またーり書き込みしましょ(´・ω・`)


11話『洞窟の中』

道を進むこと数分。二人は洞窟の入り口に立っていた。

「ここが膨大な洞窟か…」

「名前通り、ひっろい洞窟ねー」

「でも幸い一本道が奥まで続いてるみたいだよ。迷うことはなさそうだね」

そして二人は洞窟の中を進んでいく。

しばらく進むと目の前にムチンが複数体現れた。

「あ、早速ムチンが現れたわよ!」

「よーし、いくぞ!はぁっ!」

挨拶がわりと言わんばかりに優也はムチンに斬撃を喰らわす。

「ムチィ!!」

「一気に片付けるわよ、ファイアー!」

そして楓のファイアによって残りのムチンは焼き尽くされた。

「ふー…さあ、どんどんいくわよ!」

その後も二人は現れるムチンを倒しては奥へ進んでいく。そんなこんなで一時間が経過した…。

「…なんだろう、急にムチンが出てこなくなったな」

「おかしいわね…さっきまで何匹も見かけたのに」

「あっ、大きな広間に出た…なっ!?」

「ムチンが…すごいたくさんいるわね。ざっと…80匹くらい?」

「流石に剣じゃ埒が明かないぞ、これは。楓、ファイア撃てるか?」

「どうかしらね…ブレスレットで魔力が上がってるけど戦ってる間に限界が来るかもしれないわ」

「そうか…」

「優也が魔法使えばいいんじゃないかしら?今日はまだ使ってないから魔力も有り余ってるでしょ」

「…よし、じゃあアイスで凍らせて一気にカタをつけよう」

そう言い二人が踏み出した瞬間だった。

ムチィイイイイイ!!

「なんだ!?」

ムチン達が一ヶ所に集まり出した。

12話『ムチンの集合体』


「…ムチンたちが、合体していく…」

ムチン同士がくっつきあい、どんどん大きくなっていく。二人の靴より小さかったムチンは、二人の身長を合わせても届かないほどに巨大化した。



「むぢぃいいぃぃいい…ニンゲン…なぜ、我らの住処までやってきたむぢ…?」

「しゃ、喋った!?」

「どんな魔物でも知能が高ければ喋れるむぢぃ…我々ムチンは合体すれば知能とパワーが付き、ボスムチンとなるのだむち…」

「あ、そういうの教えてくれるんだ…」

「それで、なぜ我らの住処にやってきたムチ、人間…?」

「そんなの決まってるじゃない、貴方達ムチンが人間の村を襲ったからよ。」

「普段は温厚で争いは好まないはずなのに、なんでまた村を襲ったのさ?」

「むぢぢぢィ…そんなこと素直に話すわけがないむち…知りたかったら力ずくで聞いてみるむぢぃ!!」

「…さっきは聞いてもないことを教えてくれたのに、きまぐれな魔物だね!」

「受けて立とうじゃないの!今までムチンを倒し続けてきた私達を舐めないで欲しいわね!!」

こうして二人はムチンたちのボスと戦うことになった…

「先制攻撃だ、はぁっ!」

最初に、優也の剣がボスムチンを切りつける。

「むっちむち〜痛くも痒くもないむちぃ」

「なんだって?…じゃあこれはどうだ!」

優也は剣をまっすぐ突き出して攻撃をする。

…しかしムチンの弾力により、弾き飛ばされてしまった。

「ぐぁっ!!」

「剣は効かないみたいよこいつ…ムチンが合体しただけなのに手強いわね…!」

「ここは私に任せて!ファイアー!!」

「あちちむち!!…でも火なんてすぐ消せるムチ〜!」

楓の放った炎を、自分の体で包み込み、いとも簡単に消してしまう。

「こっちからも反撃させてもらうムチ!」

ボスムチンは巨大で体当たりをする。

「うわあっ!!」

飛ばされた優也は壁に当たってしまう。

「優也!!…ファイア!!」

「あづっ…効かないって言ってるムチィ!」

「そうかしら?燃え広がらないってだけで実際はダメージを受けてるでしょ!」

「ふん…それでも雀の涙だムチ!」

「う、うう…こうなったら、アイス!!」

「…!身体が…固まっていくムチ」

起き上がった優也が放ったアイスによりボスムチンの身体が徐々に凍りつき、身動きが取れなくなる。



「ぐ…おの…れぇ…」

「ダメ押しだ!アイスッ!!」

「ぐぁああぁぁああ!!」

ボスムチンは完全に凍り付いてしまった。

「……終わった」

13話『劣勢』


「優也!大丈夫?」

「あ、あぁ…打ち所は悪くなかったから。…ちょっと出血しちゃってるけど。」

「じっとしてて。…キュア!」

黄色く淡く光る魔法により優也は怪我を治した。

「…やっぱすごいな。痛みがもう引いたよ」

「怪我は治っても多少出血した分は戻ってこないから油断は禁物よ」

「うん、わかったよ。……あっ、ムチン大量発生の原因、聞きそびれた…」

「いったん、村に帰りましょう。あれだけの数が集まったムチンを倒したんだからしばらくは安心できるはずよ」

「…まだ、終わってないムチ!!」

「「なにっ!?」」

そこにいたのは氷を破壊して再び動き出したボスムチンであった。

「ムチチィ…残念だったムチ。我々の体を凍らせても、このとおりすぐ復活するムチ。ぬか喜びだったムチねぇ!!」

「仕返しだむちぃ!」

「きゃあぁー!!」

「楓ーッ!!」

今度は楓がボスムチンに吹き飛ばされる。
額に傷ができ、血が垂れている。

「楓!!楓!!……気を失っている…」

「ムチチ…あとはお前だけだムチ」

「くそ…剣は通らない、魔法はほとんど効かない…なにか、なにかないのか!!」

「むちち…お前も吹っ飛べー!!」

ボスムチンが突進してきた。

「……アイスッ!!」

寸前のところで優也はアイスを放った。

「ふ、ふふ…無駄むち…凍らせて、逃げたとしても…すぐにお前らを……」

ボスムチンは再び凍りついた。

「……くそっ!!」

14話『逆転の一手』


ボスムチンが再び動き出さないよう、少しでも時間を稼ぐために優也はアイスをかけ続ける。

「…考えろ、こいつを倒す方法。…考えるんだ!!」

「楓は気絶している…ファイアとウィンドは使えない…俺が使えるのはアイスとサンダーとアース…」

「…サンダー!!」

苦し紛れにサンダーを放つが凍った状態のボスムチンには効いているのかわからない。

「…アース!!」

土の塊がボスムチンの下から生成される。
ほんの数センチ宙に弾き飛んだがダメージは無さそうだった。
しかし少しだけ、凍ったボスムチンの身体が崩れ落ちていた。

「…反応がないからわからないな。一度普通の状態で放ってみるか…?」

そう言った直後に丁度ボスムチンの氷は解けた。優也はできる事は全て試してみるつもりだった。

「ムチチ…もう魔力切れかムチ?さぁ、おとなしくやられろムチ…」

「くらえ、サンダー!!アース!!」

サンダーは余裕そうに耐え、アースは形の変わるボスムチンには無意味だった。
…ただし、ある一部分を除いては。

「…!これは……」

「いい加減に…しろムチ!!」

「ぐぁあっ!!」

優也はボスムチンに弾き飛ばされる。

(…今のは、ひょっとすると…)

「まだ立ち上がれるかムチ…」

ボスムチンが再び迫る。

「今度こそ、これで終わりだ!!アイス!!」

優也に魔力はほとんど残されていなかった。しかしアイスを放つ寸前、優也の腕輪の水晶が淡く光り輝いた。

「何…回やっ…ても…無駄…ムチ」

そしてボスムチンは凍る。これで三回目であった。

「…きっと。これで終わる…!」

優也は剣を構え、大きく振りかぶった。

「はぁあああ!!」

剣は凍ったボスムチンを両断した。

「はぁあっ!はぁっ!」

そして間髪入れずさらに細かく切り刻む。
床には砕けたボスムチンの凍った身体が散らばっていた。

しばらくすると、氷が解ける。

「がぁあっ…!?わ、我の身体が…一体何をしたムチ!?」

凍った状態で意識のなかったボスムチンはバラバラになった身体を見て取り乱す。

「…さっき、アースで土塊を放ったとき、お前の流動する身体で全て受け流された。」

「でも、凍った一部分は砕けていた。そこでピンときたんだ。凍った状態なら物理攻撃が通るんじゃないか…ってね」

「く…そんな弱点が…我にあったムチ…」

「さあ、これでお前はもう普通のムチンとほとんど変わらないはずだ。アイスを使わなくても剣だけで倒せる。…お前の負けだ」

「ふん、分裂してもすぐに元に戻ってやるムチ…」

「そうはいかないわ!」

再び集まろうとするムチンの身体に炎が飛ぶ。

「ぎゃぁあああ!!」

「あんまりやり過ぎるとアイツ、喋れなくなっちゃうから少し抑えなきゃいけないのが面倒ね」

「…楓!大丈夫か?」

「額から血が出てる人が大丈夫に見える?」

「そんな大口叩けるなら大丈夫だな」

「うるさいわね…さぁ?観念しなさい。貴方の知ってること全部話してもらうわよ」

「ぐぅううう…仕方ない、約束は約束ムチ……」

ボスムチンは潔く負けを認めた。

15話『ムチンを総べる者』


「どこから話すかムチ。…そうだ、ムチンがどこから生まれるか…お前らは知っているかムチ?」

「…知らないな。そもそもつい昨日、初めてムチンに出会ったからな」

「そんな奴らに我らが負けるとは…まあいい。我らムチンは森の奥深くに住むマザーフンギ様から生まれてくるのだムチ」

「マザーフンギ?」

「巨大なキノコの魔物ムチ。我らを生み出す、母。まさしくマザーなのだムチ。」

「…数日前。広範囲にわたって魔物の活性化が起こったムチ。」

「魔王リヴァの力だわ」

「マザーフンギ様は、その活性化の影響を大きく受けた…そしていつもより過剰に我らムチンを生み出し…こう命令したムチ。」

「『人間の村を制圧し、すべてを我が養分とするのだ』…と。」

「よ、養分…」

「…そのマザーフンギって奴、見過ごせないわね」

「マザーフンギ様によって生み出されたムチンは絶対命令に逆らえない。…だからいつもより人里に現れるようになったんだムチ…」

「つまりこのムチン大量発生の原因はマザーフンギというキノコの魔物の仕業なんだな。…そいつはどこにいるんだ?」

「…この洞窟の更に奥の出口からつながるザワメキの森とシズマリの森を抜けたさらに奥の、ムチンの森にいるムチ。
…おっと、倒そうとは思わない方がいいムチ。貴様らの力ではマザーフンギ様には敵わない。我に苦戦するようでは尚更ムチ」

「…だからってそうはいかない。俺たちはいずれ魔王を倒す。こんなところでつまずいて居られないんだ」

「ええ、そうよ。…悔しいけどあんたに私はほとんど対抗できなかった。勝てたのは優也のおかげよ。だから…今よりもっと、強くなって。あんたの言うマザーフンギって奴も絶対倒してみせるわ。」

「…ムチチ…そ、それは…見ものだ…ムチ…」

「…どうしたんだ?」

「体が…分裂した状態で…時間が過ぎて…、どうや、ら…そろそろ…喋れるのも限界が来たムチ…」

「ムチチ…ムチンは…死んでもすぐ、生まれ変わって…マザー、フンギ様から生まれる…いわばお前らのしたことは…無駄ムチ…」

「…せいぜ…い…あがくがいい…ムチ…」

そう言い残してボスムチンは光になって消えた。

「…無駄なんてことは無いわよ。これでしばらくあの村は安全だし、原因も突き止められたんだからね。さぁ、村に帰るわよ優也!」

「そうだな。あー、お腹すいたなぁ…」

「ふふふ…私もよ。今日の晩ご飯は何かしらね」

二人はふらつきながら洞窟を戻っていった。

「…その頭の傷、なんで治さないんだ?」

「あー。実を言うとね、さっき気がついた時にはもう魔力が残ってなかったのよ。」

「あれ?じゃあ、あのファイアはどうしたんだ?」

「…このブレスレットが力を貸してくれたの」

楓は大事そうにブレスレットを取り出す。

「これがなかったら、またアイツは合体してたわね…」

「あっ。…実は俺も最後にあいつを凍らせた時、このブレスレットのおかげでアイスを放てたんだ」

「そうだったんだ…あの娘には感謝しきれないわね」

「あぁ…帰ったらもう一度お礼を言おう」

…何気なく少女に貰ったこのブレスレットもこの戦いに大きく貢献してくれたのでした。

16話『手当てとご馳走』


洞窟を抜けるとすっかり夕方で、村に戻った頃には日がほとんど沈んでいた。
村では村長が出迎えてくれて、怪我を負っていた二人を庇いながら家に連れて行った。

「まったく…無茶をするお二人さんだなぁ」

「女の子が顔に傷負ったら嫁さいけなくなるだよ…早くまほうで治しゃんと」

優也と楓は魔力が回復してキュアが使えるようになるまでの応急処置を受けていた。

「いてて…キュアが使えないとこんな不便なんだなぁ。次からはもう少し魔力を温存するべきかな?」

「そうね…でも悪いことばかりじゃないわ。魔力は消費すればする程に容量が増えていくもの。強くなりたいならどんどん使うべきなのよ」

「まあそうなのかも知れないけど…」

「それにあいつが凍った時、完全に勝ったと思ってほとんどの魔力をキュアに使っちゃったんだから。…戦いは何が起こるかわからないんだし温存しようとしても無駄になるかもしれないわよ」

「うーん。魔力が回復する道具でもあればいいんだけどな」

「残念だけどこの村にその類のものはないだなぁ」

「…薬草図鑑とか、本で探してみるわ。」

「さてと…婆さんや、夕飯はどうだ?」

「ええ感じにできとるだよ。さぁさ、そふぁに座んなされ」

「いい匂いだ…すっかりお腹すいちゃった」

「ありがとうございます村長さん、奥さん」

「さぁーて、手を合わせて…いただきます」

「「いただきまーす!!」」

二人は老夫婦と晩御飯を食べ始めた。

「…ほうほう。それで、そのまざーふんぎという魔物が人間を襲うように指示を出してたわけだな?」

「はい。…これから俺たちはそいつを倒す為にムチンの森へ向かいます。」

「しっかしムチンの森ときたら…本当に奥深くの深くの森だべな?その前に二つも森を抜けなきゃなんねえだ。」

「おまけにザワメキの森とシズマリの森には厄介な狼の魔物が二種類生息してるだ。それぞれに群れを束ねるボスもおるし、それが活性化してるとなると…もう、危険すぎるだよ」

「「…………」」

マザーフンギまでの道のりがかなり遠く感じた二人は思わず黙り込んでしまう。

「そうだなぁ…ザワメキの森とシズマリの森のちょうど境目によ、村があるんだ。森で野宿は危険だから、とりあえずそこにいければなんとがなるでねえかな?」

「オラ、あっこの村長と知り合いだべ。…最近設置した固定でんわっちゅうので連絡取れるか確かめてくるべ」

「ありがとうございます」

…食事が終わった後、村長は連絡をしに、奥さんは食器を洗いに行ってしまった。
残された二人は布団で今後のことを話し合っていた。

「…マザーフンギだけじゃなく狼の魔物。それも二種類…か」

「状況はあまり良くないけど…行くしか、ないわね。今の私たちにはマザーフンギを倒す道しかないわ」

「そうだけど…ちょっと怖いかも。」

「…そんなこと言わないで、情けないわよ」

「ああ、ごめん。弱音を吐いても仕方ないよな」

「私たちは魔王を倒す!って…さっきの発言は虚勢だったの?」

「…ううん。そんなことはないよ。ただ、さすがに俺も心細いんだって知って欲しくてつい言っちゃった」

「村長さんや仙人にはやってやるぜ!って感じを見せてたけど…昔からずっと一緒の楓になら、ちょっとだけ弱いところを見せてもいいかなって
思ったから…」

「ば、ばかね…女に弱いところみせるオトコがどこにいるのよ…カッコ悪いじゃない。」

「それに私だって本当は…怖いわよ」

「怖いけど、それでもやるのよ私達は。みんなの為に。そして私達のために!」

楓の言葉に優也は目を閉じて答える。

「…ありがとう楓。もう不安になっても弱音は吐かないよ。…カッコ悪いからね」

「…ばか。さあご飯も食べたしそろそろ、寝ましょう。明日も早いわ」

照れくさくなった楓は優也に背を向けて布団をかぶる。
そのまま、二人は静かに眠った…。

17話『お互いの感謝と別れ』


次の日はあいにくの雨だった。
村にとっては畑の作物が育つめぐみの雨だが、今日村を立つ優也達にとってはあまり嬉しくないものである。

「お二人さん、朝ごはんができただよ」

今日も朝起きてすぐに村長さん達は料理を振る舞ってくれる。

「「いただきます」」

昨日とは裏腹に静かに食事が進んでいく中、村長さんが話を切り出す。

「…昨日、森の村の村長に連絡したんだがな、森で色々異変が起きてて村の出入りを許してないみたいだ。閉鎖中だな」

「…異変ってなんですか?」

「シズマリの森はいつもは静かなんだべが、騒がしかったり、ザワメキの森は逆にいつも騒がしいのに静まり返ってると言ってただな」

「森の様子がまるで逆になってるのね…やっぱり魔物の活性化と関係があるのかしら」

「そうだべな…ザワメキの森が騒がしいのはそこに生息する狼のモンスターが騒がしいからなんだべ。逆にシズマリの森のモンスターは静かでおとなしい。…もしかすっと、双方のモンスターの住処が入れ替わったのかもしれねえべな…」

「…だども、魔物が活性化しただけでここまでの変化は流石におかしいなぁ。何かまた、別の要因がありそうだべ」

「何はともあれ、行ってみればわかるわ」

「うん。…でも村に出入りできないのは厳しいかなあ」

「ああ、それなんだが昔からのよしみでオラから頼んだら特別に許可をしてくれただ。二人組の旅人が行ったら入れてくれるみたいだべ」

「本当ですか、ありがとうございます!」

「何から何まで、ありがとうございます村長さん」

「いいんだいいんだ、オラ達だってお二人さんには感謝してるしこれぐらいはな。それに、二人だったら森の異変も解決してくれるかもしんねえしな!」

「期待に添えるよう頑張ります!」

「ああ、オラの知り合いの村を頼んだだ。」


「「ごちそうさまでした」」

二人は朝ごはんを食べ終わると出発の準備をする。

「日が暮れる前に村に着きたいから早めに出発するわよ、優也」

「ああ。剣と…お金は、あるな。道具も幾つか袋に…」

身支度を終え、二人はまず村長夫妻に挨拶をする。

「「それじゃあ行ってきます。本当にお世話になりました!!」」

「行ってらっしゃい。また来るべ、その時は料理をたらふく食わせてやるからな」

「ああ、行ってくるだ。必ず魔物を…魔王を倒して、友達と家族を救うんだべ!」


「さぁ、膨大な洞窟から森へ行こう」

「…あっ、村人さんたちがみんなこっちに来てるわ」

「気をつけて行けよー!」「ありがとう少年たちよ!」「がんばれー!!」

家から村人達が顔を出して声をかけてくれている。

「あら、遠くから誰か近づいてくるわ」

「あ、あの娘…!」

少女がこちらに近づいて来た。

「…お姉ちゃん達、もう行っちゃうの?」

寂しそうに聞く少女。

「ええ。私たちにはやらなきゃいけない事があるからね…お別れよ」

「そうだ、このブレスレット!!昨日、とっても役に立ったわよ。本当にありがとうね!」

「ほんと!?」

少女の顔が明るくなる。

「本当だよ。これがなかったらきっと俺たちはモンスターにやられてた。君のおかげで俺らは勝てたんだよ」

「そうなの?お姉ちゃんたちの役に立ったんだ…」

「…あ、そうだ。私は楓って言うの。まともに自己紹介してなかったわね」

「俺は優也だよ。素敵なアクセサリーありがとう」

「楓お姉ちゃんに、優也お兄ちゃん…」

「よかったら、あなたの名前も教えてくれるかしら?」

「え…わ、私…リアって言います」

「そう、リアちゃんって言うのね!覚えておくわ」

「それじゃあそろそろ俺たちは行くよ。リアちゃん、さよなら。またいつかアクセサリー作って欲しいな」

「う、うん!ありがとうー!!楓お姉ちゃん!優也お兄ちゃんー!!」

少女の声が二人の背中で響き渡った。

18話『森への道』


村を出た二人は、再び膨大な洞窟を進んでいた。

「…昨日沢山倒したからかムチンが全くいないね」

「沢山どころか、ボスムチンの部屋までに遭遇したムチンはみんな倒しちゃったから居なくてもおかしくないわね」

そのまま二人はボスムチンのいた部屋にたどり着いた。

「この奥に出口があるんだよね」

「えぇ。あっあそこ…細長い通路が続いてるわ」

「ほんとだ、昨日は気づかなかったな…」

二人は細長い通路を突き進んでいく。

「今までと打って変わって狭い通路だな…二人一直線にならないと通れないや」

「そうね…」

「…あ、あれは!」

そこにムチンが5匹ほど現れた。

「こんなせっまい所で…優也、お願い。私が魔法撃ったら優也に当たっちゃうわ」

「わ、わかった。こんな狭いところだと剣も振りにくいな…とぉっ!」

優也は突きでムチンを倒した。

「さぁ、進もう。そろそろ出口だよ、ほら明かりが漏れている」

二人は狭い出口から膨大な洞窟を脱出した。

「ここが…えーと、シズマリの森?ザワメキの森?」

「ガルルゥ…」「ウォーーン」「グルォオース!」

「ずいぶん騒がしい森だからザワメキの森かな」

「いいえ、確か逆だったはずよ」

『シズマリの森はいつもは静かなんだべが、騒がしかったり、ザワメキの森は逆にいつも騒がしいのに静まり返ってると言ってただな』

優也は昨日の村長の言葉を思い出す。

「あ、そうか…じゃあここはシズマリの森か」

「ええ、そういうことになるけど…本当にうるさいわね…」

「とりあえず森を進んでいけば村にたどり着くかな」

「えぇ、ザワメキの森とシズマリの森の境目にあるって言ってたわ。行きましょう」

二人はシズマリの森を歩き始めた。

〜数分後〜

「…なんかさっきから鳴き声がどんどん近づいてきてないか?」

「確かに…もしかしたらすぐそこまで魔物が来てるのかも」

と、次の瞬間二人の前に赤い狼のモンスターが2匹現れた。

「ウゥォオーーン!!」

「うわっ、うるさい!」

「ち、近くで吠えられるとこんなにうるさいのね…」

「グルルゥ!」

「あっ、危ない楓!!」

優也は楓に噛みつこうとするオオカミを剣で防ぐ。

「あ、ありがと…」

「多分こいつら、鳴き声に怯んでる隙に攻撃してくるんだ。早く倒そう!」

「やぁっ!!」

「くぉん!」

オオカミを一体剣で攻撃する優也。

「ウォオオオーーン!!」

再び吠えるオオカミ。

「今度は怯まないわよ…ファイアー!!」

楓が炎を放った。…しかしあまり効いていない。

「がるぅうううーー!!」

今度はオオカミが吠えるのと共に炎を放ってきた。

「うわっ!こいつら火属性か!それなら…アイスだ!」

「きゃうーん!」

「はぁっ!!」

アイスで動きが鈍ったところを剣で攻撃して倒す優也。

「あと一体は任せて!…はぁーっ!」

そして楓はもう一匹を杖で直接攻撃をして倒す。倒されたオオカミ達は光になって消えていった。

「…それいつか水晶壊れるぞ…」

「そうねー、その時はもっと頑丈な水晶の杖でも探そうかしら」

「叩くの前提なんだな」

「…あら、魔石が落ちてるわよ」

「魔石?」

「村長の家の本で見たのよ、モンスターを倒すと落とすのが魔石。ほら、あの子のくれたブレスレットについてるのも魔石なのよ」

「あ、ほんとだ。そのブレスレットについているのとほぼ一緒だ」

「これは火属性の魔石でしょうね。一応拾っておきましょう」

優也はオオカミから落ちた火の魔石を拾った。

19話『騒がしい森を抜けて』


そこから数分おきに赤い狼の魔物が襲いかかってきた。騒がしいシャウトと炎に翻弄されながらもなんとか二人は倒していった。

「はぁ、間一髪で避けてきたけど、ちゃんと火を防げるような道具が欲しいなぁ…」

「防火素材の盾とか…村にあるかしら」

「あったとしても高い値段で買わなきゃなら無さそうだね…」

「火属性の魔法って敵にやられたら結構きついかも。服に燃え移るし」

火属性の魔法を防ぐ術に悩まされる二人であった。

そして、さらに進むこと10分。

「…あっ、あれ見て!」

そこにはバリケードの壁が設置されており、一箇所だけ入り口が設けられていた。

「多分村じゃないかしら?壁を作ってオオカミが入ってこないようにしてるんだわ」

「…確かに、どう見ても人工物だしきっと村だね」

「よかった…でも、割と早くついたわね、まだ昼間よ」

「早く着くに越したことはないよ。とりあえず行こう」

「…すいませーん!誰かそこにいませんか?」

返事は返ってこない。

「…空いてるのかな、この扉」

扉を開けようとした時

「ふわぁ…待て、現在ノイエット村は現在出入りを禁じている。」

村の中から声をかけられた。

(…寝てたわね)

「お前らは…何者だ?」

「優也と言います。彼女は楓。昨日そちらの村長さんに連絡を入れさせていただいたと思うのですが」

「…そうか。お前達のことはと…村長から聞いている。優也という少年と楓という少女が来たら通すようにな。」

「今開けてやるからすぐに入れ、いいな?」

「わかりました」

こうして、二人は村に入る事に成功した。
扉を潜ると、そこには木造で出来た家が立ち並んでいて、村の向こう側にはまた同じようにバリケードが見えていた。



「…わあ、すごい。村の周りみんな壁で囲まれてるよ」

「三日間徹夜して作ったんだ。ふあぁ…。ノイジーウルフと眠れる狼子どもが人を襲うようになって、危険極まりないからな」

そう言って話しかけてきたのは、先程扉を開けてくれた人だった。

「あっ、先程は扉を開けてくれてありがとうございました」

「そんな畏まらなくていい。俺は自分の仕事をやっただけだからな」

「…ところでノイジーウルフってあの赤い狼の魔物の事ですか?」

楓が質問する。

「お前も、いちいち敬語じゃなくていい。…そうだよ。赤くて鳴き声がやかましい狼がノイジーウルフ。青くて常に寝てる狼が眠れる老子って言うんだ」

「眠れる老子…本来なら、シズマリの森にいたのよね?」

「あぁ、その話も知ってるのか。そうだ、本来ならお前達がやって来たシズマリの森にいたんだ。それが何故かザワメキの森のノイジーウルフと綺麗に生息地が入れ替わってやがるんだ。」

「…さて、お前らが来たら村長ん家に案内するよう言われてんだ。ついてこいよ」

そう言われ青年について行くことになった。

「そういえば、名前聞いてなかったですね。(あっ、敬語じゃなくていいんだった)…名前はなんて言うの?」

「俺の名前か?…俺はジーノって言うんだ」

「さぁ、ここが村長の家だ」

「ツリーハウスが村長の家なんて変わってるわね」

ジーノに連れて来られた村長の家は、樹齢何千年もの大木に作られたツリーハウスだった。

「へへ、いい家だろ?ここ、俺んちでもあるんだ」

「え?ジーノって…村長の息子なの?」

「あぁそうだ。…言っておくが、父さんはとても気難しい性格で言葉の節々に棘がある。それでも怒らず冷静に話を聞いてくれ、でないとお前らはこの村にいられなくなる。わかったな?」

「うん、わかった。」

「…特に楓は気が強そうですぐ言い返しそうな感じだ。…抑えろよ?」

「わ、わかってるわよ。でも見た目だけで気が強そうって判断するなんて…貴方ちょっと失礼よ」

「…ほーら、言ったそばから言い返してるじゃないか」

「ジーノにだったら何言い返したって問題ないでしょ!」

「楓、とりあえず落ち着いて冷静になろう。ほら、深呼吸して。…早く村長さんに会おうよ」

少し怒り始めた楓に優也が宥める。

「…すぅー…うん。ジーノ、ごめんなさい」

「…俺もちょっと意地が悪かった言い方をしたな、すまない。…じゃあ、気を切り替えて行くぞ」

そして、3人は家に入っていった。



「「お邪魔します」」

「…村長、昨日連絡があった二人を連れてきました」

「……来たか。とりあえずそこに腰掛けるがいい」

「は、はい」

言われるがままに二人はそばにあった椅子に座る。

「…ふん、見た目は大したことない普通の人間だな。」

村長は二人を見て冷淡に言い放つ。

「昔からの知り合いのよしみで、特別にお前たちをこの村に泊めさせてやる事になったが…まさか、何もせずに泊めてもらえるとは思うまってないだろうな?」

「…は、はい!俺たちは村に泊めてもらう代わりに森に起こった異変を、解決します」

「ほう、どうやって?」

「……それは…森を調査します。モンスター達の生息地が変わった原因をきっと見つけ出します」

「とにかく、その為には拠点が必要なんです。どうか村に泊めてください!」

お願いする二人の後にゆっくりと村長は口を開く。

「ふん、曖昧な答えだの。…まぁいい、そこまで言うからには村の滞在を許可してやる。だがいつまで経っても何も成果がなければ追い出すからな。」

「…わかりました。ありがとうございます」

「…この家を出て直ぐ右に、お前たちの泊まる宿がある。…さっさと行くがいい」

そう言われて、二人は村長の家を出て行った。

「…はー、結構怖い人だったな」

「……もう。何もあんな言い方しなくたっていいじゃないの!」

「そう言うな…。あの厳しさも村のことを思ってなんだ。」

「ほら、ここが宿屋だ。」

ジーノに連れてこられたのは宿屋『静騒館』。

「あら、客とは珍しいわね。昨日言ってた子かしら?」

「初めまして。優也です」

「どうも、楓です。」

「いらっしゃーい。私はシズカ。宿のオーナーよ」

「二人を、しばらくここに泊めてほしい。金は村長が出す」

「…えっ!?」

「あの人が…?」

「宿代、食事代、全部な。…父さんはあんな感じだけど、本当は優しいんだ。今回もお前達が金銭の事で心配しないよう手を回してくれた」

「あっでも、働かない奴にはマジで厳しいからな。お前達もダラダラしてるとマジで追い出されるから気をつけろよ」

「…わかったよ。ありがとう、ジーノ」

「なおさら頑張らなくちゃいけないわね!」

「今日は遅いから部屋まで案内するわね〜。あ、それと。7時に食事も出るから食堂に寄ってね」

「はい、ありがとうございます」

そして二人は同じ部屋に案内された。

「わー、綺麗な和室」

「そうね、旅行に来てるみたい。来る理由がこんな事じゃなきゃうんと楽しめたのにね」

「うん。ダラダラしてると追い出されるって聞いたし、うかうかしてられないや」

その後、二人は宿の夕飯を食べて寝床についた。

20話『探索開始!』


…翌日。一晩寝て、村にやってくるまでの疲れを癒した二人は朝食を食べていた。
和風の宿にふさわしい和食だった。

「もぐもぐ…」

「あら、珍しく食べ物こぼしてないわね」

「…こないだは、すごくお腹が空いてたから慌てて食べて…ごくん。溢しちゃったんだよ。いつもは綺麗に食べれるよ」

「嘘、昔から優也はそそっかしいから食べ物溢しまくってたわよ〜」

「昔は行儀がなってなかっただけだよ」

「…お、いたいた。優也!楓!」

「あれ、ジーノ。どうしたの?」

「… 父さんに頼んで付き合わせてもらう事になったんだ、森の調査。この村の問題だから俺も力になりたいと思ってな…。」

「それはありがたいね」

「けど、ジーノって戦えるのかしら?」

「ああ。昔から父さんに鍛えられてきたし狼達も狩ってきた。ほら、このズボンの毛皮はノイジーウルフと眠れる狼子の物なんだ。この村の習わしで村長の家計の子供は自分で狩った狼達の毛皮を身につける事になっている。」

「へぇー、小さい時からあの狼達と相手してきたんだ」

「この小槌でな」

そういうとジーノは赤と青の小槌を取り出した。

「それで戦えるの?小さいけど。」

「おっと、こいつを侮るなよ。小さい分俊敏に振りかざせるし、威力だって下手な剣より全然強い。」

「何より…こいつはでかい魔石で出来ている。こっち側が赤い魔石、こっち側が青い魔石だ」

「本当だ…」

「狼達が落とした魔石だ。赤いのはノイジーウルフが落としたのでもう一つが眠れる狼子。それぞれ違う色の方で殴ってやるとよく効くんだ。」

「狼達への特効となる武器なのね…」

「そういうわけで今日はよろしく頼む!」

「こちらこそ!」

こうして優也達三人は森へ繰り出す事となった。

〜シズマリの森〜

「…ずっと門番をしてたから久々に森に出るな」

「今日は見張ってなくて大丈夫なの?」

「父さんが問題ないって言ってたから平気だ。…さ、探索開始だ」

シズマリの森…もっとも今は全く静まっていない森を、3人は進んでいく。
道中、ノイジーウルフに出会ったが

「はっ!」

ジーノの素早い槌さばきであっという間に倒していった。

「すごいねジーノ!狼達に攻撃させる隙もなく倒していくなんて」

「あぁ。昔からこいつらと戦うのは慣れてるからな、行動パターンは掴めてるんだ」

そして、しばらく進むと…

「……あれ?向こうの方、崖で行き止まりみたいだよ」

「あぁ。この森は崖に囲まれているんだ。反対側のザワメキの森の方向まで崖に囲まれていて、森を抜けるには膨大な洞窟を通るか、ムチンの森を抜けていくしかない」

「へえ、そうなのね」



そして、それから数十分が経過した。

「結局、こっち側には何もなかったな」

「どうしようか?反対側行くか、ザワメキの森の方行くか」

「まずはシズマリの森を全部探索したいわね。反対側行きましょう」

「……いや、やめておいた方がいいな」

突然ジーノが楓を止める。

「えっ?」

「ザワメキとシズマリの森には…それぞれ狼達のボスがいる」

「狼達のボス…」

「あぁ…あの渓流の村の村長が言ってたわね。狼達を束ねるボスがいるって」

「こっちの方を探しても、全く見当たらなかった…なら、必然的に反対側にいるってわけだ。今反対側の方に行くのは危険だ」

「倒せたりはしない?」

「馬鹿言うな。ガキの頃無謀にも挑んだが全く勝てなくてギリギリの所で父さんに助けられて、大目玉食らったんだ。…今はわからないがそんなに差が縮まったようには思えない」

「そいつ、そんなに危険なのね。…ところでジーノ?」

「なんだ、楓?」

「もしこっちの方に居たら、どうするつもりだったのかしら」

「その心配は無かった。ボスは自分の周りに子分の狼を沢山引き連れているんだ」

「へえー…じゃあ狼があんまり出なかったから、こっちにいないのは分かってたんだ」

「…ふーん」

少し不服そうに返事を返す楓。

「…なんだ?まさか俺が、なんの考えも無しに進んでたと思ってたのか?」

「ええ、ジーノって意外と抜けてるところがあるんじゃないかって思ってたわ」

「お前なぁ…」

はっきりと言う楓に呆れるジーノであった。
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このページへのコメント

アクセサリーょぅι゛ょのでも思ったけどキテル…に目覚めたようだ

1
Posted by 名無し 2020年10月26日(月) 21:38:59 返信

ボスムチンの御尊顔初めて見た
あとイマサラタウンながらムチンちっちゃ

1
Posted by 名無し 2020年10月19日(月) 21:02:24 返信

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