通り検証してみた後、三人は明日に備え、少し早めに眠りについたのだった。

58話『消えた二人は今』


「う…うーん……」

暗闇に、滴る水の音が響き渡る。

「ここは…どこ…?」

「……アミィ、やっと目が覚めた」

「…咲希?…あっ!私達そういえば…!!」

「……町長に、捕まった…」

「そんなあ!ここから出してよーっ!!」

必死にもがくアミィ。しかし、手足が拘束されて身動きが取れなかった。

「……無駄だと思う。……誰も、来る気配がない…」

「うう…咲希、魔道具はないの?」

「……入ってる鞄が、無くなってる。多分全部没収された…」

「これじゃあ何にもできないよ〜…」

「……ここに来て何時間か、知らないけど…しばらくすれば…パタフリルを呼び出せるんでしょ?…それで脱出、できる」

「…そっか、その手があった!……でも時間がわかんないと…」

すると突然、牢屋の扉がギィイイと開く音が聞こえた。

「作業の時間ですよ」

「ひゃあっ!?だ、誰?」

「…いいからでなさい。ほら、足枷は外してあげますから」

咲希とアミィは足枷を外され自由に歩けるようになった。

「言っておきますが…逃げても、無駄です。手錠の鍵は別の場所にありますし、今のあなたがたに我々に抵抗できる力はないですから」

「うぅ〜何やらせようっていうの?」

「……とにかく、ついてきなさい」

牢屋から出た二人は、その者に廊下を歩かされた。

「さあ、こちらで作業していただきますよ」

薄暗い廊下を出ると、打って変わって光がある場所へ出た。

「…!やっぱり貴方ディスカラーズだったのね」

光に当たって映っていたのは、黒いディスカラーズ。

「当然でしょう。さあ…やってもらう作業はこれです」

「なにこれ…花や果物が置いてあるけど」

そこにあったのは、さまざまな染料の素となるものだった。

「あなたには…赤や黄色などの絵の具を作っていただきますよ」

そう言い、ディスカラーズはアミィを指さした。

「…………私は?」

「あなたは…こちらで、出来上がった絵の具に…こちらの魔法をかけていただきます。魔道具店のオーナーなら、簡単でしょう?」

「………」

こうして二人は…魔法の絵の具を作らされる事になるのだった…。



……翌日。朝一番に翠の家にやって来たのは…やたら装備が厳重になった、ダイロ。

「…うわっ、すごい装備…それどうしたの?」

「…師匠に話したんだ、アミィと咲希が攫われたことをな。連れて帰ったディスカラーズを見せたら信じてくれた」

「それで、二人を助けに行くから店の商品を貸してくれって頼んだんだが…俺のレベルじゃ扱いこなせないって貸してくれなかったんだが、
師匠の目をちょろまかして店ん中でも結構高い剣と盾、持ってきちまった」

「えっ、それまずいじゃん!!」

「大丈夫だ、さっさと行って帰って、戻せば…ば、バレねえ」

…もちろんそんな筈もない事はダイロも重々承知だった。
なにせ、優也の剣を一眼見て聖剣と気付くあの男の事である。
一度でも使用したなら、きっとすぐに違いに気付いてしまうであろう。

「それと、あのディスカラーズは師匠に逃げ出さないよう頼んできたから大丈夫だ。さぁ行こうぜ!」

「……まあ、ダイロがそこまで言うんなら…。武器もある程度揃ってた方が、心強いし」

「…ああ!もし、バレたらバレたで…腹は括ってるさ。それよりも今は、二人を救出だ!!いくぞ、おー!!」

拳を突き出し、ダイロが気合を入れる。

「「おーっ!!」」

それに優也と楓も合わせて拳を突き出した。

「…お、おーっ!」

翠も、恥ずかしがりながらも拳を突き出す。

「……ふふっ。さぁて、行きましょうか…!」




ここは…ホテル・ルージュ。話によれば、ここの倉庫に地下への入り口があるという。

「ここ…島に来た時、町長に案内されたホテルだね」

「そうね、どこかで聞いたことがあると思ってたら…」

「…とりあえず入ろうぜ」

四人はホテルの自動ドアを通った。

「……いらっしゃいませ。ご宿泊の方ですか?」

ホテルに入るなり、フロントの女性に話しかけられる。

「あっ…いや、すみません。フロア毎の部屋の配置が書かれてる地図って、あります?」

「…それなら、あちらの階段の手前にございます」

「…………」



「あった!これが倉庫よ」

楓が書かれた倉庫の場所を指さす。

「…反対側にあるみたいですね」

「よし、行こう!」

「…………」

「…翠?どうしたのよ?」

「さっきの…フロントの人、なんか嫌な感じがして…」

「……?気にしてても、仕方ないわ。とりあえず、倉庫に向かいましょう」

「……はい」


四人は倉庫前までやってきた。

「……これは鍵がかかってて入れないな」

「そ、そりゃそうね…」

「どうする?事情話しても信じてもらえないと思うけど…」

「そこで何しているんですか?」

突然、後ろから声がした。

「あっ…フロントにいた、受付員さん」

「……やはりあなた達が、例の子供達みたいですね」

「…えっ?」

「来なさい、精鋭ディスカラーズ達!!」

彼女の後ろに、ずらりと武装の濃いディスカラーズ達が並んだ。
そのディスカラーズ達は赤、青、黄、緑と…さまざまな色がいた。

「……な、なっ!?」

「どうして…受付員さんが!?」

「…フッ。答える義理はありません。速やかに、ひっ捕らえられてくださいませ」

四人は狭い倉庫前で、完全に袋のねずみとなってしまった。

59話『窮地』

「ちょっ…ちょっと!!あなたは…何者なの!?」

楓が彼女に向かって話しかける。

「…はぁ、答える義理が無いって言ったのが分かりませんか?…強いていえば私はあなた方の敵ですよ」

「……つ、繋がってたのか!ディスカラーズとこのホテルは…!」

「少し考えればわかるはずでしょう。小賢しいと聞いていたとはいえ所詮、子供ですね」

「……おい、ちょっと待て。なんで、俺たちの事を知っていた!!」

昨日情報を聞きだしたディスカラーズは、確かにダイロが鍛冶屋に置いてきた。優也達の事が敵にバレる事は、まずないのだ。…一つの可能性を除いては。

「……まさか、師匠?!」

ダイロは慌てふためき敵に問いかける。

「…おいっ!!お前ら師匠に、何をしたんだよ!!」

「ふふふふ、知らない方が、幸せな事もあるんじゃないでしょうか?」

「……ぶったおす!!」

ダイロが、敵に突っ込んで行った。

「ちょっと、ダイロ!!落ち着いてよ!!」

「一斉に喰らいなさい!!」

女性の掛け声と同時に、ディスカラーズ達はペイントガンを一斉に発射し始めた。

「効くか!!」

ダイロは大きな盾でペイントを全て防ぐ。そのままデイズカラーズ達に突っ込んで行った。

「…ふっ、所詮盾なんて真っ正面からしか防げないでしょう?」

「ぐっ…しまっ…」

ダイロは絵の具を浴びてしまう。青や緑…黄色に赤と。それぞれ効果は違うが、ダイロは緑の絵の具の効果で眠ってしまった。

「ダイロッ!!…くそっあの絵の具に当たったらダメだし…こうなったら…アイスッ!!」

優也は、昨日青のディスカラーズと戦った時のようにペイント液にアイスをかけた。

……しかし、思っていたよりも氷は広がらない。

「ざんねんでしたねぇ!!赤のディスカラーズの絵の具は凍らないのですよ!!」

「ぐっ…ダメか!!」

「さあディスカラーズ達、あの三人をやってしまいなさい!!」

優也達に、大量の絵の具が襲いかかる。

「……サヴェンマ!!」

翠が両手を広げ詠唱をした。すると目の前に現れたのはシールド。

「み、翠!?」

「こ…これで、絵の具は防げるはずです…!」

「……バカですね。袋小路に変わりはないです。その娘が魔力切れをするまでのわずかな時間稼ぎしかできないですよ」

「くそっ、それならこっち側に逃げるしか!開け、開けっ!!」

「…はぁっ!開きなさいっ!!」

開かない扉を切ったり叩いたりする優也と楓。

「無駄です。その扉は頑丈に作られていますから、爆発でもしない限り開く事はないのです。…さあ、観念しなさい」

「くっ、こんのぉ…!…なんか…最初の事を、思い出すわね…!」

二人は一番最初にドラゴンに襲われ、追い詰められた時のことを思い出していた。

「…あの時も、俺達はこうして誰かに守って貰っただけだった!!…今度こそ…この壁を、ぶち破る!!」

しかし、扉はびくともしない。むしろ、あの頃よりも更に更に頑丈な扉。絶望的な状況が、目の前に広がっていた。

「……く、くぅうう…も、もう……少しで…限界ですっ…!」

翠の限界も近づいてきている。

「うぅ…くそぉ!!俺たちは…何にも強くなっちゃいない…」

優也はペタン、と座りこんでしまった。

「ちょっと優也!!諦めないでよっ!!」

「そ…そうは言ってもっ!…あぁ、通信魔石がポッケから落ちちゃった」

「おやおや仲間割れですか〜。醜いですね。ほら早く、諦めてください」

優也は地面に落ちた魔石を拾い上げた。

『……でも一つ、注意がある。流し込む魔力があまりに多すぎると、魔力容量の限界を突破して爆発してしまうから

「…………!!そうだよ…これだ…これにかけるしかない!!」

「はぁああああ!!」

優也は通信魔石を握り力を込め始めた。

「優也、何を!?」

「…離れろ!!」

優也は楓を後ろにやり、力を込め続ける。

「……来るっ!」

通信魔石は…魔力の容量に耐えきれず、爆発をした。

「きゃあああああっ!!」

「な、なにーっ!?」

爆発で扉に穴が空き…優也は、衝撃で吹っ飛ばされた。
…すんでのところで優也は魔石を手放し、盾で防いでいたので大事には至らなかったが…

「優也、ひどい怪我よ!?」

…それでも、手の怪我が酷かった。

「……は、はは。流石にこんな近くで爆発させるのは無理があったかな…」

「…それよりも、ほら…道が空いた。楓、翠!!行くんだ…!」

「う…うぅっ!!」

その時、翠のシールドが切れてしまった。

「……危ないっ!!」

楓は二人の前に出て飛んでくる絵の具を浴びる。

「か、楓!?何してんだよっ!!五体満足のお前が絵の具を浴びちゃ…!」

「…最大限キュアーッ!」

楓の決死の治癒魔法が優也の腕にかかる。

「…ふ、二人とも。構わずさっさと、行きなさい!!絶対に振り返るなぁああ!!!!」

楓は持てる限りの気力を振り絞り…敵の前に立ち塞がって二人を絵の具から守った。
……そして、優也と翠は楓に言われた通り振り向くこともなく、倉庫の中へと消えていったのだった。

60話『残された二人』

「はぁっ…はぁっ…」

とりあえず優也と翠は、追手に追いつかれないよう倉庫から地下の入り口を通った。
分かれ道がいくつもある通路を適当に走っていた二人は、広間に出た。

「はぁ…はぁ…」

「う、うぅ……お…追手は…来てないですか…?」

「……うん…一旦…大丈夫だね」

「…ダイロさんに、楓さんまで…!!うぅう…」

「…………」

正直、逃げきれたにも関わらず絶望感は増していた。
主戦力でもあったダイロと楓がやられてしまったのだ。これではアミィと咲希を
助ける前に自分たちも捕まってしまうかもしれない。

「……翠。…今は…前に進もう。大丈夫、あの二人も…きっと、助けられる」

「ダメです、無理ですっ…!!怖くて、もう、体が動きません…」

翠は、完全にメンタルが折れてしまっていた。

「…………」

こんな時、どう言葉をかけてあげたらいいのか考える。
正直優也も既に半分、希望を持てずにいた。そんな自分が根拠のない
言葉をかけた所で…逆効果なのではないか。

だから…優也は事実だけを、言うことにした。

「…翠ッ!!今、ここで俺たちは立ち上がらないと…ダメなんだ!!」

「誰がみんなを助ける?誰がディスカラーズ達からこの島を守る?……もう、俺たちしか…残って無いんだよ!!」

「……わたし、達しか…」

「…楓は、俺たちを信じて逃がしてくれた。…だったら俺たちも…それに応えなきゃ!」

「……行こう!俺たち二人で…みんなを助けるんだ!」

優也が、優しく翠の手を引っ張った。

「……は、はい。」

翠も、それで少しだけメンタルを回復し、優也について行く。

(……もう、誰にも頼れない。翠はさっきのでほとんど魔力を消費した。あとは…俺の剣と、魔法だけ。…いざとなったら…頼んだぞ、イノーマス!!)

「…………?」

その時、翠は優也の持つ聖剣イノーマスが、妖しく光ったように見えた気がした。




「……しかし、不気味な街並みだなぁ」

優也達は真っ黒な色をした建物が立ち並ぶ地下空間を歩んでいる。

「… これが地下都市ブラックシティ、ですか…こんな大きな街が…地下にあったとは…」

すると目の前から三人のディスカラーズ(赤、青、黄)が歩いてきた。

「……まずい、ディスカラーズだ。俺たちを追いかけてきた奴らじゃ無さそうだけど…見つかったら面倒だ。やり過ごそう…」

二人は近くにあった建物に身を潜めた。ここには建物がたくさんあるが、中には誰もいなかった。

「……絵の具が切れちゃいましたよ。早く補充所へいきましょう」

「補充所ってどこでしたっけ?」

「…労働施設のすぐ隣の部屋ですよ。それにしても、わざわざあそこまで補充しに行くの面倒ですねえ…」

……そんな話をしながら、ディスカラーズ達は去っていく。

「……はぁ、危なかった」

優也は建物から顔を出した。

「……優也さん…今の話…聞いていました?」

「ん?……うん。なんか絵の具を補充しに行くとか言ってたね」

「……その補充所の場所。労働施設の隣って言ってましたよね…」

「あっ!そうだ、確か捕まった人間は…」

「……労働施設で、働かされているはずです。つまりあの人達について行けば…」

「「アミィと咲希に、会える!!」」

僅かばかりだが、二人に希望が見えてきた。




その頃、ホテル・ルージュではディスカラーズ達が、気を失ったダイロと楓を運ぼうとしていた。

「……はぁ、しかし無駄に…根性のある娘でした。あの絵の具を喰らっておきながら…最後の最後までこちらの邪魔をするとは」

「それに引き換え、どうでしょう…?あなたのお弟子さんは」

「…ねぇ、オランジュさん?」

その呼び声に応えるかのように、姿を見せるのは…ダイロの師匠、オランジュ。

「……ふん。その娘が凄いだけだ。別に普通だろう」

「弟子を庇うつもりですか?…ふふ、この子達をこんな状況に追いやったのは貴方だというのに」

「ああ、知らないというのは幸せな事ですね。自身のお師匠に裏切られたと知れば凄く悲しむ事でしょう」

「…いちいちうるせえな。…たとえ、弟子が可愛くとも、俺達の邪魔になるなら捕まえるだけだ」

「クククク!!主戦力の二人を捕らえれば後はあの大人しい娘とガキだけ…。いやぁ、本当に助かりましたよオランジュさん…!」

更にそこにいたのは…ダイロがグルグル巻きにして拘束したはずの、ディスカラーズだった。

「……あいつが貴様を連れて帰った時は驚いた…。それにしてもずいぶん秘密を喋ってくれたようだな?」

「…ひっ!で、でもあの時私が機転をきかせて、ホテル・ルージュの入り口しか言わなかったからこの二人を捕まえる事ができたんですよ!!っていうか、それならあの青のアイツがそもそもの大戦犯なんですからねっ!!」

「……それでも、二人逃げられたようだが?」

「く、ククク…大丈夫ですよ。奴らが逃げた先は我々のアジト。むしろ自ら捕まりにいっているようなものですよ!!」

ディスカラーズは絶対に大丈夫と豪語する。そのやり取りを見飽きたのか受付嬢は動きを始めた。

「…さて。そろそろ私たちは町長の家に向かいましょう。…この二人は、地下牢に運んでおいてくださいね」

「……はっ!」

こうしてダイロ達も地下へ…
そしてオランジュ達は町長の家へと向かっていった…。
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このページへのコメント

仲間が次々と捕らえられていくのと町の住人にも共謀者がいるのが相まって今まで以上に緊張感ある展開ですね……

あとレッドマウンテン組にもスポットを当ててくださりありがとうございます
生き生きとしたアヴィドレイクが見れて嬉しかったです(こなみ)

1
Posted by 名無し 2021年08月06日(金) 18:41:47 返信数(1) 返信

感想はモチベに繋がるから非常にありがてえ
キャラをssに使わせてもらう許可取って2年、
やっと出す事ができたましたが、キャラのイメージが
合ってたら幸いです

0
Posted by 名無し 2021年08月06日(金) 19:47:41

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